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ツヴァイ編

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 * * * * *

一方、自分のハウスの屋上で、戦場になっている自宅前を眺めるイクル達。

その横に、幽霊になったCHUが現れる。

亜里亜アリアはCHUを見ると、蘇生リザレクションを唱える。

光のエフェクトがCHUを包み込み。

幽霊ローブを纏ったCHUが立っている。


「お帰り。」

亜里亜がCHUを見ながら言うと。

「これで、お役御免だな。」

苦笑しながらCHUが言う。

「最後は誰に殺られた?」

イクルが聞くと。

「知らん。と、言うか。

あの状況で、誰に攻撃されたか分かる奴がいたら教えてくれ。

ログが物凄い速さで流れていくから、確認すらできんぞ。」

ハウス前を指差しながらCHUが言う。

蒼夜そうや、カナタ、シャナ、沙耶、けいの5人は、ハウス前の惨状を見ながら。物凄い顔になっていた。

ハウス前の状況。

それは、まさに死屍累々と言う言葉がピッタリという程に、プレイヤー達の死体の山が築かれていた。

赤色(マーダー)プレイヤーも、白色(一般)プレイヤーも入り混じり、死体が幽霊が、ハウスの前を埋め尽くしている。

そして、CHUはイクル達が、座るテーブルの空いている席に座ると。

イクル、ガイ、亜里亜、キョウ、ミリア達に混じって、コーヒーを飲み出し始した。



武器剥がしリムーバー!!」

破砕撃クラッシュ!」

ティファの片手剣を、武器で受け止める赤色(マーダー)プレイヤー。

お互いの騎乗する騎馬から攻撃をする2人。


「んったく。いい加減ひつこいぞ、ティファ。」

「うっさい!」

「おとなしく、バードしてれば良いものを・・・」

「誰のせいで、スキルを入れ替えたと思っているっ!」

「誰のせい?」

剣を打ち合いながらも、会話をするティファと赤色(マーダー)プレイヤー。

「お前のせいだろ!ギリアム!破砕撃クラッシュ!」

すごい形相で、ギリアムに斬りつけるティファ。

受け流しパリィ。 おぉ~、怖い怖い。」

軽口を叩きながらも、ギリアムはティファの攻撃を盾で受け止める。


受け流しパリィ
*武器や盾で、攻撃を受け流すスキル。


ツヴァイ鯖での、トップギルドに一番近い。

ゾディアックの、ギルドマスターのティファ。

ツヴァイ鯖、PKギルドのトップに位置するギリアムの一騎打ち。

周囲のプレイヤーも、初めての対戦カードに。

知ってか知らずか、2人の戦いを邪魔しようとするプレイヤーを牽制攻撃している。


武器剥がしリムーバー!。」

受け流しパリィ。」

ギリアムのスキルを、ティファが受け流す。


破砕撃クラッシュ!」

強斬撃スラッシュ!」


お互いの攻撃が牽制され合い。相手にダメージが通らない状況。

2人のステータスは、ほぼ同じ。

スキル構成も、互角に近い。

勝負を決めるのは。

ウェポンスキルの選び方と時の運。

ギリアムは、ティファから少しだけ距離を取ると、腰袋に手を当てて武器を持ち帰る。

持ち替えた武器はメイス。

ティファも、その隙に武器を持ち替えた。

持ち替えた武器はハルバード。

★ハルバード★
*ハルバードの形状には2種類ある。
*先端部分が槍状で、側面は斧状のハルバード。
*先端部分が槍状で、側面がハンマー状のハルバード。

 
ティファが持ち替えたハルバードは、側面がハンマー状のハルバードだった。

ティファ、ギリアム共に。着ている鎧は金属で出来た全身鎧。

斬撃よりも、鈍器の攻撃が有効なのだ。


「女の子が持つ武器じゃないだろソレ?」

「ふぅぅぅぅぅ。」

ティファは大きく息を吐きだして、頭に登った血を下げる。

「ゲームなんだから。何を持ってもOKでしょ。」

気分を落ち着かせたせいか。表情は怖いが、言葉使いは柔らかくなる。

「んじゃ、初対戦の決着と逝きますか。」

「お望み通り、逝かせてあげるわ。」

ギリアムが、ティファに近づく。

ティファは接近されないように、ギリアムに向けて攻撃する。

その攻撃を、盾で受け止めながらもティファに向かってメイスで攻撃。

ハルバードの柄で、メイスの攻撃を弾き。柄を引き滑らす様に短く持つと、ギリアムに向かってウェポンスキルを発動させた。


加速突きアクセル!」

受け流しパリィ!」


★アクセル★
*刺突系武器での最速攻撃。
*ハルバードの場合は最速攻撃+ノックバック+気絶の効果有り。

★ノックバック(よろめき)★
*相手の体制を崩して、少し後退させる状態。


パリィで防御したので、気絶は免れるもノックバック効果で、ギリアムが僅かに後退する。

スキル硬直が解けた瞬間。ティファの追い打ちがギリアムに襲い掛かる。


「フルスイング!」

「フルスイング!」


ほぼ、同じタイミングで技を発動する2人。

だが、同じスキルでも武器が違えば、スキル発動時間も、スキルモーションも違う。

ギリアムの乗る騎馬がティファに吸い込まれるように、一瞬で間合いを詰めてティファの身体に攻撃を当てていた。


「っ!」

身体に攻撃を受けて、ティファが騎馬から落ちる。

ティファのHPゲージが、一気に半分以上減る。

「クラッシュ!」

馬から落ちた、ティファ目掛けて。ギリアムは馬上から落ちる様に、ティファに止めのスキルを発動した。

ギリアムの振り降ろしたメイスが、ティファの身体に直撃してティファのHPゲージを0にした。

ティファに止めを刺した瞬間に、ギリアム目掛けて魔法が飛んできた。

スキル使用後の僅かな硬化時間のせいで、ギリアムは魔法を避ける事ができず、爆炎フレア!の魔法の直撃を食いHPゲージを半分近く削った。

「っ!」

魔法が飛んできた方に視線をやると、1人の男性プレイヤーがギリアムに向けて新たに魔法を放とうとしていた。

ギリアムに向けて、魔法を撃とうとしたプレイヤーに矢の雨が降り注ぎ、矢に当たったプレイヤーの魔法の詠唱をキャセルさせる。

「クリミナルの連中が来る! ギリアム引き上げるぞ!」

1人の赤色(マーダー)プレイヤーが、ギリアムに駆け寄り伝える。

★ギルド:クリミナル★
*ツヴァイ鯖で最多数のPKKプレイヤーキラーキラーギルド。
*個人個人は大したことのないプレイヤーだが、とにかく人数が多い。
*おまけに、煩い、ウザイ、ひつこい、の三拍子が揃ってる【PKに対してだけだが】。
*でも何故か、一般プレイヤーには感謝されているギルド【謎だ】。



「分かった、皆に伝えてくれ。」

言われた赤色(マーダー)プレイヤーは、即座に行動に移り、連合チャットで撤退の意思を伝える。

すれ違いざまに、ギリアムに向けて魔法を撃っていたプレイヤーに攻撃するが、魔法を使い防がれてしまう。

近くに幽霊となって佇むティファに視線をやると。

「今日は俺の勝ちだな。ハルバードと鎧は貰ってくぞ。」

そう言って、ティファの死体からハルバードと鎧をルート漁るして、ギリアムは馬に騎乗すると、まだ戦う仲間たちに声をかけながら戦場から離脱していった。
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