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匂い
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ビクトリアは何か失言してしまったらしい。ロレンソが何だか切羽詰まった空気を纏って睨みつけている。
「…ごめんなさい。私、何か失礼をしてしまったのかしら。」
取り敢えずこの空気に耐えられずに謝ってみたけれど、ロレンソは許してくれる気配がない。困って目を逸らすと、ロレンソがビクトリアの腰をグイと引き寄せた。
力強い手で腰を掴まれて、ビクトリアはハッとしてロレンソを見上げた。
馬車の中の様にすぐ側にロレンソの顔が迫っていて、ビクトリアは思わずロレンソの唇を見つめてしまった。人が見ているかもしれないこんな場所で、さっきの続きがしたいと思ってしまったなんて、私って凄くいやらしい女だわ。
ロレンソは小さく呻くと、顎を食いしばりながら軋む様な声を出した。
「こんな場所でなければ、ビクトリアは無事では居られなかったよ。男を煽ったらどうなるか教えてあげたかったが。…お仕置きだ。」
ビクトリアはロレンソのけぶる様な眼差しから目を逸らせずにドキドキしていたけれど、掴まれた手がロレンソのズボンの上に導かれると目を見開いた。手の下に指南の夜の時みたいに硬くなったロレンソのシンボルを感じて、ビクトリアは思わずそれをそっと握りしめて視線を落とした。
「…まぁ。ロレンソ様はいつもこんな風に大きくなってますの?目立ちませんこと?」
そう言いながら、ビクトリアはその張り詰めた感触から手を離せなかった。不思議だわ、男の身体って。
ビクトリアの手の上から自分の手を重ねたロレンソは、甘くため息をつきながらゆっくり手を動かした。
「もちろんいつもはこんな風じゃない。ビクトリアが欲しくてこんなになってしまった。くそ、これじゃ10代の若造だ。ビクトリア、私の匂いが好きか?」
そう言いながらもっと腰を引き寄せるので、ビクトリアはつんのめってロレンソの胸に頬を寄せた。むせ返る様なロレンソの匂いが強くなって、やっぱり力が抜ける気がする。
思わず握った手に力を入れて、ビクトリアは呻いた。
「…ええ、好きだわ。それに何だか力が抜けるわ。…それよりこれどうするの?まさかここで白いのを出すつもり?」
ビクトリアが心配になってロレンソを見上げると、ロレンソは急に咽込んでビクトリアから身体を引き離した。あのなんとも言えない感触のものからも手を引き剥がされて、ビクトリアはどこか残念な気持ちなってしまった。
「まったくとんでもないご令嬢だ。さっさと君を私の寝室に閉じ込めた方が良いみたいだ。本当に心配だ。まさか他の男にも同じことを言わないだろうね?」
ロレンソの言葉に眉を顰めたビクトリアは、そっぽを向いて口を尖らせた。
「またそうやって、私を軽んじるんだわ。もう二度と指南は引き受けません!」
するとロレンソはビクトリアの顎を掴んで目を合わせると、真剣な眼差しで囁いた。
「…ああ。私も君にもう指南は頼まない。君に頼むのは妻になって欲しいという求婚への返事だけだ。」
ロレンソは本気で私と結婚したいの?
「…貴方、私の事なんて何も知らないでしょう?私の身体が気に入ったの?」
ロレンソは考え込む様な眼差しでビクトリアを見つめながら口を開いた。
「君よりも君の事をよく知ってる気がするけどね。…じゃあ、こうしよう。いきなり知らない男と結婚したくないんだろう?じゃあ今度は私が君に指南してあげよう。きっと何度歌劇に出掛けるより君に私を知ってもらえる。
ただし、今度は私だけが君に触れる指南だ。ビクトリアが私に触れるのは禁止だ。それで指南が気に入ったら結婚してくれるかい?」
ビクトリアは思わぬ話の展開になって面食らったけれど、直ぐに持ち前の好奇心が頭をもたげた。それにロレンソに触れられたらどうなるのかは最近の一番の関心事だったのは確かだった。
ビクトリアは息を弾ませて、少し掠れた声で囁いた。
「貴方を知る事が出来るなら、指南を受けるのも良いかもしれないわ。お父様が良いっておっしゃったのなら、そのお話お受けしても良いわ。…いつ頃かしら。」
ビクトリアはすっかり浮き立っていた。今のままではロレンソの求婚に応える判断材料に欠ける気がするけれど、彼に触れられたらきっと分かる気がした。
ロレンソは、うっとりとビクトリアを優しい眼差しで見つめると、立ち上がって手を差し出した。
「では君を送りがてら子爵に直談判といこう。善は急げだ。」
相変わらず声を掛けてくる貴族たちをつれない態度で交わして出口に辿り着いたロレンソは、苦笑してビクトリアを見下ろした。
「本当に急いだ方が良さそうだ。あいつら、今週のうちに君に花籠を送りつけてくるぞ。ビクトリア、君も私の指南が終わるまで他の貴族と会ったりしないでおくれよ?」
ロレンソが見かけ以上に心配しているのが分かって、ビクトリアはちょっと良い気持ちになって答えた。
「ええ。初めての指南の相手ですもの。礼儀正しくするつもりよ?でも、貴方次第だとは思うわ。そうじゃない?」
ロレンソが分かりやすく顔を顰めたのを見て、ビクトリアはクスクス笑った。ああ、何だか凄い楽しい!
