神さまのレシピ

yoyo

文字の大きさ
27 / 42

クリスマス⑵

しおりを挟む
   1人病室に残されて、悶々とベットの上で考えているより、気分転換をしようとベット脇においてある松葉杖に手を伸ばした。松葉杖になってから身軽になったので、リハビリを兼ねて院内を歩き回ることが颯の日課になっていた。1階の売店やいつも行っているリハビリ室など、行動範囲もかなり広がっていた。
    今日はどこまで行こうかなとボーッと考えながら、適当にエレベーターに乗り一番最初に止まった階で、降りようかなどとゲームのようなことをしようと考える。あまりに人がいなさそうな階はスルーで、降りても問題なさそうな階に止まること期待する。

   チーンと扉が開くとまばらに人が見え、ここなら大丈夫かとエレベータから降りる。周りを見るとレントゲン室やCT室と書かれた案内板が見え、どうやら検査室の階らしい。そういえば、検査のために何度か訪れたことのある階だと思い出す。入院患者だけでなく、外来患者も検査を受けているため、廊下には検査を待っているであろう人や名前を呼ぶ看護師さんの姿があった。本当は関係ない颯がウロウロしていい場所ではないだろうけど、素知らぬ顔で堂々と歩いていると検査に来た患者と思われて不審がられることもなかった。
   奥まで行くと人影が少なくなり、さすがにここはマズイかなとUターンしかけたとき、薄く開いていた部屋から聞き覚えのある名前に足が止まってしまう。


「湖城くんって、外科病棟の?」

「うん。友達がね、湖城くんの彼女と同じ病院で働いてるんだけど、別れたらしいんだよね~」

「へぇ~。何、あんた狙ってんの?」

「いや~確かに好みのタイプではあるけど……プライベートと仕事を混同するのはなぁって思う。ほら、この間も担当外されかけたって話があったじゃん。私が彼女でも、患者より私を見てほしいって思うもん。それが別れた原因なんじゃないかなぁ」

「湖城くんって、そんな感じなんだ。一緒の科になったことないから、よくは知らないけど、でも患者さんでも同僚の子でも好意を持たれてトラブったって話は以前よくあったしね。たらし君なんだね~」


   担当外されかけたってなんだろう……
   ドキン、ドキンと不安が押し寄せてくる。湖城の担当している人はたくさんいるわけだから、自分ではないと思いつつも、昼休憩時など颯の病室を訪れる機会はめっきり減っているのも事実で……
   自分が原因で彼女とも別れることになったのかもしれなくて……
   でも、勝手に病室に来ていたのは湖城の方だし、颯自身が頼んだことはない。だけど、来てくれる湖城の存在が嬉しく思っていた自分もいる。こんな風に言われてしまう原因を自分が作ってしまったかもしれないことに、胸が苦しくなる。
   早くこの場から立ち去りたかったけど、颯の足はちっとも言うことを聞いてくれず、それはまた自分の不甲斐なさを助長させていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

悪夢の先に

紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。 ※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。 『孤毒の解毒薬』の続編です! 西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...