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第43話

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「ねぇ…殿方ってどんな女性が好きなのかしら?」

私は、メリーのアップルパイを頬張りながら、グレイに訊ねました。あ、皆様ご安心下さいね、口に物を入れて話してはいけないことぐらいは、私だって百も承知。小説的表現とでも思って下さいませ。

「そうだなぁ…俺はお前じゃなきゃいいかな」

「ふん。女性不信のくせに生意気ね。グレイに聞いたのが間違いだったわ」

「そうだな。正直、俺には好みなど良くわからんが…あのバジル男爵令嬢がチヤホヤされている理由もわからん」

「見た目は可愛らしいでしょう?」

「そうか?あれぐらいなら、結構いるんじゃないか?クラス1の美人って感じじゃなくて、クラスで5番目ぐらいって奴。…ま、それが親しみ易さってのもあるかもな。ほら…生徒会の役員の婚約者達って…ちょっと近寄りがたい感じじゃね?」

「確かに、上位貴族のご令嬢と言えばあんな感じになるでしょうし。…って事は私もって事ね」

「そうだな。お前なんかその筆頭じゃないか?近寄りがたい雰囲気は出てるぞ?」

「公爵令嬢としては……正解よねぇ」

「正解だろうな。それに、王太子殿下の婚約者が親しみ易いのもどうかと思うぞ?威厳が必要だろうしな」

「そうよね…」

今日、グレイと約束したのは、試験勉強をみてあげたお礼にメリーのアップルパイをご馳走になる事だったのです。…王太子妃教育がお休みになったお陰ですけれど。



翌日の授業終わり、殿下が、

「アナベル、今日こそ王太子妃教育だな。今日は、僕も生徒会の用事が無いんだ。一緒に帰ろう」

と、すっごい早口で捲し立ててきましたの。え?どうしてそんなお急ぎ?

「え、ええ…それは構いませんが…」
と私が言い終わるより先に、

「さぁ、早く立って!鞄は僕が持つから、早く!」

え?え?ええ?何でそんなに慌てていらっしゃるのか、全くわかりませんが、私は殿下の勢いに押されて、

「は、はい!わ、わかりましたわ」

と殿下のあとについて教室を出ました。

…殿下…めちゃくちゃ早足なのですが…疲れませんか?


王族専用の馬車に辿り着くと、

「アナベル、早く乗って!」
と殿下に急かされます。

殿下は私の手をとって馬車に乗せると、私の横に自分も腰かけました。…え?何故横に?いつもは向かい側なのですけれど?

私は、

「殿下、公爵家の御者に私が此方の馬車に乗って、王宮へ行く事を伝えて来なければ…」

と立ち上がろうとすると、

「公爵家の馬車には、ちゃんと伝言を出す。アナベルは危ないから座るんだ。……馬車を出せ!」

と私の腕を掴んで、座らせると、御者に合図を出しました。そして…

「間に合った…」
と呟いたのですが……殿下はもしかして追っ手に追われているのでしょうか?
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