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私に出来る事
しおりを挟むスープを半分程飲み、また横になる。
外はまだ暗いが、もう日を跨いだ事だろう。
私は目を閉じてはいるが、眠る事は出来なかった。
そうしているうちにお兄様が部屋へ入ってきた。
「お兄様?」
「ベッキー、寝てなかったのかい?」
「ええ。もう十分寝てしまったから、眠れそうにはないの」
「そうか。でも、体は横になっていた方が良い。具合の悪い所はないかい?」
「大丈夫よ。もう、大丈夫」
「…顔つきが変わったね」
「いつまでもここでクヨクヨしてても仕方ないもの。
今、私に出来る事は赤ちゃんを守る事と、レオ様の無事をお祈りする事だけだわ」
「それでこそ、私のベッキーだ」
「お兄様こそ、少し休んだら?
どこかに部屋を用意させるわ」
「いや、私はここで良い。
せっかくベッキーを独り占め出来るんだ。側に居させておくれ」
「…お兄様…ありがとう。大好きよ」
「私も愛してるよ。ベッキー」
そうしていると、外が何やら騒がしい。
「レオナルド様が王都にお着きになったそうです」
とフェルナンデスが部屋へ駆け込んで来た。
「もうか?早いな」
「ルーベンから騎士団長殿が単騎でレオナルド様の馬車を追いかけ、馬車からレオナルド様を降ろして、ご自分が抱えて馬でお戻りになったと」
「そんな無茶を。とにかくベッキー、お前も支度しなさい。
レオナルド殿の所へ連れていく」
「はい。お兄様。フェルナンデス、アンナを呼んで」
「畏まりました」
私はアンナに手早く支度を済ませてもらうと、お兄様と一緒にレオ様の元へと向かった。
レオ様の居る病院へ着いたが、まだレオ様は処置をしている最中だという事だった。
輸血と言われる物で、最近になってやっと実用化され始めた物らしい。
その為、王都でしか出来ないのだと言う。
まだ時間のかかる処置に、義理の両親は1度邸へ帰る事になった。お義母様の顔色が酷く悪いせいだ。
私も帰るかと聞かれたが、何度も馬車で往復するのも体に悪いだろうとの事で、この病院の一室で待機させて貰う事になった。
そうでなくても、私は帰るつもりなどなかった。
少しでもレオ様の近くに居たい。
そう思ったからだ。
お兄様も一緒にと言っていたが、急遽王宮からの呼び出しがあり、渋々だが私の側を離れる事になった。
私はアンナと、用意された部屋で、祈るようにその処置が終わるのを待った。
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