女嫌い令息の指南役は処女令嬢!?

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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緊張した空気

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 顔を合わせてもツンとしたビクトリアが、深みのある青い瞳をロレンソに向けて囁いた言葉に煽られて、彼は誘う様な唇に覆い被さった。あの夜の子猫の様な悪戯な口づけを思い出して、ロレンソの身体はあっという間に目覚めてしまった。

 もちろん手加減しようと頑張ったけれど、ビクトリアの唇の柔らかな感触、そして甘い味を感じてしまったら無理だった。

 けれど、ここで本気を出したら飛び上がって逃げ出してしまうかもしれない。ロレンソは葛藤で呻きながら、ビクトリアの狭い口の中を優しく舌でなぞった。


 辛抱強く待った甲斐もあったのだろう。遂にはビクトリアの悪戯な舌がロレンソに絡みついた。その甘美な瞬間、思わず甘くビクトリアを吸った時、ビクトリアの身体が震えるのを感じて彼は腕を伸ばして両手で支えた。

 ぐったりしたビクトリアを抱き寄せて、ロレンソは彼女のこめかみに優しく唇を押し付けた。こんな風に守ってあげたいと女性に感じたのは初めてだった。

 ロレンソの腕の中でビクトリアはほっそりした身体を身動きさせて、うめく様に呟いた。

 
 「…ひどいわ、これから歌劇を観に行くと言うのにすっかり汗ばんでしまったわ。」

 その言葉の選択で男をいちいち熱くさせる事に全然気づいていないビクトリアに苦笑して、ロレンソは自分の興奮を彼女に気づかれない様に身動きして言った。

「すまない。ビクトリアが甘くてやめられなかった。今の私の口づけも気に入って貰えたのかな?」

 ビクトリアはロレンソを睨むとツンと可愛い鼻を逸らして黙り込んだ。けれども唇が弧を描いたのを見て、ロレンソは喜びが胸に広がった。


 歌劇場に到着しても、ロレンソはビクトリアに注目する貴族の男達を牽制するのに忙しく、ビクトリアが不満を溜め込んでいるのに気付かなかった。

「ビクトリア、さぁこの果実酒なら軽いから君でも大丈夫だ。もうしばらくしたら席に行こう。」

 ビクトリアはじっとロレンソを睨みつけると、口を尖らせた。

「一体どうして私を他の方々に紹介して下さらないの?まるで隠す様にして。失礼じゃありませんか。」

 ロレンソはビクトリアを紹介して貰おうと近づいて来る顔見知りの貴族から背を向けながら、ビクトリアの肘を掴んで歩き出した。


 「…ビクトリアの様な令嬢をこんな魔窟に連れて来たのが間違いだった。」

「ほら!そうやって、私と一緒に出掛けたのを後悔なさってるのね?」

 ロレンソはビクトリアの剣幕に目を丸くして、慌てた様に弁解した。

「待ってくれ、ビクトリア。そうじゃ無い。そうじゃないんだ。…素晴らしく魅力的な君を他の貴族に知られたくなくて…。君は今まで社交に殆ど出ていなかっただろう?皆君の事を知りたくてウズウズしてるんだ。」


 ビクトリアはキョトンとして、ロレンソの後ろを覗った。確かに注目を集めている気がする。

「そうだったのね?別に私は社交しに来たわけじゃないから良いわ。もう、席に行きましょうか。」

 すっかり機嫌が良くなったロレンソにエスコートされて、ビクトリアは半個室になっている観覧席から舞台を見下ろした。

「素敵!こんな席で舞台を見るのは初めてですわ。ありがとうございます、ロレンソ様。」

 瞳を輝かせて喜びを溢れさせるビクトリアから目を離せないロレンソは、隣に座ったビクトリアの手袋に包まれた手に唇を押し当てた。

「どういたしまして。いや、こちらこそありがとうかな。君のその輝く様な笑顔を見られただけで、胸がいっぱいだからね。」


 ビクトリアは居心地が悪くなって、さっきから自分に向ける眼差しに熱量を感じるロレンソから目を逸らした。胸がいっぱいだと言う割に、馬車の中では凄い口づけをして来たじゃない。あれで遠慮してるなら、本気の口づけは一体どれ程のものなのかしら。

 そんな事を思って少しドキドキしながらロレンソを盗み見た。けれどもビクトリアの企みはロレンソの眼差しに囚われて、もう一度手の甲に口づけられただけだった。

 布越しとは言え薄い絹では、ロレンソの熱い体温と唇の感触は防げない。じわじわと顔が熱くなるのを感じてビクトリアはもう歌劇にも集中出来なくなっていた。


 ようやく舞台の幕が下りて、二人だけの半個室は妙な静けさと緊張感が漂っていた。

「…しばらくここで時間を過ごそう。今ホールに出たら、君を紹介して欲しがる貴族に囲まれるのがオチだ。私は意外に独占欲が強いんだって気づいたよ。…ビクトリア、どうかしたかい?」

 ビクトリアはすっかりロレンソのあの匂いに包まれて、少しぼんやりとしてしまっていた。結局あんなに大好きな歌劇も気もそぞろで、内容も朧げだった。

「…何だか集中出来ませんでしたわ。いつもなら帰宅してお姉様に再演して見せるほど集中して観れるはずなんですのよ。きっとロレンソ様の匂いのせいですわ。私、貴方の匂いにふわふわしてしまうんですもの。」 

 手がぎゅっと強く握られて、痛みに顔を顰めたビクトリアが顔を上げると、ロレンソが琥珀色の瞳に見た事の無い光を浮かべて掠れた声で呟いた。


 「ビクトリア、それがどう言う意味か分かって言っているのかい?」












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