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お師匠様と認定試験
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こんにちは。今日も今日とてお師匠様に振り回されているミリーです。ちなみにあれから生活が様変わり、なんてことはなく鍛錬の日々を過ごしています。
私としてはもう少し何かがある──例えば国の介入などが発生すると思っていたのですが、そんなことは全くこれっぽっちもありませんでした。お師匠様曰く、これまでの報酬だそうです。一体お師匠様はどんな世界を歩まれてきたのでしょうか、教えてくれても罰当たりではないと思うのですがその気配はありません。……残念なのは何故でしょう、精神衛生上は大変よろしいというのに。
とはいえ、まずは目先の世界です。今回の課題はいかに手早く多くのポーションを作ることができるか。これが出来れば今度こそ魔法士へなれるそうです。どうやらお師匠様、つまり師事している人が許可を出せば登録が出来るようです。偽ることはそもそもできません。
何故なら魔術師になる時以外、手本となる存在が共に在り、その実力を証明することに異を唱えないことが必須とされる為です。また、先日のように第三者が見ていることや、実物の展示が必要なことからも一定の質を維持しているともされているそうです。以上、お師匠様情報でした。
頭の中はそんなことを考えつつも、手は高速に動かして薬草の処理をしていきます。魔法であれば身体の動く速さを変えることも可能です。後からくる筋肉痛に耐えることができれば、ですが。あいにくといいますか、兵士時代にそんなことは日常茶飯事だったので見た目よりも筋肉はあります。それに調薬の際、意外と筋肉を使う場面も多いのです。
つまり私の場合、そこまで酷くなりません。集大成とはこのことを言うのでしょう。ええ。実感しております。
お師匠様はというと、壁になったように息を押し殺して私の一挙一動を凝視しています。まるで何も見逃さないと言わんばかりに。実際そうなのでしょう、私が彼の思う魔法士に到達しているか、試験しているのですから。
大量に処理した薬草を煮詰める際にも神経を張り巡らします。より苦みが少なくなるよう、繊維をなるべく潰さずに沿って行ったそれらをここで失敗すれば意味がありません。灰汁がでてしまうと濁りとなり、劣化しやすくなってしまいます。しかし煮詰めないと苦みが減らないので、そのギリギリを狙うしかありません。
今までの経験上、ここというところで火から離しました。するとお師匠様がようやく一言呟きました。
よくやった。それはお師匠様が褒める際、最上の言葉です。
「腕を上げたな。ポーション百個分、合格だ」
「けれどまだ味を見ていませんよ」
「あぁ。けど、良いポーションというのは見れば分かるんだ」
はぁ、そんなものですか。いわゆる慣れというものなのでしょうか。それとも見る目を養うといったものでしょうか。どちらにせよ私には分かりません。手ごたえは、確かにありますが。
後はこれを近くの町へ運ばねばならないのですが、どうしましょう。と悩んだのもつかの間、出来立てポーションの入った鍋と私の腕を掴んだお師匠様はそのまま役場まで転移してしまいました。
突然現れた私達にざわつく人々を無視して『魔法(術)関連事務』まで、お師匠様は足を運びました。なお鍋は私も持っているので、引っ張られる形で私も進んでいきます。
「こいつの魔法士登録に来たんだが、ポーションを見てくれないか」
「え、えぇ。かしこまりました」
戸惑う様子のある職員さんに恐縮しつつ鍋を差し出すと一瞬にして目の色が変わり、その後すぐに書類を持ってくることを伝えられました。鍋は中身を移して下さるとのことで、職員さん方へお渡ししました。
ただ困ったことが一つ。文字を読むことは出来ても書くことは練習中なのです。そのことをこっそりお師匠様へ話すと、名を書ければ問題ない、とのこと。それで文字の練習は名前だけ異様にさせてきたのですね……ならそうおっしゃってくださいよ……。
しばらくして空になった鍋と数枚の紙を持って同じ職員さんが戻ってきました。喜色満面の笑みとはまさにこのことを言うと体現しています。
「あのポーションの出来は素晴らしいですね。良く出来ています。これで魔法士なんてもったいないです」
「はぁ、そうですか」
生返事と言われても仕方ありません。なにせ実感がわかないのですから。
ほわほわとした気持ちのまま書類に名前を書き終えると、おめでとうございますと職員さんが発した。
「今この時点で、貴方は魔法士に昇格しました」
その言葉が合言葉だったのか、書類全てが合わさると藍色をした手帳に変化しました。表紙を開くと私の顔と名前が描かれていました。一体どんな仕組みになっているのでしょう、不思議です。魔術の一種なのでしょうけど、でもそれだけです。
