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同窓会⑴
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奥田先生と7年ぶりに会ったあの日から、仕事の行き帰りはキョロキョロと、落ち着きがなくなった。だけど、あれから1ヶ月たつが先生に会えることはなかった。
初めは、本当に会えちゃったらどうしようと、勝手にドキドキしていたけど、そんな偶然は何度も起きないらしい。最近はもう、キョロキョロすることもドキドキすることもなくなった。
そんな時に高校の同窓会の案内が来た。クラスではなく、学年で集まるようなので、それなりに集まるはずだ。たくさん人が集まる場所は苦手だけど、どうするか最後の最後まで迷った。
「あれー真野ー?久しぶりだな。卒業以来か?」
クラスのムードメーカーだった奴に声をかけられる。確か幹事だったはずだ。
「ああ。佐々木は幹事お疲れ様」
「真野は今、何やってるの?俺はもう社畜だよー」
「今年、院を卒業して、4月からボクも社畜の仲間入りだよ」
「新人かー。まあ頑張れよ。じゃあ、今日はお互い楽しもうぜ」
そう言うと、佐々木は行ってしまう。高校の時と変わらず、人懐っこく、誰の所にもひょこっと入って行っている。
今回の同窓会は、ホテルの広間を貸し切って立食パーティー形式で行われ、料理なども豪華で、それなりの会費を取られた。生徒も先生もけっこう集まっていて、それぞれに集まって久しぶりの再会を楽しんでいる。何人かのクラスメイトとは、近況を兼ねた昔話をしていたが、一番仲良かった奴は、仕事で参加していなく、積極的に入っていけるタイプではないボクは、どうしても壁のシミになってしまう。
はぁ…やっぱり来なきゃ良かったかな。そう思った時、声をかけられて声の方へ顔を向ける。
「真野くん?」
「あ……倉本さん?」
「覚えててくれたんだ。嬉しい」
「それは、お互い様だよ。特にボクなんか存在感ゼロだったし。それに、図書委員も一緒だったじゃん」
「ふふっ。そうだったねー。懐かしい。真野くんは、わざと存在感消してるような。だけど、気づいたら痒いところに手が届くような絶妙な関わり方というか。だから、存在感ゼロって感じじゃ全然なかったなぁ」
自分が、高校生の時そんな印象だったとは驚いた。確かに、関わりの少ない先生達からは忘れられる事はあったが、クラスメイトからそのような扱いを受けることはなかった。
「今日も奥田先生は人気だね」
遠くで人が集まってる真ん中に奥田先生がいる。
「高校の時と変わらない光景だね」
「今日は、話したいなぁと思ったんだけど、あの輪の中に入るのはなぁ…」倉本さんは、奥田先生の方を見つめて呟く。
「何か話したいことがあったんだ?」
「んー。実は私、来月結婚するんだ。で、最後に奥田先生見納めようと思って……」
「結婚!?お、おめでとう……それで見納め?」
「うん。奥田先生はね……初恋だったから……別にもう吹っ切れてるし、好きとかではないんだけど、結婚前に区切りつけておこうみたいな……」
なんかすごい告白を聞いてしまったようで、ドギマギする。
「じゃあ、今日は奥田先生に会いにきたんだ」
「まあ、それだけじゃないけど、タイミングよく同窓会があったからね」
確かに、ボクにとってもいいタイミングの同窓会だった。この間、奥田先生に会ってなかったら、今日来たかどうかもわからない。
「真野くんも、今日誰かに会いに来たの?」
「えっ?」っと声を上げると、倉本さんはイタズラっぽく笑って、ボクの顔を覗き込んでくる。
「だって、こういう場、あまり好きそうじゃないというか……だから、何か目的あって来たのかなぁって」
見透かされたようで、ドキリとする。
「いや……別に……ただ、懐かしいなと思って……」
「ふーん。そういうことにしとくよ」
