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その79

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私は塞ぎこんでいた。

そりゃそうだ。ミシェル殿下の嫁ぎ先であるランバンに付いていけないばかりか、この国で王太子と結婚しろと言われて、どうすれば良いのか、ほとほと困ってしまった。

流石の殿下も、

「ちょっと…なんであんたが暗いのよ。表情もない上に、纏う雰囲気が真っ黒よ?
気持ち悪いんだけど?」
と怪訝そうに私を見る。

気持ち悪いについて反論したいが、そんな元気もない。

殿下はきちんとランバンについて学びたいと、フェルト女史にお願いしたらしい。

自ら学ぼうとする姿勢に目頭が熱くなりそうだ。なりそうなだけで、涙は出てこない。


フェルト女史が部屋を訪れた。

私的には、フェルト女史に嵌められた気持ちで一杯だ。

しかし、そうなるとフェルト女史はクリス様のお気持ちを知っていたのだろうし、私がランバンに付いていけない事も御存知だったと言う事だ。そこの所を詳しく聞いてみたい。

そこでフェルト女史に、

「フェルト女史。もし宜しければこの後少しお話を聞いて貰ってもよろしいでしょうか?」

と私が訊ねると、何故かフェルト女史はウキウキした感じで、

「もちろんよ!私も貴女と話したいと思っていたの!」
と笑顔で答えてくれた。

なんであんな嬉しそうなんだろう?私は思い悩んでいると言うのに。


殿下にランバンのしきたりや、歴史を教え終わった後、私は殿下に断ってフェルト女史と2人で話す時間を設けさせてもらった。
流石にこの事をミシェル殿下に言う勇気は今の所はない。

場所は、この前と同じ、フェルト宰相の執務室に誂えられた応接室だ。

「で、ちゃんと王太子殿下とはお話出来たかしら?」
と、ちょっとワクワクした目線でフェルト女史に訊ねられる。

「はぁ…一応。私が何故か王太子殿下に見初められ、婚約者として、この国に残れと。
断れば、アルティアから賠償金を代わりに請求すると言われました。フェルト女史は…この事を知っていらしたのですね…。いつからこのお話を?」
と私は俯きながら話しをした。
私にとっては、楽しい話では全くない。

「ちょっ…ちょっとどういう事?クリ…いえ王太子殿下は、貴女にきちんと告白したのよね?」
とフェルト女史は目を白黒させている。

あれを『きちんとした告白』と言うのだろうか?あれは、正確に言えば『脅し』と言うのではないだろうか。

「告白…と言って良いのかどうか…」
と私は昨日の事の顛末をフェルト女史に話して聞かせた。
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