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02.家族の変貌
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私が目覚めた報せを受けて、家族がやってきた。両親と兄。全員私には赤の他人のように思えるほど関係が希薄だった人達。
「良かった、シルビアが目覚めてくれて」
「シルビア、可哀そうに」
「シルビア、無理をしてはいけないよ」
それなのにみんながみんな優しく声をかけてきた。その違和感に虫唾が走る。散々ないがしろにしてきた癖に何故今更?そう考えているとほとんど話したこともない兄がとんでもないことをいいはじめた。
「シルビア、お前を殺そうとした女は無事に捕らえられたから安心しなさい」
「えっ?」
「そうか、シルビアは何も知らないのだね。あの女、リリアがどれほど邪悪な女だったか」
リリアの名前に思わず目を見開く。リリアとは男爵令嬢で、リベリオンの幼馴染みで愛されていた少女だろうか。だとしたら……。
「リリア・トラン元男爵令嬢だ。お前の婚約者の幼馴染みでお前を殺そうとした恐ろしい女だ」
なぜと言いたいが声が全くでない。それを察したのか兄は私の髪を撫でてとても優しい口調で話し始めた。
「元からあの女は怪しいと思っていた。リベリオン小公爵は冷たいと言われているのになぜかあの女にだけ心を開いていた。病弱な幼なじみにだけ耽溺し、シルビアをないがしろにする最低な男なのかとも考えていて、実はずっと小公爵とリリアの動向を見張っていた結果、あの日お前をリリアが突き落とすところを目撃したんだ」
見張っていた?兄が?私に会ったことほぼない兄が?あまりの事実に首を傾げた。そういえば兄が今着ている服は警ら隊の制服だ。興味がないからまるで知らなかったが兄は執行機関の人間だったらしい。
この国では王政ではあるが、事件などがあった場合に調査を行う警ら隊がある。元々は騎士団だったが戦争がなくなったことで国の治安維持組織として警ら隊に変異した。
彼らは主に高位貴族からなるため正直不正などが暴かれることはないという認識だが国の治安を守るために必要な機関である認識だ。
(私になんの関心もないお兄様がなぜそこまでしたのだろう……)
私はしゃべれないのでただ話している兄を見つめた。すると兄は今にも泣きそうな表情になる。
「本当に今まですまなかった。どうしてこんなことになるまで俺はお前とちゃんんと向き合わなかったんだろう」
涙をながすその姿に正直違和感しかない。そして、その横で同じように私を見て泣く母も、沈痛な面持ちの父も全てが全部夢かなにかのように現実味がない。
(これは夢かもしれない。私が見ている都合の良いただの夢)
そうでなければあんなに私に関心がなかった家族がこんなに関心を持つはずがない。そもそも昨日会ったリベリオンだって様子がおかしかった。
あんな優しい顔見たことがない。
(きっとこれは夢だわ。ならもう少し楽しんでも良いわよね?)
都合の良い優しい夢。ならば好きなようにこの世界を堪能してやろうと私は誓った。
「良かった、シルビアが目覚めてくれて」
「シルビア、可哀そうに」
「シルビア、無理をしてはいけないよ」
それなのにみんながみんな優しく声をかけてきた。その違和感に虫唾が走る。散々ないがしろにしてきた癖に何故今更?そう考えているとほとんど話したこともない兄がとんでもないことをいいはじめた。
「シルビア、お前を殺そうとした女は無事に捕らえられたから安心しなさい」
「えっ?」
「そうか、シルビアは何も知らないのだね。あの女、リリアがどれほど邪悪な女だったか」
リリアの名前に思わず目を見開く。リリアとは男爵令嬢で、リベリオンの幼馴染みで愛されていた少女だろうか。だとしたら……。
「リリア・トラン元男爵令嬢だ。お前の婚約者の幼馴染みでお前を殺そうとした恐ろしい女だ」
なぜと言いたいが声が全くでない。それを察したのか兄は私の髪を撫でてとても優しい口調で話し始めた。
「元からあの女は怪しいと思っていた。リベリオン小公爵は冷たいと言われているのになぜかあの女にだけ心を開いていた。病弱な幼なじみにだけ耽溺し、シルビアをないがしろにする最低な男なのかとも考えていて、実はずっと小公爵とリリアの動向を見張っていた結果、あの日お前をリリアが突き落とすところを目撃したんだ」
見張っていた?兄が?私に会ったことほぼない兄が?あまりの事実に首を傾げた。そういえば兄が今着ている服は警ら隊の制服だ。興味がないからまるで知らなかったが兄は執行機関の人間だったらしい。
この国では王政ではあるが、事件などがあった場合に調査を行う警ら隊がある。元々は騎士団だったが戦争がなくなったことで国の治安維持組織として警ら隊に変異した。
彼らは主に高位貴族からなるため正直不正などが暴かれることはないという認識だが国の治安を守るために必要な機関である認識だ。
(私になんの関心もないお兄様がなぜそこまでしたのだろう……)
私はしゃべれないのでただ話している兄を見つめた。すると兄は今にも泣きそうな表情になる。
「本当に今まですまなかった。どうしてこんなことになるまで俺はお前とちゃんんと向き合わなかったんだろう」
涙をながすその姿に正直違和感しかない。そして、その横で同じように私を見て泣く母も、沈痛な面持ちの父も全てが全部夢かなにかのように現実味がない。
(これは夢かもしれない。私が見ている都合の良いただの夢)
そうでなければあんなに私に関心がなかった家族がこんなに関心を持つはずがない。そもそも昨日会ったリベリオンだって様子がおかしかった。
あんな優しい顔見たことがない。
(きっとこれは夢だわ。ならもう少し楽しんでも良いわよね?)
都合の良い優しい夢。ならば好きなようにこの世界を堪能してやろうと私は誓った。
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