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高等部一年生

008※

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 大好きな人。
 憧れの人。
 怜くんに抱かれたい子が、たくさんいることを知っている。
 そんな彼らから、自分が嫉妬されていることも。
 ぼくが逆の立場でも嫉妬するよ。
 それが一時の、性欲処理のためだったとしても。

 怜くんが恋愛をするのは、「ぼくきみ」のゲーム主人公くんであって、ぼくじゃない。

 未来を知っていても、この気持ちは止められなかった。
 大好きな、大好きな怜くん。
 少しでも彼の傍にいられるなら、触れてもらえるなら、先のことなんてどうだっていいとすら思える。

「保……」
「んっ」

 怜くんの熱い吐息が頬にかかる。
 キスされる、そう思ったときには、唇を合わせたままソファに押し倒されていた。

「っ……ふ、んんっ」

 咄嗟に閉じた唇を吸われ、上唇と下唇の間を舌でなぞられる。
 まるで癒着した氷を溶かすような舌先の動きに、堪らず口を開くと中へ舌が進入してきた。
 ぬめりをもったそれが、唇の裏を舐める。
 普段自分でも意識しないところまで舌を伸ばされて、体がビクついた。

「ぁ……れい、く……っ」

 止めて欲しいような、止めて欲しくないような。
 ただ本能的に、いけないことをしているように思えて、怜くんの胸を手で押す。
 その程度では押し返せないと、分かっているのに。
 案の定、怜くんが口付けを止める素振りはなく、押し付けた手の平から彼の体温が伝わってくるだけだった。

「はっふ、んんっ……」

 大きく口を開いて、唇を離すことなく口内を貪られる。
 唾液があふれ、顎にまで伝う頃には、頭がぼうっと熱に浮かされていた。
 最初は体が密着する緊張感に閉じていた目も、ようやく開けられるようになる。
 けれど視界はぼやけ、怜くんの表情の機微までは分からない。
 辛うじて唇が合わされている間も、一心に見つめられていることだけは、正面に見えた海の色で理解した。
 しかし見られていると意識した途端、心臓が暴れ出す。
 こんなゼロ距離では、見える範囲が限られるとしても。

 きっと全部バレてる。
 口内を舐められ、感じたことも。それを享受したいという思いがあったことも。
 自分の浅ましい部分は、全て怜くんに伝わっている。
 そう思うと、目尻に涙が浮かんだ。
 心臓の鼓動が痛い。

 呼吸すら苦しくなって、怜くんの胸に置いた手が、彼のシャツに皺を作る。
 するとようやく口付けから解放された。
 唇を離した怜くんは、そのままぼくの目尻の涙を吸う。
 次はどうするのかと濡れた瞳であとを追うものの、見えたのは銀色の髪だけだった。
 重力に沿って落ちた髪が、怜くんの表情を隠してしまう。
 彼の高い鼻先が首筋に触れ、シャツの上から鎖骨をキツく吸われる感覚に、勝手に声が出た。

「やっ……怜くん……!」
「まだこれからだろう?」

 言うやいなや、怜くんはぼくの足の間に割って入ると、乱暴にシャツをたくし上げた。
 素肌が外気に晒され、体が強張る。
 けれどそれ以上に、怜くんの長い指が肌に触れて、横隔膜が痙攣を起こしそうだった。

「あっ……!」

 両手で脇腹を撫で上げられ、肋骨にまで指が伸びる。
 脇の下の骨の位置を、一本一本確かめるような指の動きに、反射的に腰を捻った。

「やだ、くすぐったいっ」
「感じるって言え」
「言ったら、止めてくれる……?」
「検討はする」
「そんな……ひぅっ」

 まるでくすぐりの刑を受けているようだ。
 シャツはもう胸の上までたくし上げられていた。
 室温のおかげか、すぐ傍に人の体温があるからか、寒さを感じることはないけど……。
 上半身を、それこそ脇も全て見られてると思うと、恥ずかしくて顔が熱くなる。
 一応ムダ毛の処理はしてるけどさ、何もそんなところを重点的に触らなくてもいいじゃないっ。
 未だ動き続ける怜くんの指を止めたくて、脇を締めてみてもあまり効果はなかった。
 そして次第に怜くんの手は、ぼくのない胸を揉みはじめる。
 親指で弧を描きながら突起部分に触れられると、ソファから背中が浮いた。

「あっ……ぁ……怜くん、それ、やっ」
「嫌そうには見えんが?」

 怜くんは薄く笑いながら、親指の腹で乳首を撫で続ける。
 ジワジワと下半身に熱が集まる感覚に、ぼくは首を振った。

「やだっ……感じるから、それ、やめてぇっ」

 大きく口を開けて懇願すると、視界が遮られて息が止まる。

「んんっ!」

 口内を乱暴に舌で貪られて、やっと口付けされているのだと気付いた。
 慌てて鼻で息をすると、くぐもった声が漏れていく。

「あふっ、ぁ……っ」

 ぢゅっと舌先を吸われた瞬間、甘い痺れが全身を駆け巡った。
 怜くんはそんなぼくの反応を、面白そうに目を細めながら観察している。
 感じた瞬間を見られたのが恥ずかしくて、必死に口付けから逃れようとするけど、上から与えられる圧に首を振ることすらままならない。
 そんな中、怜くんの片手は未だ、ぼくの乳首をいじっていて……。

「は、ぁ、やぁっ……!」

 ピリッとした快感が走る度に、息も絶え絶えになり、喘ぐ。
 体も火照って、じっとりと汗ばんでいた。
 暑くて、苦しくて、早く解放して欲しいとばかり願う。
 いつも終わった後は、次こそは何か意趣返しがしたいと思うんだけど、毎回、怜くんの手管に翻弄されるだけの自分がいた。
 だ、だって、好きな人の舌が、ぼくの口の中に入ってるとか考えたらダメでしょ! なんかもうそれだけで叫びたくなっちゃうでしょ!
 なのに、体のあちこちも触られて……! あー! うー!
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