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再会⑵
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それから間もなくお開きとなり、二次会は何とか丁重にお断りして、お店を出る。お店の前には、同じタイミングで一次会が終わったと思われる団体が、ごった返していて縫うように離れていく。
少し早歩きしたのがマズかったのか、お店から少し離れると酔いが回って、立っていられなくなった。
「ねぇ~お兄さん大丈夫?ちょっとお店で休んで行く?」
そんなボクを見つけて、キラキラ着飾った女の人が強引に腕を引いてきた。
「いえ……だいじょう……」言いかけた所で、割って入ってくる声がある。
「すいません。この人、オレの連れなんで」
肩を抱きかかえられ、見上げると奥田先生だった。
「な……んで……」
「ちょっとだけ歩けるか?もたれかかってもいいから」
奥田先生は、ボクの体を支えながら、キラキラした女の人から遠ざかって行く。
少し行くと大きな公園があり、そこのベンチに座って休む。お水を飲んで座っていると、だいぶ楽になった。
「少しは良くなったか?」
奥田先生は、心配そうな顔をして覗き込んでくる。
「あっ……はい。お水もありがとうございます」
まだ10時前であり、夜の公園にもそれなりに人がいた。
「あ、あの……。先生は大丈夫だったんですか?その……誰か一緒だったとか……」
「いや……こっちも新しい教員の歓迎会で、ちょうど終わって店を出たら、しゃがみ込む真野が見えたんだ」
奥田先生は、高校で知り合った時から、小さことによく気づく。ボクなんて、クラスでも大人しくて目立たない存在で、他の先生には名前を間違えられたり、スルーされてしまう事があったが、奥田先生には良いところも悪いところも、気づかれることが多かった。
今日だって、奥田先生が声をかけてくれなかったら、ちょっとヤバめなお店に連れ込まれていたかもしれない。
「少し落ち着いたなら、タクシー拾って来るけど」
そう言って立ち上がろうとする先生を遮るように声を出す。
「大丈夫です。さっきは急いで動いたから、酔いが急激にまわったみたいで、もう落ち着いたので地下鉄で帰れます」
「そうか?じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
高校生の時だって、特別仲が良かった訳ではなく、先生にとっては、生徒の一人に過ぎなかったと思う。唯一、ボクが入り浸っていた図書室で先生と会うことが多く、会えば一言二言話をする、ただそれだけだった。
だけど、3年間変わらなかったクラス担任より、奥田先生とやり取りした会話の方が鮮明に覚えていて、ふとした瞬間に思い出すこともあった。
なぜかわからないけど、ボクにとって奥田先生はちょっと特別だった。
一緒に地下鉄で帰ると、奥田先生の家とボクの家の最寄り駅が一緒であることがわかった。
何という偶然……。
職場にも、地下鉄の最寄り駅からも近くて、家賃が手頃でという理由で、先月一人暮らしをするために引っ越して来たばかりだった。
「こんな偶然あるんだな。じゃあ、今度仕事帰りに会えたら、飯でも行くか。ここら辺は美味しい店が多いんだよ」
「はい。ぜひ」
そんな会話をして、先生とは別れた。先生の後ろ姿を見送りつつ、さっき調子悪かったのが、嘘のように足取り軽く家路へと向かった。
少し早歩きしたのがマズかったのか、お店から少し離れると酔いが回って、立っていられなくなった。
「ねぇ~お兄さん大丈夫?ちょっとお店で休んで行く?」
そんなボクを見つけて、キラキラ着飾った女の人が強引に腕を引いてきた。
「いえ……だいじょう……」言いかけた所で、割って入ってくる声がある。
「すいません。この人、オレの連れなんで」
肩を抱きかかえられ、見上げると奥田先生だった。
「な……んで……」
「ちょっとだけ歩けるか?もたれかかってもいいから」
奥田先生は、ボクの体を支えながら、キラキラした女の人から遠ざかって行く。
少し行くと大きな公園があり、そこのベンチに座って休む。お水を飲んで座っていると、だいぶ楽になった。
「少しは良くなったか?」
奥田先生は、心配そうな顔をして覗き込んでくる。
「あっ……はい。お水もありがとうございます」
まだ10時前であり、夜の公園にもそれなりに人がいた。
「あ、あの……。先生は大丈夫だったんですか?その……誰か一緒だったとか……」
「いや……こっちも新しい教員の歓迎会で、ちょうど終わって店を出たら、しゃがみ込む真野が見えたんだ」
奥田先生は、高校で知り合った時から、小さことによく気づく。ボクなんて、クラスでも大人しくて目立たない存在で、他の先生には名前を間違えられたり、スルーされてしまう事があったが、奥田先生には良いところも悪いところも、気づかれることが多かった。
今日だって、奥田先生が声をかけてくれなかったら、ちょっとヤバめなお店に連れ込まれていたかもしれない。
「少し落ち着いたなら、タクシー拾って来るけど」
そう言って立ち上がろうとする先生を遮るように声を出す。
「大丈夫です。さっきは急いで動いたから、酔いが急激にまわったみたいで、もう落ち着いたので地下鉄で帰れます」
「そうか?じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
高校生の時だって、特別仲が良かった訳ではなく、先生にとっては、生徒の一人に過ぎなかったと思う。唯一、ボクが入り浸っていた図書室で先生と会うことが多く、会えば一言二言話をする、ただそれだけだった。
だけど、3年間変わらなかったクラス担任より、奥田先生とやり取りした会話の方が鮮明に覚えていて、ふとした瞬間に思い出すこともあった。
なぜかわからないけど、ボクにとって奥田先生はちょっと特別だった。
一緒に地下鉄で帰ると、奥田先生の家とボクの家の最寄り駅が一緒であることがわかった。
何という偶然……。
職場にも、地下鉄の最寄り駅からも近くて、家賃が手頃でという理由で、先月一人暮らしをするために引っ越して来たばかりだった。
「こんな偶然あるんだな。じゃあ、今度仕事帰りに会えたら、飯でも行くか。ここら辺は美味しい店が多いんだよ」
「はい。ぜひ」
そんな会話をして、先生とは別れた。先生の後ろ姿を見送りつつ、さっき調子悪かったのが、嘘のように足取り軽く家路へと向かった。
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