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その120

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「ありがとうございます。私…多分甘えるのが苦手なんだと思うんですけど、そう言って頂けるだけで、心が軽くなりました。その時にはイヴァンカ様に甘えますね」
と私が言うと、

「そういう時には、殿下に甘えるものなんだけど…仕方ないわね。
殿下がシビルからそこまでの信頼を勝ち取ってないのが問題なんだから」

私達はそれからは切り替えて王太子妃教育を進める事にした。

イヴァンカ様は勉強に関しては厳しい。

王太子妃教育は私が思うよりも遥かに大変だった。

昼食と、休憩を挟んで勉強は夕方まで続いた。

「さぁ。今日はここまでにしましょうか」

「ふぅ。今日もありがとうございました」
流石に疲れた。

「ねぇ、今日は私の家に泊まりに来ない?
殿下には私から言っておくから」

イヴァンカ様が私を心配してくれているのがわかる。
私はさっきのイヴァンカ様の言葉を思いだし、その気遣いに、今日は素直に甘える事にした。

イヴァンカ様は1度退室すると、

「さぁ。許可は貰ったわ。行きましょう」

と言って私を部屋の外に連れ出した。

公爵家の馬車に乗り込むと、

「今日はこの前と違ってタウンハウスに行くから、息子達が居るけど気にしないで。
主人はまだ帰って来ないけど、良かったら会ってちょうだい」

実は私はフェルト宰相とは直接会った事がない。
遠くで見る事はあっても、言葉を交わす事は今までなかった。

「息子さん達は…」

「長男がニック、今16歳ね。次男がデイビッド今13歳、三男のノアが今5歳よ」

「男の子ばかりですね」

「そうなの。もう賑やかで」
とイヴァンカ様は笑う。とても幸せそうだった。

「イヴァンカ様は、幸せですか?」
とつい私は質問していた。

「幸せよ。この幸せは半分は自分で勝ち取った物だけど、半分は主人に貰った物だわ。だからシビルも1人で幸せになろうとしなくて良いの。半分は殿下に任せてしまいなさい」

「正直な話をしても良いですか?」

「もちろんよ。ここだけの話にするわ」

「殿下の事が良くわからないのです。まだ」

「貴女達に足りないのは会話よ。圧倒的に」

「そうですね。私、殿下の事を知りたくて王城で暮らすことを決めたんですが、殿下はお忙しくて」

「忙しいねぇ…それは多分言い訳よ」

「言い訳?でも、王城に住んでから、殿下と夕食を共にする事も殆んどありませんし、会話も…必要最低限です」

「あの…ヘタレ。殿下はね、貴女に責められるのが怖いのよ。『こんな事したくなかった』『こんな所に来るんじゃなかった』と拒絶されるのが怖いの」

「私、そんなに嫌々に見えているんでしょうか?」

「嫌々…というより、シビルの気持ちが自分に向いていない事はわかっているのよ。これ以上嫌われたくないのね」

「…それは、私の責任でもありますよね…」

「シビル…そんな重く考えないで。人を好きになるのは理屈ではないのだから、それが無理でも自分を責める必要はないの。でも、殿下を嫌いな訳ではないのよね?」

「嫌い…ではないと思います」

「では、せめてそれだけでも伝えては?それだけでも殿下は救われるわ」

「そうでしょうか?」

「ええ。もっと2人で話してみて。あ、それと、公爵家には何泊しても良いから。それも殿下は承知してくれてるわ。渋々だけど」
と言ってウィングしてみせた
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