誤解を解こうとしゃべるほど、しどろもどろになり、倉本さんはクスクス笑った。倉本さんが他の女子のところに行ってしまうと、ボーっと奥田先生の人だかりを見て、何で今日来たのかな……と考える。
初めは、本当に会えちゃったらどうしようと、勝手にドキドキしていたけど、そんな偶然は何度も起きないらしい。最近はもう、キョロキョロすることもドキドキすることもなくなった。
そんな時に高校の同窓会の案内が来た。クラスではなく、学年で集まるようなので、それなりに集まるはずだ。たくさん人が集まる場所は苦手だけど、どうするか最後の最後まで迷った。
「あれー真野ー?久しぶりだな。卒業以来か?」
クラスのムードメーカーだった奴に声をかけられる。確か幹事だったはずだ。
「ああ。佐々木は幹事お疲れ様」
「真野は今、何やってるの?俺はもう社畜だよー」
「今年、院を卒業して、4月からボクも社畜の仲間入りだよ」
「新人かー。まあ頑張れよ。じゃあ、今日はお互い楽しもうぜ」
そう言うと、佐々木は行ってしまう。高校の時と変わらず、人懐っこく、誰の所にもひょこっと入って行っている。
今回の同窓会は、ホテルの広間を貸し切って立食パーティー形式で行われ、料理なども豪華で、それなりの会費を取られた。生徒も先生もけっこう集まっていて、それぞれに集まって久しぶりの再会を楽しんでいる。何人かのクラスメイトとは、近況を兼ねた昔話をしていたが、一番仲良かった奴は、仕事で参加していなく、積極的に入っていけるタイプではないボクは、どうしても壁のシミになってしまう。
はぁ…やっぱり来なきゃ良かったかな。そう思った時、声をかけられて声の方へ顔を向ける。
「真野くん?」
「あ……倉本さん?」
「覚えててくれたんだ。嬉しい」
「それは、お互い様だよ。特にボクなんか存在感ゼロだったし。それに、図書委員も一緒だったじゃん」
「ふふっ。そうだったねー。懐かしい。真野くんは、わざと存在感消してるような。だけど、気づいたら痒いところに手が届くような絶妙な関わり方というか。だから、存在感ゼロって感じじゃ全然なかったなぁ」
自分が、高校生の時そんな印象だったとは驚いた。確かに、関わりの少ない先生達からは忘れられる事はあったが、クラスメイトからそのような扱いを受けることはなかった。
「今日も奥田先生は人気だね」
遠くで人が集まってる真ん中に奥田先生がいる。
「高校の時と変わらない光景だね」
「今日は、話したいなぁと思ったんだけど、あの輪の中に入るのはなぁ…」倉本さんは、奥田先生の方を見つめて呟く。
「何か話したいことがあったんだ?」
「んー。実は私、来月結婚するんだ。で、最後に奥田先生見納めようと思って……」
「結婚!?お、おめでとう……それで見納め?」
「うん。奥田先生はね……初恋だったから……別にもう吹っ切れてるし、好きとかではないんだけど、結婚前に区切りつけておこうみたいな……」
なんかすごい告白を聞いてしまったようで、ドギマギする。
「じゃあ、今日は奥田先生に会いにきたんだ」
「まあ、それだけじゃないけど、タイミングよく同窓会があったからね」
確かに、ボクにとってもいいタイミングの同窓会だった。この間、奥田先生に会ってなかったら、今日来たかどうかもわからない。
「真野くんも、今日誰かに会いに来たの?」
「えっ?」っと声を上げると、倉本さんはイタズラっぽく笑って、ボクの顔を覗き込んでくる。
「だって、こういう場、あまり好きそうじゃないというか……だから、何か目的あって来たのかなぁって」
見透かされたようで、ドキリとする。
「いや……別に……ただ、懐かしいなと思って……」
「ふーん。そういうことにしとくよ」
誤解を解こうとしゃべるほど、しどろもどろになり、倉本さんはクスクス笑った。倉本さんが他の女子のところに行ってしまうと、ボーっと奥田先生の人だかりを見て、何で今日来たのかな……と考える。
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