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お師匠様の非常識さ
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ご機嫌よう、ミリーです。あれから内乱の後処理、つまりは片付けを頼まれた私ですが、特に何もすることがありません。精々今回の規模を計測し、どれほどの被害があり、戦果はどの様なものか書き記すだけです。
ええ、それだけと思われましたでしょう。私も、私以外の方も早く終わらせようとしたものです。今となっては夢の世界と相成りましたが。
お師匠様ったら、本当に薬草が撒かれた範囲を焼いてしまいました。私が詠唱して撒いたものはもちろん、一部風によって運ばれたものまで全てです。全てといえば全てなのです。人の焼けた嫌な匂いが鼻について仕方ありません。
当の本人はというと、先ほどの場所から微塵も動いておりません。後のことは弟子に任すと言わんばかりです。信頼の表れと取るべきか単に面倒くさいだけなのか、おそらく後者でしょうがそれでもやるしかありません。ため息つきたくなります。
しかしこれはどうしようもありません。やれと言われたらやるしかないのが弟子です。諦めてやるしかないのです。
そんなわけで計測を始めましたが、その範囲を調べれば調べるほど、お師匠様は規格外だと思い知らされます。
普通、陣がないものというのは威力が随分と減ります。それは己が秘める魔力において、使用できる量が少ないからと言われています。つまり陣を使えば威力は跳ね上がるのです。簡単なもの──例えば火をおこす為や、水を清浄にするなどといった行為は比較的行いやすく、適性がある者であれば魔法使いでなくても出来るとされています。つまり詠唱が短いほど威力は低い、とされるのが常識なのです。
だというのにお師匠様は詠唱が短く、陣も使用していないのに威力が高い魔術を行使したのです。一体何故、どのようにしたらこんなことが出来るのか不思議でなりません。
大体、詠唱の内容で言ってしまえば初期魔法と言われても遜色ないものです。なのに目の前にある光景はどう見積もっても初級……いえ、やはり高等魔術ですね。目眩がしそうです。
「ほらほらどうした、手が止まってるぞー」
遠くから呼びかけられる声に恨めしく思い、ジト目を差し上げます。頭痛がするほどの規模で魔術を使用された人間にのほほんと頑張れと発破をかけられるほど嫌なものはありません。ええ本当に。
計測が終了したのは、そろそろ夜になろうという頃合いでした。これから帰ることを考えれば心が折れそうです。一晩歩かなければいけない距離なのですから。
「終わったか? なら戻るぞ」
兵士達は王城に行き此度の報告をしろ。良いな。そう言い残して腕を掴まれると、光に包まれ浮遊感を感じたと思った次の瞬間には、私の視界に入ったのはいつもと変わらぬ家がありました。
あくびをしながら寝るか、と退室しかけたお師匠様に詰め寄ります。一体今の魔術は何なのか、と。
驚かれたような表情をされた後、何やら訝しげに見つめられました。知らないのか、と。何のことだか分からずに首をひねると、ブツブツと何やら口の中で言葉を転がし始めました。
「戦争孤児だからか……いやそれにしたって……まさかずっと戦場にいた弊害か……」
「あの、お師匠様? そろそろ教えてくださりませんか?」
「ん、ああ……。そうだな、空間転移魔術と言えば良いんだろうな。いわゆる転移だ」
「はい?」
「自分の知っている場所、あるいは地図上の場所へ飛ぶ魔術の一種だ。飛行魔術の応用だと言えば分かるか?」
「え、ええ、それなら」
でもお師匠様、それを貴方は無詠唱で行いませんでしたか? あの光は陣だったと思えば納得できますが。
つくづく、その実力は恐ろしいものがありますね。なぜ王宮で働かないのでしょう、こんな森深くで朽ち果てるような人ではありません。世界の不思議出来事に数えられてもおかしくありませんよ。
今度こそ寝る、と言った後ろ姿を止めることはありませんでした。
ええ、それだけと思われましたでしょう。私も、私以外の方も早く終わらせようとしたものです。今となっては夢の世界と相成りましたが。
お師匠様ったら、本当に薬草が撒かれた範囲を焼いてしまいました。私が詠唱して撒いたものはもちろん、一部風によって運ばれたものまで全てです。全てといえば全てなのです。人の焼けた嫌な匂いが鼻について仕方ありません。
当の本人はというと、先ほどの場所から微塵も動いておりません。後のことは弟子に任すと言わんばかりです。信頼の表れと取るべきか単に面倒くさいだけなのか、おそらく後者でしょうがそれでもやるしかありません。ため息つきたくなります。
しかしこれはどうしようもありません。やれと言われたらやるしかないのが弟子です。諦めてやるしかないのです。
そんなわけで計測を始めましたが、その範囲を調べれば調べるほど、お師匠様は規格外だと思い知らされます。
普通、陣がないものというのは威力が随分と減ります。それは己が秘める魔力において、使用できる量が少ないからと言われています。つまり陣を使えば威力は跳ね上がるのです。簡単なもの──例えば火をおこす為や、水を清浄にするなどといった行為は比較的行いやすく、適性がある者であれば魔法使いでなくても出来るとされています。つまり詠唱が短いほど威力は低い、とされるのが常識なのです。
だというのにお師匠様は詠唱が短く、陣も使用していないのに威力が高い魔術を行使したのです。一体何故、どのようにしたらこんなことが出来るのか不思議でなりません。
大体、詠唱の内容で言ってしまえば初期魔法と言われても遜色ないものです。なのに目の前にある光景はどう見積もっても初級……いえ、やはり高等魔術ですね。目眩がしそうです。
「ほらほらどうした、手が止まってるぞー」
遠くから呼びかけられる声に恨めしく思い、ジト目を差し上げます。頭痛がするほどの規模で魔術を使用された人間にのほほんと頑張れと発破をかけられるほど嫌なものはありません。ええ本当に。
計測が終了したのは、そろそろ夜になろうという頃合いでした。これから帰ることを考えれば心が折れそうです。一晩歩かなければいけない距離なのですから。
「終わったか? なら戻るぞ」
兵士達は王城に行き此度の報告をしろ。良いな。そう言い残して腕を掴まれると、光に包まれ浮遊感を感じたと思った次の瞬間には、私の視界に入ったのはいつもと変わらぬ家がありました。
あくびをしながら寝るか、と退室しかけたお師匠様に詰め寄ります。一体今の魔術は何なのか、と。
驚かれたような表情をされた後、何やら訝しげに見つめられました。知らないのか、と。何のことだか分からずに首をひねると、ブツブツと何やら口の中で言葉を転がし始めました。
「戦争孤児だからか……いやそれにしたって……まさかずっと戦場にいた弊害か……」
「あの、お師匠様? そろそろ教えてくださりませんか?」
「ん、ああ……。そうだな、空間転移魔術と言えば良いんだろうな。いわゆる転移だ」
「はい?」
「自分の知っている場所、あるいは地図上の場所へ飛ぶ魔術の一種だ。飛行魔術の応用だと言えば分かるか?」
「え、ええ、それなら」
でもお師匠様、それを貴方は無詠唱で行いませんでしたか? あの光は陣だったと思えば納得できますが。
つくづく、その実力は恐ろしいものがありますね。なぜ王宮で働かないのでしょう、こんな森深くで朽ち果てるような人ではありません。世界の不思議出来事に数えられてもおかしくありませんよ。
今度こそ寝る、と言った後ろ姿を止めることはありませんでした。
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