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64.ちゅ~〇をいつも持ち歩くほどの愛猫家ではなかった

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ジャックは僕に、今までの経緯を説明した。そうして、そういえば庭師のガチムチの人が僕をすごく可愛がってくれていたことを思い出した。

しかし、ガチムチの人の名前をそういえば、僕は全く知らなかった。何故かいつも彼は白い薔薇をくれた。

「ルーク殿下のように穢れなく気高いこの薔薇を捧げましょう」

ガチムチの人は僕に白く美しい薔薇をくれた。あまり口数の多い人じゃないけれど、その薔薇を受け取るときにいつも短い会話をした。

そう言えばその時にある話をしたのを思い出した。

「どうしていつも僕に薔薇をくれるの?」

「ルーク殿下は花のように美しい。だからルーク殿下にふさわしい薔薇を捧げていますが、本当はもっとふさわし花を俺は知っているます。けれどその花は俺の夢の中にしかないのです」

「夢の中?それってどんな花?見てみたいな」

「それは木に咲く花で、美しい薄紅の花を咲かせるのですが……大体の花は朽ちるまで咲き続けますが、その美しい花は一番美しい状態の時に風に舞って散るのです。その姿がとても美しく……」

「それって桜だよね?」

その辺りまでは思い出せたが、その後の展開が全く思い出せない。

(この後、どんな会話をしたんだっけ?)

「ルーク殿下、その薄紅の花について詳しくお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」

「うん、大丈夫だよ、ただ、その前に……」

僕はこちらをじーっと見ているレイたんを抱っこする。いきなり知らない人と会話してほっておかれたら怖いよね、さみしいよね。僕は動物には優しい男。そして今は猫様の下僕である。

「その、ジャック、変なことひとつ聞いていいかな?」

「なんですか?」

真剣に切り出したからかジャックが、姿勢を正すのが分かる。本当に彼はとても真面目で高潔な騎士だなと思いつつ、とても大切なことなので続けた。

「ジャックは今、ちゅ~〇的なものの手持ちってないかな?」

「ちゅ~〇???」

ジャックが宇宙猫顔してる。ジャックとの込み入ったお話しをする前に、賢い天使で天才なお猫様であるレイたんにさっきハンカチ出してくれたご褒美をあげたかったのだけれど……。

あ、この世界にもしかしてちゅ~〇がないのか?いや、僕の記憶が正しければ王家で飼っていた猫様に普通にちゅ~〇を僕は上げていたはずだ。

ちなみに、この国の王族はみんな動物が好きだ。僕は動物全般が好き、兄上は犬が好き、パパ上は猫が好き、叔父様はよくわからないけどなんか以前にドラゴンとか僕にくれたことがあるから、全般的に動物好きなんだと思うけど……あ、前に鷹を肩にのせてるとこ見たことあるな……。マックスたん事件もあるし、鳥とか好きそう。

「猫にご褒美であげるおやつだよ」

「申し訳ございません。そちらは俺の方では持ち合わせておらず……」

肩を落とすジャック。特別猫好きって感じでもないから、ジャックは流石にちゅ~〇は持ち歩いていなかった。仕方ないのでレイたんの首のあたりを撫でる。ゴロゴロという鳴き声を出す可愛いレイたんにキスをした。

「ニャーオ」

「ごめんね、レイたん。おうちに帰ったらレイたんの好きなことご褒美でひとつ叶えてあげるから今は許してね」

そう言った時、心なしか一瞬レイたんがニヤリって顔した気がしたけど気のせいだよね。まぁ猫様のニヤリってニャリって感じでただただ可愛いだけだけど。猫様の下僕。

「では、ルーク殿下、気を取り直して、その薄紅の花にはいくつかの品種があるという話を伺ったと思いますが、その品種は……」

ジャックがそう口にした瞬間だった。

パリン!

結界が外側から壊れた音がした。

「えっ、嘘。この結界は叔父様が張ったものだから壊れるはずなんてないのに……」

しかし、結界はみるみる壊れていき、その先に男が立っていた。返り血に染まっているその男は紛れもないガチムチの人だった。その目は完全に狂気に溢れて、正気を失っている。怖い。

(あれ?でもあの人なんで血まみれなんだろう……)

そこまで考えて、全身から血の気が引いていく。

「ま、まさか……」

わなわなと体が震える。嫌な予感に全身の血液が凍るような心地がしていた。だって、もしかして……

「ルーク殿下。お久しぶりです。ああ、この血は……ガルシア公爵は俺が殺しました」

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