「…ごめんなさい。私、何か失礼をしてしまったのかしら。」
取り敢えずこの空気に耐えられずに謝ってみたけれど、ロレンソは許してくれる気配がない。困って目を逸らすと、ロレンソがビクトリアの腰をグイと引き寄せた。
力強い手で腰を掴まれて、ビクトリアはハッとしてロレンソを見上げた。
馬車の中の様にすぐ側にロレンソの顔が迫っていて、ビクトリアは思わずロレンソの唇を見つめてしまった。人が見ているかもしれないこんな場所で、さっきの続きがしたいと思ってしまったなんて、私って凄くいやらしい女だわ。
ロレンソは小さく呻くと、顎を食いしばりながら軋む様な声を出した。
「こんな場所でなければ、ビクトリアは無事では居られなかったよ。男を煽ったらどうなるか教えてあげたかったが。…お仕置きだ。」
ビクトリアはロレンソのけぶる様な眼差しから目を逸らせずにドキドキしていたけれど、掴まれた手がロレンソのズボンの上に導かれると目を見開いた。手の下に指南の夜の時みたいに硬くなったロレンソのシンボルを感じて、ビクトリアは思わずそれをそっと握りしめて視線を落とした。
「…まぁ。ロレンソ様はいつもこんな風に大きくなってますの?目立ちませんこと?」
そう言いながら、ビクトリアはその張り詰めた感触から手を離せなかった。不思議だわ、男の身体って。
ビクトリアの手の上から自分の手を重ねたロレンソは、甘くため息をつきながらゆっくり手を動かした。
「もちろんいつもはこんな風じゃない。ビクトリアが欲しくてこんなになってしまった。くそ、これじゃ10代の若造だ。ビクトリア、私の匂いが好きか?」
そう言いながらもっと腰を引き寄せるので、ビクトリアはつんのめってロレンソの胸に頬を寄せた。むせ返る様なロレンソの匂いが強くなって、やっぱり力が抜ける気がする。
思わず握った手に力を入れて、ビクトリアは呻いた。
「…ええ、好きだわ。それに何だか力が抜けるわ。…それよりこれどうするの?まさかここで白いのを出すつもり?」
ビクトリアが心配になってロレンソを見上げると、ロレンソは急に咽込んでビクトリアから身体を引き離した。あのなんとも言えない感触のものからも手を引き剥がされて、ビクトリアはどこか残念な気持ちなってしまった。
「まったくとんでもないご令嬢だ。さっさと君を私の寝室に閉じ込めた方が良いみたいだ。本当に心配だ。まさか他の男にも同じことを言わないだろうね?」
ロレンソの言葉に眉を顰めたビクトリアは、そっぽを向いて口を尖らせた。
「またそうやって、私を軽んじるんだわ。もう二度と指南は引き受けません!」
するとロレンソはビクトリアの顎を掴んで目を合わせると、真剣な眼差しで囁いた。
「…ああ。私も君にもう指南は頼まない。君に頼むのは妻になって欲しいという求婚への返事だけだ。」
ロレンソは本気で私と結婚したいの?
「…貴方、私の事なんて何も知らないでしょう?私の身体が気に入ったの?」
ロレンソは考え込む様な眼差しでビクトリアを見つめながら口を開いた。
「君よりも君の事をよく知ってる気がするけどね。…じゃあ、こうしよう。いきなり知らない男と結婚したくないんだろう?じゃあ今度は私が君に指南してあげよう。きっと何度歌劇に出掛けるより君に私を知ってもらえる。
ただし、今度は私だけが君に触れる指南だ。ビクトリアが私に触れるのは禁止だ。それで指南が気に入ったら結婚してくれるかい?」
ビクトリアは思わぬ話の展開になって面食らったけれど、直ぐに持ち前の好奇心が頭をもたげた。それにロレンソに触れられたらどうなるのかは最近の一番の関心事だったのは確かだった。
ビクトリアは息を弾ませて、少し掠れた声で囁いた。
「貴方を知る事が出来るなら、指南を受けるのも良いかもしれないわ。お父様が良いっておっしゃったのなら、そのお話お受けしても良いわ。…いつ頃かしら。」
ビクトリアはすっかり浮き立っていた。今のままではロレンソの求婚に応える判断材料に欠ける気がするけれど、彼に触れられたらきっと分かる気がした。
ロレンソは、うっとりとビクトリアを優しい眼差しで見つめると、立ち上がって手を差し出した。
「では君を送りがてら子爵に直談判といこう。善は急げだ。」
相変わらず声を掛けてくる貴族たちをつれない態度で交わして出口に辿り着いたロレンソは、苦笑してビクトリアを見下ろした。
「本当に急いだ方が良さそうだ。あいつら、今週のうちに君に花籠を送りつけてくるぞ。ビクトリア、君も私の指南が終わるまで他の貴族と会ったりしないでおくれよ?」
ロレンソが見かけ以上に心配しているのが分かって、ビクトリアはちょっと良い気持ちになって答えた。
「ええ。初めての指南の相手ですもの。礼儀正しくするつもりよ?でも、貴方次第だとは思うわ。そうじゃない?」
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