13 / 106
13話
しおりを挟む医者の見立てでは、疲れが出たのだろうとの事で、数日は仕事を休む様にと言われてしまった。
余り無理をするとお腹の子に影響があると言われてしまえば、私も素直に休まざるを得ない。
サムに女将さんに仕事を休む事を伝えて欲しいとお願いしたら、サムはまだ混乱した様子のまま、宿屋へと向って行った。私はその背中を横たわったまま見守った。
王太子殿下を始め、たくさんの護衛が宿泊している。仕事は山の様にある筈なのだが申し訳ない。
私は痛みも無くなったし、サムが居なくなった隙に家へと戻る事にした。
サムは私を家まで送って行くからそれまではここで休む様に言っていたのだが、流石にそこまで甘える気にはならなかった。
医者には再三『無理は禁物』と注意を受ける。
今まで子どもを産む覚悟が出来ているとは言い難かった私だが、本能なのかお腹の子を守りたいと強く思う。
これが母性なのか自分にはまだ確証は無いが、医者の言いつけを守る事にしっかりと私は頷いた。
家に戻り、水を飲んで椅子に腰掛ける。
サムに妊娠がバレてしまった。女将さんにもその事は伝わっている筈だ。
私は少しふっくらした自分のお腹に手を当てて、
「大丈夫。私があなたを守るわ。いや……あなたを守れるのは私だけね。ごめんなさいね、今の今まで覚悟が出来ていなくて。でももう大丈夫よ。決めたから」
私が強くならなくてどうする。
この子を授かった経緯はどうであれ、選んだのは私。
あの時コンラッド様を助ける為に自分がした事を後悔した事はない。
夕方になって、女将さんとサムが現れた。
「医者の所に行ったらもう帰ったって言うから」
と少し拗ねた様にサムが言うと、
「クレアを責めるなら一緒に来るなと言っただろう?サム、あんたは外で待っときな」
「で、でも……」
「いいから!ちょっと外に出て待ってておくれ。女同士の話もあるんだし」
と言う女将さんの勢いに押され、サムは渋々家を出て行った。
女将さんは私に向かい合うと、
「クレア……一人で心細かっただろう?気づいてあげられなくてごめんね」
と何故か私に謝った。
「そんな!謝るのは私の方です。忙しい時に休んでしまって。それに、もう少し体調が良くなるまで仕事を休まなきゃならなくて……」
と言った私の言葉を最後まで聞く事なく、女将さんは私を抱きしめた。
応援ありがとうございます!
145
お気に入りに追加
3,859
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる