32 / 42
熱⑴
しおりを挟む
スマホ片手に朝の出勤準備をしながら、メッセージを送ると程なくして親指を立てている猫のスタンプが返ってきた。表情を緩ませながら、ダウンジャケットのポケットにスマホを入れる。部屋を出ると強い風が吹き付け、雪が舞い上がっていた。看護師寮と病院は目と鼻の先であり、通勤時間は5分とかからないが冬場はそれでも遠く感じてしまう。
クリスマスになった瞬間に、颯と一緒にツリーの写真を見たあと、クリスマスプレゼントと言って連絡先を渡していた。颯は以前のスマホのバックアップを取っていなくて、連絡先も入っていないと話していたから、自分の情報でも入っていたらスマホの存在価値が少しでもあがるのではないかと思った。「連絡先の1号にして」と軽口を叩いたけど、後から叔母の涼風の番号は入ってるよなと気づいて、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
連絡先を渡すことは、別に深い意味はないと自分自身に言い聞かせていたけど、本当にそうなんだろうか。元カノや吉志に言われてから、湖城にとって颯はどういう存在なのかと考えていた。恋愛感情は置いておいても、他の患者とは違い特別な存在なのは、もう認めざるを得ないのはわかっていた。
年末年始は状態の良い入院患者は外泊が許可され、病院全体の3分の1ほどが外泊する。颯も外泊許可が出ていたけど、涼風の妊娠がわかり、悪阻がけっこう重くて体調が悪いのに迷惑はかけられないからと言い、ギリギリまで帰ってくるように説得されていたけど、結局病院で年を越すことになった。湖城自身も母親が再婚してから、母親の新しいパートナーとの距離感がうまく掴めなくて、泊まりで帰省することはなくなっていた。それに年末年始は休みを取りたいスタッフが多くなるので、特にやることも会う彼女もいなくなった湖城はビッシリ仕事を入れていた。颯の病室も患者のほとんどが外泊しており、颯と先日入院したばかりの50代の男性だけだった。
休日中は、医師もリハビリスタッフも基本は休みになるため、平日よりも仕事は減りその分颯の病室に立ち寄ることもまた増えた。それでも同じ轍を踏まないように気を配っていたから、スマホでのメッセージのやり取りは、そういう面でも非常に重宝した。朝、メッセージでやり取りするようになったのも、年明けすぐに颯から「あけましておめでとうございます」とメッセージがきっかけだった。
三が日が開けて、外泊していた患者が戻り診療も再開されるとまた、今までの日常が戻ってきたけど、朝のやり取りはどちらともなく続いていた。
クリスマスになった瞬間に、颯と一緒にツリーの写真を見たあと、クリスマスプレゼントと言って連絡先を渡していた。颯は以前のスマホのバックアップを取っていなくて、連絡先も入っていないと話していたから、自分の情報でも入っていたらスマホの存在価値が少しでもあがるのではないかと思った。「連絡先の1号にして」と軽口を叩いたけど、後から叔母の涼風の番号は入ってるよなと気づいて、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
連絡先を渡すことは、別に深い意味はないと自分自身に言い聞かせていたけど、本当にそうなんだろうか。元カノや吉志に言われてから、湖城にとって颯はどういう存在なのかと考えていた。恋愛感情は置いておいても、他の患者とは違い特別な存在なのは、もう認めざるを得ないのはわかっていた。
年末年始は状態の良い入院患者は外泊が許可され、病院全体の3分の1ほどが外泊する。颯も外泊許可が出ていたけど、涼風の妊娠がわかり、悪阻がけっこう重くて体調が悪いのに迷惑はかけられないからと言い、ギリギリまで帰ってくるように説得されていたけど、結局病院で年を越すことになった。湖城自身も母親が再婚してから、母親の新しいパートナーとの距離感がうまく掴めなくて、泊まりで帰省することはなくなっていた。それに年末年始は休みを取りたいスタッフが多くなるので、特にやることも会う彼女もいなくなった湖城はビッシリ仕事を入れていた。颯の病室も患者のほとんどが外泊しており、颯と先日入院したばかりの50代の男性だけだった。
休日中は、医師もリハビリスタッフも基本は休みになるため、平日よりも仕事は減りその分颯の病室に立ち寄ることもまた増えた。それでも同じ轍を踏まないように気を配っていたから、スマホでのメッセージのやり取りは、そういう面でも非常に重宝した。朝、メッセージでやり取りするようになったのも、年明けすぐに颯から「あけましておめでとうございます」とメッセージがきっかけだった。
三が日が開けて、外泊していた患者が戻り診療も再開されるとまた、今までの日常が戻ってきたけど、朝のやり取りはどちらともなく続いていた。
3
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
悪夢の先に
紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。
※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。
『孤毒の解毒薬』の続編です!
西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる