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はじめての戦

敵陣へ駆ける

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隊長のときの声を合図に、僕たち弓隊は左右に分かれて駆け出した。

僕はグングンと駆け出したフーガの邪魔にならない様に身をかがめると、前方をうかがい見た。

前方の先に敵の後方部隊が集まっているのが見える。

チラッと右に見えた土煙の上がっている戦いの前線ではフォーカス様達の先陣組が切り込んで敵陣を後退させているのが見えた。


カークさんの後をついていきながら、僕はもう一度集中して弓を構えると、敵陣後方へ矢を解き放った。

僕の矢はうねる様に空気を切り裂くと敵先頭の歩兵の胸を貫いた。そして次の瞬間、その兵士を中心に周囲の兵が数人倒れ込んだのが見えた。

効いてる。僕は頭のどこかで手足がバラバラにならなくて良かったと思いながら、次の矢を構えた。

目の前でカークさんの矢も隊長らしき兵士に命中し、周囲も二人一緒に倒れ込んだのが見えた。


「俺の矢もシン君の加護が効いてるぞ!」

カークさんの声を聞きながら僕は矢を放っていた。

僕たちは夢中になって馬を駆け矢を放った。

どのくらい時間が経ったのか、短いのか、長いのか、もはや全てのことは曖昧で、目の前の敵の倒れていく姿が現実だった。


「シン君!頃合いだ!戻るぞ!」

カークさんの声にハッと我に返った僕はフーガの手綱をしっかり握ると前傾姿勢でカークさんについて行った。

もはや僕の戦場は後方に遠ざかり、味方の陣は今度は左手に見えた。先程より勢いが良く見えたのは僕の希望だったのだろうか。


僕たち弓隊は砦近くの小高い丘に集まると戦況を見下ろした。思った通り我が軍の優勢だった。

隊長は時期を見て敵陣に矢の雨を降らせる策に出るとの事で、僕たちは準備した。

「シン殿、そなたは味方後方に待機との命令が出ている。先程の加護で消耗しているゆえ。」

行く気満々だった僕は気がそがれたが、ここで倒れたら迷惑をかける事になるので黙って頷いた。


僕はひとり、隊を離れ後ろから味方の陣に合流する事にした。
味方の陣の後方は数人の騎馬と歩兵で構成されていた。

陣に近づくと僕は目の端に嫌な色を幾つか見た。濃い紫の煙の様な色味がその兵士達を包んでいた。

僕は駆け足で近づきながら、もう一度その兵士達を見つめた。
裏切りの色を纏った兵士達は今や固まり、後方に陣取る隊長らしき兵士へ近づいていた。

「隊長!後方に寝返りあり!」

僕は声を張り上げた。









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