【 完結 】 レベルと物語の無いVR・MMORPGの世界で ＵＬＴＩＭＡＴＥ・ＳＫＩＬＬ・ＯＮＬＩＮＥ

ツヴァイ：レイド討伐編

１３０

歌に合わせて、ワールドレイドを攻撃するプレイヤー達の攻撃速度が上昇する。

比喩ではない。

攻撃速度的にも、気分的にも乗っているようだ。

何度かの範囲攻撃を受けながらも、死亡者は０。

地竜アンタラスのＨＰゲージも１本目が無くなっていた。


そして、ティファ！

手拍子で音頭を取ってんじゃねぇ！

と。

歌うのを止めて、突っ込みたくなるのを必死で堪える。

歌いながら、他のグループを見れば。

これまた、結構ノリノリで攻撃を繰り出していた。

さらに驚いたのは、チルドレン達のＨＰゲージが既に１本なくなっていた事実だった。


「・・・・・・・・・・・・・

君に～～～」

歌が終わった瞬間に、次に聞こえてきたメロディー。

これはっ！

昭和の懐メロの代表作と言っても過言ではない曲！

「目を閉じて　何も見えず・・・・・・・・・・・・」

此処で、まさかの【谷伸】スベルだと・・・・・・。

おい、歌ってるやつ・・・・・。

選曲考えろよ・・・・・。

見ろ、プレイヤー達の白い眼差しを・・・・・。

いや、谷伸を貶けなしてる訳ではないぞ。

が。


この場面で歌う歌ではないだろう！

しかし、周りを見れば。他のプレイヤーも、それなりに歌っているようだ。

少しばかり、シンクロ率が落ちてる気がしないでもないが・・・・。

その間にも、地竜アンタラスの攻撃を受けながらも。

アンタラスのＨＰは徐々に減っていく。

３匹のチルドレンは、既に消滅しており。

今のところは、数人の死亡者を出しただけ。
　
「・・・・・・・・・・・・・・

さらば　す～べ～る～　よ～～～～～」

ようやく、谷伸が歌い終わり。

次の曲の伴奏が聞こえてきた・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

天城越えだと！

スベルの後に、天城越えだと！

そう思った俺は、他のプレイヤー達に視線を運ばせる。

他のプレイヤー達も、流石にコレは嫌だったのか眉間にシワを寄せているのが目に見えて分かる。

先に言っておくが！　歌が悪いわけではない！

選曲のチョイスが悪いのだ！

その時だった。

連合チャットも使わずに、男性の大声が、その場に響き渡った。

「俺の唄を聴けぇぇ！！！」

このセリフは！

声のした方に視線を向けると。

男性プレイヤー。

ネームプレートには【バサラ】が、ギターを持って叫んでいた。

勢いよく、ギターを弾き始めるバサラ。

その曲は。

「世界の始まりの日　世界樹の下で

エルフたちの声の　遠い残響　

・・・・・・・」

おいぃぃぃ！

違うだろ！　ソレェェッ！

そこは、【DYNAMITE EXPLOSION】か【PLANET DANCE】でいけよ！

と。

何かもう、色々と突っ込みたいのは耐える。

多少かなり強引だが、流れを変えてくれたのには感謝だ。

プレイヤー達の休む間のない攻撃の嵐に。
　
地竜アンタラスのＨＰゲージも、２本目が残り僅かになっていた。


その時、地竜アンタラスが。

前足を大きく上げて、掲げた前足を地面に強く叩きつけた。

「うおっ！」

「って！」

地竜アンタラスが地面を強く叩きつけたことにより。

プレイヤー達の足元が大きく揺れて、体制を崩すことになる。

体制を崩したプレイヤー達は、ノックバック状態に陥った。

地面を叩きつけた、地竜アンタラスは。

巨大な尻尾を振り舞わして範囲攻撃を仕掛けてくる。

さらに、尻尾を振り回し終えると。

大きく口を開いて、吐息ブレスを吐き出す動作を取る。

「「「アースシェル！！」」」

数人の魔法職が、咄嗟に土属性の耐性を上げる魔法を唱える。

激しい風に巻き上げられ、土の嵐が巻き起こり、プレイヤー達を襲う。

「つぉおぉお！」

「きゃぁっ」

「ぐあっ！」


そこかしこから、プレイヤー達の悲鳴が上がり。

吐息ブレス攻撃が収まった時には、地竜アンタラスに攻撃していたプレイヤー達の３分の１程のプレイヤーが幽霊となり、前線から入口の方に向かってきていた。

「交代だ！」

ティファの号令と共に、予め決められていた交代プレイヤー達が、地竜アンタラスの元に向かい攻撃を開始する。

地竜アンタラスのＨＰバーの残りも、後3本にまで減った。

先ほどの攻撃は、ＨＰ減少と共に更新される、ボスのアルゴリズムの変更による攻撃だろう。


「ＨＰバーが無くなる辺りから、攻撃パターンが変わるかも知れないから注意しろ！」

ティファが、アンタラスに攻撃を加えるプレイヤー達に注意を促す

今の攻撃で、俺と、ねぎトロ、バサラ以外のシンガープレイヤー達は死亡して。

後衛部隊に蘇生リザレクションをしてもらいながら、自分のアイテムを取りに向かうタイミングを見計らっている。

「大回復グレート・ヒール！　エンチャントシールド防御強化！エンチャントウェポン武器強化！」

イクルの身代わりとなったロナのＨＰを回復させながら。

圭けいが前衛組にバフを掛ける。

勿論、交代待機待ちのプレイヤー達も、遠距離スキルを使いながら、地竜アンタラスのＨＰを削るのは忘れていない。

ただし、ＭＰを使い過ぎて、いざと言う時にＭＰ切れを起こさない様に加減をしながらだが。

俺は歌うのを辞めて、ＭＰ回復の為に休憩することにした。

「ロナ。ＭＰ回復に入る。」

もう何度目になるか分からないＭＰ回復タイムだ。

他のシンガー歌い手達と、出来るだけ被らない様に休憩はとっている。

誰が段取りを付けた訳でもないが、自然とこうなっていた。

地竜アンタラスの３連続コンボの攻撃も、最初の攻撃以来は死亡者も出すこと無く凌いでいる。

地竜アンタラス戦に突入してから、時間にして、既に３５分は経っている。

地竜アンタラスのＨＰゲージの残りは丸々１本と、２本目が５分の１。

３本目のＨＰバーが無くなる時に、チルドレンが３匹湧いただけで。

今のところ、それ以外は護衛湧きは無い。