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黒幕

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第2王子であるローガン殿下のご婚約者、アスガルド王国第2王女ララベル様が捕まった。
という話は一夜にして王都中を駆け巡った。

レオ様は退院するとすぐに王宮へ向かってしまった。
お医者様からはくれぐれも無理をしないようにと言われており、邸中が反対したが、どうしても!と言われて渋々承知した形だ。
移動は馬車に乗ると言う条件だけは譲れなかったが。


「レオ様、せめて夕食までには戻っていただきたいのだけれど…」

「まったく。言うことを聞かないお方だ」
とフェルナンデスは苦虫を潰した様な表情で呟く。


「仕方ないわ。今回は…とても簡単には片付きそうにない問題だもの」
と私も苦笑しながらそれに答えた。




それから3日後。今回の王太子殿下暗殺未遂に端を発した事件は、王太子殿下の活躍により、一応の終結を迎える事となった。が、まだまだ解決には程遠く。


「レオ様!絶対にダメです!」

「いや、しかし…俺が行かなきゃ…」

「いいえ。今回ばかりは賛成しかねます。カルロス団長にお任せして下さい!」

「いや、まぁ…そうなんだが…」

この押し問答、かれこれ30分以上続けている。
でも、今回ばかりは私も甘い顔は出来ない。

「とにかく!エリアル帝国に同行する事は賛成できません。
お医者様からも許可が出かなかったではないですか」

「……わかった。そんな…泣かないで、レベッカ」
私はいつの間にか、涙を流していたようだ。

「…心配なのです。
…まだ傷も完全には癒えておりませんし、剣を振るのもお辛そうな時があります…そんな状態でこの前みたいな事が起きたらと思うと…」
そう言う私をレオ様は抱きしめながら、

「ごめん。俺は本当にダメだな。もう1人で生きているわけじゃないのに。
レベッカの顔が曇らないようにと、皆に誓ったはずなのに。最近はたくさん泣かしてしまった」

「私が泣き虫なのです。でも、今回はやっぱり譲れません」

「…わかった。今回は殿下からも同行するなと言われてるんだ。
大人しく王宮での仕事を片付けるとするよ」


「……戦争に…なるのでしょうか?」
私はレオ様の腕の中に閉じ込められたまま、呟いた。

「いや。そうならない為にこれから殿下が頑張ってくれるさ。
戦争は国民を疲弊させる。百害あって一利なしだ。
それはエリアル国王も、アスガルド国王も理解している。
理解してなかったのは、あのバカ王子だけだよ」

そう。今回の事件の黒幕は、バカ王子…もとい、アスガルド王国の第1王子であるマーク・アスガルド王太子殿下、その人である。

今はアスガルド王国に幽閉されており、処分を待っている状況だが…きっと毒杯を賜る事になるだろう。

アスガルド王国のウガロ伯爵とその配下にあった貴族達はすでにアスガルド王国での処刑が決定していると聞く。


今回の事件がアスガルド王国の未来に暗い影を落とす事になるのは間違いなかった。
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