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はじめての戦

戦いの始まり

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遥か前方で上がる、ときの声と共に土煙があちこちで舞い上がって行く。

映画でしか聞いたことのない兵士たちの武具が擦れるガシャガシャという音、荒い息遣い、研ぎ澄まされた緊張感。
全てが僕の心臓の鼓動を速め、神経をピリつかせていた。

僕がピリついているせいか、跨ったフーガもいつもよりいななきの声が高い。僕はハッとすると首をそっと撫でて囁いた。

「フーガ、大丈夫。僕たちはいつもの様にやるだけだ。」


前方の戦いの雄々しい騒めきがゆっくりとこちらに近づいてきている気がする。

そう思って隣に配置されているカークさんをみると、兜の下の焦げ茶の大きな瞳に鋭い光を瞬かせて頷いた。

「シン君、そろそろ二番隊の出番が来る。隊長の指示が出るぞ。」

僕たち弓隊は事前に大まかな指示を受けていた。

一番隊の前方の戦いが後方に及んできた場合、二番隊の弓隊は左右に分かれて敵の後方へと赴きハサミうちに矢を射かける。
敵陣のケツを叩く戦法だ。


その際は機動力が大事で、いかに敵の隙をつくか、短時間で攻めるかが効果ある無しに及ぶとの話だった。

二番隊は俊敏な馬と矢の的中率の高い兵士が集められている。その代わり、僕が代表する様に持久力には欠けるのだ。

スピードと的中率だなと僕は頭の中で確認した。


そして僕にはもう一つ魔祓いの矢を使う指令が出ていた。

僕からはまだ見えないけれど、夜の国ライデンは魔神信仰でその加護持ちが多い。そのため倒れにくく手強いらしい。
こちらの国も魔法はあるけれど、そもそも強力な魔法士はほとんど居ない。

僕のイメージするアニメの魔法で全てを焼き払う的なモノはここでも十分ファンタジーだ。

相手が魔神の加護なら、こちらは魔法で加護めいた事が出来るレベルだ。泥臭く戦う、ここは正に互角の戦場なんだ。


前方に居た参謀から命令が流れてきて僕の二、三列前の弓隊長から号令が掛かった。

「シン殿、頼む!」



僕は筆頭参謀フォーカス様に事前に指示された通り、皆より少し前にフーガを進めた。僕を先頭に翼の様に隊列が出来上がった。

僕は集中して呼吸を整えると祝詞を口の中で呟き大きく息を吐いた。熱くなった身体を感じると弓を引き絞り射ち鳴らした。

ビイィィィィィンと空気を切り裂いたその音はあたり一面に鳴り響き、その波動のようなものはどんどんと広がっていくのを感じた。

弓隊長は僕らを振り返って叫んだ。


「聞け!魔払いの加護は矢にこもった!いざ参る!」

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