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新しい生活
現実に向き合う
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相変わらず僕は毎日フォーカス様に仕えている。最近は戦略会議の試案も見せてもらって、フォーカス様の考えを聞かせてもらっている。
この世界は魔法も使用する戦い方で、僕のイメージするものとは少し違う。でも反対にゲーム的戦略として考えると、案外ハマるものがあることに気づいた。
とはいえここは現実世界だから、死んだアバターが蘇りはしないし、失われた戦力はポイントで復活しない。つくづく、リアルで生々しい。
僕があの弓の訓練で陥った恐慌から浮かび上がることが出来たのは、只々フォーカス様のお陰だけれども…。正直アレを思い出すと僕は違った意味で動揺するので、素知らぬふりで過ごしている。
でもアレ以来、フォーカス様が僕に甘くなった様な気がして落ち着かない。二人だけならともかく、他の人がいる時にそんな優しい顔はダメだと思う。そんなのフォーカス様じゃ無い。
だって、他の人たちが何だか遠巻きにしてる!あぁ、僕は居た堪れなくて…これが最近の悩みなんだ。
「シン、近いうちに前線で戦闘がありそうだ。シンは馬上から弓を射掛けられるか?」
「…馬はだいぶ乗れる様になりましたけど、馬上からの弓引きの経験はこちらの世界ではありません。」
フォーカス様は興味深そうな顔をしてこちらを向いた。
「こちらと言うことは、元の世界では経験があるのか?」
「はい。といっても昔の戦いを模した儀式的なものでしたが。馬を走らせながら的に向かって弓を引きます。
僕は何度か参加したので、練習もかなりしました。」
フォーカス様はしばらく考え込んでいたが、明日の午前中に弓場へ向かう様に僕に言った。
「今から兵士長にお前の馬を選ばせるから、午後中乗馬して慣らすように。」
僕が兵士に連れられてジャック兵士長の元に連れられていくと、兵士長はなぜか周囲を警戒してキョロキョロした後、笑顔で僕を迎えてくれた。
「先日はありがとうございました。今日は騎馬のご指導をお願いしたく参りました。」
「シン君、そんな畏まらないでくれ。俺が緊張するだろ?今日は馬を選んで騎馬訓練だな。さぁこっちだ。」
兵士長は僕を数頭繋がれている柵の側まで連れて行った。
「シン君は、背が大きく無いからな、ここに居る馬の中から選ぶのがいいだろう。どれも元気で丈夫だぞ。」
僕は柵の側に寄って一頭、一頭の顔を見つめていった。すると一頭の馬がいな鳴いて、僕を見つめてきた。芦毛の馬だ。芦毛と言っても模様はほとんどなく、全身が明るいグレーで目元と脚は黒い。
「この馬を見せて下さい。名前はありますか?」
「いや、ここに居る馬はまだ主人も居ない、デビューしたばかりの若い馬だ。この馬はジャンプ力が飛び抜けてるんだが、いかんせん気性が荒くてな。なかなか難しい。」
僕が芦毛の側に近寄ると、好奇心いっぱいのぱっちりとした目を瞬かせて僕の手のひらに擦り寄ってきた。
「…シン君の事を気に入ったようだ。乗ってみるか?」
それが僕と風雅との出会いだった。
この世界は魔法も使用する戦い方で、僕のイメージするものとは少し違う。でも反対にゲーム的戦略として考えると、案外ハマるものがあることに気づいた。
とはいえここは現実世界だから、死んだアバターが蘇りはしないし、失われた戦力はポイントで復活しない。つくづく、リアルで生々しい。
僕があの弓の訓練で陥った恐慌から浮かび上がることが出来たのは、只々フォーカス様のお陰だけれども…。正直アレを思い出すと僕は違った意味で動揺するので、素知らぬふりで過ごしている。
でもアレ以来、フォーカス様が僕に甘くなった様な気がして落ち着かない。二人だけならともかく、他の人がいる時にそんな優しい顔はダメだと思う。そんなのフォーカス様じゃ無い。
だって、他の人たちが何だか遠巻きにしてる!あぁ、僕は居た堪れなくて…これが最近の悩みなんだ。
「シン、近いうちに前線で戦闘がありそうだ。シンは馬上から弓を射掛けられるか?」
「…馬はだいぶ乗れる様になりましたけど、馬上からの弓引きの経験はこちらの世界ではありません。」
フォーカス様は興味深そうな顔をしてこちらを向いた。
「こちらと言うことは、元の世界では経験があるのか?」
「はい。といっても昔の戦いを模した儀式的なものでしたが。馬を走らせながら的に向かって弓を引きます。
僕は何度か参加したので、練習もかなりしました。」
フォーカス様はしばらく考え込んでいたが、明日の午前中に弓場へ向かう様に僕に言った。
「今から兵士長にお前の馬を選ばせるから、午後中乗馬して慣らすように。」
僕が兵士に連れられてジャック兵士長の元に連れられていくと、兵士長はなぜか周囲を警戒してキョロキョロした後、笑顔で僕を迎えてくれた。
「先日はありがとうございました。今日は騎馬のご指導をお願いしたく参りました。」
「シン君、そんな畏まらないでくれ。俺が緊張するだろ?今日は馬を選んで騎馬訓練だな。さぁこっちだ。」
兵士長は僕を数頭繋がれている柵の側まで連れて行った。
「シン君は、背が大きく無いからな、ここに居る馬の中から選ぶのがいいだろう。どれも元気で丈夫だぞ。」
僕は柵の側に寄って一頭、一頭の顔を見つめていった。すると一頭の馬がいな鳴いて、僕を見つめてきた。芦毛の馬だ。芦毛と言っても模様はほとんどなく、全身が明るいグレーで目元と脚は黒い。
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「いや、ここに居る馬はまだ主人も居ない、デビューしたばかりの若い馬だ。この馬はジャンプ力が飛び抜けてるんだが、いかんせん気性が荒くてな。なかなか難しい。」
僕が芦毛の側に近寄ると、好奇心いっぱいのぱっちりとした目を瞬かせて僕の手のひらに擦り寄ってきた。
「…シン君の事を気に入ったようだ。乗ってみるか?」
それが僕と風雅との出会いだった。
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