3 / 14
02.家族の変貌
しおりを挟む
私が目覚めた報せを受けて、家族がやってきた。両親と兄。全員私には赤の他人のように思えるほど関係が希薄だった人達。
「良かった、シルビアが目覚めてくれて」
「シルビア、可哀そうに」
「シルビア、無理をしてはいけないよ」
それなのにみんながみんな優しく声をかけてきた。その違和感に虫唾が走る。散々ないがしろにしてきた癖に何故今更?そう考えているとほとんど話したこともない兄がとんでもないことをいいはじめた。
「シルビア、お前を殺そうとした女は無事に捕らえられたから安心しなさい」
「えっ?」
「そうか、シルビアは何も知らないのだね。あの女、リリアがどれほど邪悪な女だったか」
リリアの名前に思わず目を見開く。リリアとは男爵令嬢で、リベリオンの幼馴染みで愛されていた少女だろうか。だとしたら……。
「リリア・トラン元男爵令嬢だ。お前の婚約者の幼馴染みでお前を殺そうとした恐ろしい女だ」
なぜと言いたいが声が全くでない。それを察したのか兄は私の髪を撫でてとても優しい口調で話し始めた。
「元からあの女は怪しいと思っていた。リベリオン小公爵は冷たいと言われているのになぜかあの女にだけ心を開いていた。病弱な幼なじみにだけ耽溺し、シルビアをないがしろにする最低な男なのかとも考えていて、実はずっと小公爵とリリアの動向を見張っていた結果、あの日お前をリリアが突き落とすところを目撃したんだ」
見張っていた?兄が?私に会ったことほぼない兄が?あまりの事実に首を傾げた。そういえば兄が今着ている服は警ら隊の制服だ。興味がないからまるで知らなかったが兄は執行機関の人間だったらしい。
この国では王政ではあるが、事件などがあった場合に調査を行う警ら隊がある。元々は騎士団だったが戦争がなくなったことで国の治安維持組織として警ら隊に変異した。
彼らは主に高位貴族からなるため正直不正などが暴かれることはないという認識だが国の治安を守るために必要な機関である認識だ。
(私になんの関心もないお兄様がなぜそこまでしたのだろう……)
私はしゃべれないのでただ話している兄を見つめた。すると兄は今にも泣きそうな表情になる。
「本当に今まですまなかった。どうしてこんなことになるまで俺はお前とちゃんんと向き合わなかったんだろう」
涙をながすその姿に正直違和感しかない。そして、その横で同じように私を見て泣く母も、沈痛な面持ちの父も全てが全部夢かなにかのように現実味がない。
(これは夢かもしれない。私が見ている都合の良いただの夢)
そうでなければあんなに私に関心がなかった家族がこんなに関心を持つはずがない。そもそも昨日会ったリベリオンだって様子がおかしかった。
あんな優しい顔見たことがない。
(きっとこれは夢だわ。ならもう少し楽しんでも良いわよね?)
都合の良い優しい夢。ならば好きなようにこの世界を堪能してやろうと私は誓った。
「良かった、シルビアが目覚めてくれて」
「シルビア、可哀そうに」
「シルビア、無理をしてはいけないよ」
それなのにみんながみんな優しく声をかけてきた。その違和感に虫唾が走る。散々ないがしろにしてきた癖に何故今更?そう考えているとほとんど話したこともない兄がとんでもないことをいいはじめた。
「シルビア、お前を殺そうとした女は無事に捕らえられたから安心しなさい」
「えっ?」
「そうか、シルビアは何も知らないのだね。あの女、リリアがどれほど邪悪な女だったか」
リリアの名前に思わず目を見開く。リリアとは男爵令嬢で、リベリオンの幼馴染みで愛されていた少女だろうか。だとしたら……。
「リリア・トラン元男爵令嬢だ。お前の婚約者の幼馴染みでお前を殺そうとした恐ろしい女だ」
なぜと言いたいが声が全くでない。それを察したのか兄は私の髪を撫でてとても優しい口調で話し始めた。
「元からあの女は怪しいと思っていた。リベリオン小公爵は冷たいと言われているのになぜかあの女にだけ心を開いていた。病弱な幼なじみにだけ耽溺し、シルビアをないがしろにする最低な男なのかとも考えていて、実はずっと小公爵とリリアの動向を見張っていた結果、あの日お前をリリアが突き落とすところを目撃したんだ」
見張っていた?兄が?私に会ったことほぼない兄が?あまりの事実に首を傾げた。そういえば兄が今着ている服は警ら隊の制服だ。興味がないからまるで知らなかったが兄は執行機関の人間だったらしい。
この国では王政ではあるが、事件などがあった場合に調査を行う警ら隊がある。元々は騎士団だったが戦争がなくなったことで国の治安維持組織として警ら隊に変異した。
彼らは主に高位貴族からなるため正直不正などが暴かれることはないという認識だが国の治安を守るために必要な機関である認識だ。
(私になんの関心もないお兄様がなぜそこまでしたのだろう……)
私はしゃべれないのでただ話している兄を見つめた。すると兄は今にも泣きそうな表情になる。
「本当に今まですまなかった。どうしてこんなことになるまで俺はお前とちゃんんと向き合わなかったんだろう」
涙をながすその姿に正直違和感しかない。そして、その横で同じように私を見て泣く母も、沈痛な面持ちの父も全てが全部夢かなにかのように現実味がない。
(これは夢かもしれない。私が見ている都合の良いただの夢)
そうでなければあんなに私に関心がなかった家族がこんなに関心を持つはずがない。そもそも昨日会ったリベリオンだって様子がおかしかった。
あんな優しい顔見たことがない。
(きっとこれは夢だわ。ならもう少し楽しんでも良いわよね?)
都合の良い優しい夢。ならば好きなようにこの世界を堪能してやろうと私は誓った。
126
お気に入りに追加
601
あなたにおすすめの小説

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~
小倉みち
恋愛
元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。
激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。
貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。
しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。
ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。
ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。
――そこで見たものは。
ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。
「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」
「ティアナに悪いから」
「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」
そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。
ショックだった。
ずっと信じてきた夫と親友の不貞。
しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。
私さえいなければ。
私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。
ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。
だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

旦那様は私より幼馴染みを溺愛しています。
香取鞠里
恋愛
旦那様はいつも幼馴染みばかり優遇している。
疑いの目では見ていたが、違うと思い込んでいた。
そんな時、二人きりで激しく愛し合っているところを目にしてしまった!?

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる