神さまのレシピ

yoyo

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落ちつかない気持ち⑴

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   最近では作業療法士の伊泉直人いずみなおとと自立排泄に向けてのリハビリが始まった。自力で立って、ズボンを下ろす動作やそこから座る、ズボンを上げるなど、今まで葉那とやっていた足の筋力をつけて動かしていくリハビリから、より生活に密着してその動作を身につけていくリハビリだ。
   スパッツのようなツルツルしているトレーニングパンツの上にハーフパンツを重ね履きをして、立って、脱いで、座って、立って、履くという動作をひたすら繰り返す。今まで無意識にやっていた動作が、こんなに段取りがあって大変なのかと、改めてげんなりする。実際に伊泉とトイレで行うこともあり、念願だった排泄動作は、時間がかかりながらも自力で行うことができるようになっていた。
   だからといって、トイレ介助が完全になくなった訳ではない。転倒の危険があるからダメらしい。だけど、自分で着脱できるだけでだいぶ嬉しい。


「郁島くん、だいぶ立位が安定したね。これなら両手で着脱してみてもいいかもしれないよ」

   トイレで実際の様子を見た伊泉に声をかけられ顔が綻ぶ。今までは、立って着脱動作をしている際にフラついて転倒する危険があったから、片手は手すりを掴み、着脱はもう一方の片手でするしかなかった。日中など、余裕がある時はそれでも何とかなったが、朝など余裕がない時は漏らすよりマシだと思い、今まで通り介助してもらっていた。でも、両手が使えるとなると短時間でも着脱が可能になり、ほぼ介助なしで排泄することが可能になる。

「ほんとですかっ!」

「うん。足の筋力もついてきてるから、フラつきがほぼなくなっているからね。リハビリ頑張ってるみたいだね。白井さんが言っていたよ。それに湖城くんも気づいたら1人で歩行訓練してて、ヒヤヒヤしたって言ってたよ」


   不意に湖城の名前が出てきて、どきりとする。別に特別なことを言っていたわけではないし、この話は、先日湖城本人から、危ないから1人でリハビリするのはやめてくれと懇願されていて、知っていたことだ。別にびっくりするような内容でもないのに、何故が颯の心臓は反応していた。

「それ、湖城さんから1人でリハビリするのはやめてくれって言われちゃいました。僕としては、無茶なことはしてないし、かなり注意しながらやってるんですけどね。ちょっと過保護なんじゃないかなって思っちゃいますよ」

「いやいや。どんなに気をつけていても万が一ってことがあるからね。僕だって止めるよ。それにもし転倒して怪我でもしたら、今までのリハビリが、また1からってことにもなりかねないし、そうなったら、苦しむのは郁島くんだからね。湖城くんはそんな思いを郁島くんにしてほしくないんだよ」


   そんなことはわかってる……なんだが、自分が小さい子供のように駄々をこねてるようなことを言ってるんじゃないかと恥ずかしい。そんなことが言いたいんじゃないのに……湖城の名前や姿など、湖城の存在がチラつくと妙にソワソワして落ち着かなくなって、思ってない方向に言葉や態度がそれて行ってしまう。

   なんだかわからないけど、最近おかしいんだ……


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