ただ、分かることがあるとすれば。私は本当に、魔法士になれたようです。
私としてはもう少し何かがある──例えば国の介入などが発生すると思っていたのですが、そんなことは全くこれっぽっちもありませんでした。お師匠様曰く、これまでの報酬だそうです。一体お師匠様はどんな世界を歩まれてきたのでしょうか、教えてくれても罰当たりではないと思うのですがその気配はありません。……残念なのは何故でしょう、精神衛生上は大変よろしいというのに。
とはいえ、まずは目先の世界です。今回の課題はいかに手早く多くのポーションを作ることができるか。これが出来れば今度こそ魔法士へなれるそうです。どうやらお師匠様、つまり師事している人が許可を出せば登録が出来るようです。偽ることはそもそもできません。
何故なら魔術師になる時以外、手本となる存在が共に在り、その実力を証明することに異を唱えないことが必須とされる為です。また、先日のように第三者が見ていることや、実物の展示が必要なことからも一定の質を維持しているともされているそうです。以上、お師匠様情報でした。
頭の中はそんなことを考えつつも、手は高速に動かして薬草の処理をしていきます。魔法であれば身体の動く速さを変えることも可能です。後からくる筋肉痛に耐えることができれば、ですが。あいにくといいますか、兵士時代にそんなことは日常茶飯事だったので見た目よりも筋肉はあります。それに調薬の際、意外と筋肉を使う場面も多いのです。
つまり私の場合、そこまで酷くなりません。集大成とはこのことを言うのでしょう。ええ。実感しております。
お師匠様はというと、壁になったように息を押し殺して私の一挙一動を凝視しています。まるで何も見逃さないと言わんばかりに。実際そうなのでしょう、私が彼の思う魔法士に到達しているか、試験しているのですから。
大量に処理した薬草を煮詰める際にも神経を張り巡らします。より苦みが少なくなるよう、繊維をなるべく潰さずに沿って行ったそれらをここで失敗すれば意味がありません。灰汁がでてしまうと濁りとなり、劣化しやすくなってしまいます。しかし煮詰めないと苦みが減らないので、そのギリギリを狙うしかありません。
今までの経験上、ここというところで火から離しました。するとお師匠様がようやく一言呟きました。
よくやった。それはお師匠様が褒める際、最上の言葉です。
「腕を上げたな。ポーション百個分、合格だ」
「けれどまだ味を見ていませんよ」
「あぁ。けど、良いポーションというのは見れば分かるんだ」
はぁ、そんなものですか。いわゆる慣れというものなのでしょうか。それとも見る目を養うといったものでしょうか。どちらにせよ私には分かりません。手ごたえは、確かにありますが。
後はこれを近くの町へ運ばねばならないのですが、どうしましょう。と悩んだのもつかの間、出来立てポーションの入った鍋と私の腕を掴んだお師匠様はそのまま役場まで転移してしまいました。
突然現れた私達にざわつく人々を無視して『魔法(術)関連事務』まで、お師匠様は足を運びました。なお鍋は私も持っているので、引っ張られる形で私も進んでいきます。
「こいつの魔法士登録に来たんだが、ポーションを見てくれないか」
「え、えぇ。かしこまりました」
戸惑う様子のある職員さんに恐縮しつつ鍋を差し出すと一瞬にして目の色が変わり、その後すぐに書類を持ってくることを伝えられました。鍋は中身を移して下さるとのことで、職員さん方へお渡ししました。
ただ困ったことが一つ。文字を読むことは出来ても書くことは練習中なのです。そのことをこっそりお師匠様へ話すと、名を書ければ問題ない、とのこと。それで文字の練習は名前だけ異様にさせてきたのですね……ならそうおっしゃってくださいよ……。
しばらくして空になった鍋と数枚の紙を持って同じ職員さんが戻ってきました。喜色満面の笑みとはまさにこのことを言うと体現しています。
「あのポーションの出来は素晴らしいですね。良く出来ています。これで魔法士なんてもったいないです」
「はぁ、そうですか」
生返事と言われても仕方ありません。なにせ実感がわかないのですから。
ほわほわとした気持ちのまま書類に名前を書き終えると、おめでとうございますと職員さんが発した。
「今この時点で、貴方は魔法士に昇格しました」
その言葉が合言葉だったのか、書類全てが合わさると藍色をした手帳に変化しました。表紙を開くと私の顔と名前が描かれていました。一体どんな仕組みになっているのでしょう、不思議です。魔術の一種なのでしょうけど、でもそれだけです。
ただ、分かることがあるとすれば。私は本当に、魔法士になれたようです。
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