神さまのレシピ

yoyo

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リエゾン⑶

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   涼風は、面談室を出ると不安な顔をやや和らげて颯の病室へと向かった。
   夕方、リハビリの時間近くに颯の病室に顔を出すと、脇の椅子に座っている白衣の男の人がいた。


「吉志先生?」

「あぁ……湖城?久しぶりだな。郁島くんの担当だったよな」

「はい。えっと……今は診察中ですか?」

「いや……診察っていうか、ちょっと挨拶かな。これから何かあった?」

「これから、リハビリなんですよ」


   チラッと颯の方を見るとバツが悪そうに視線をそらす。

「リハビリは行かないとな」

「いや……今日は調子悪いし……」


    颯がやや控えめに拒否の言葉を出すと、吉志は颯の額に手を当て、さらに腕を取って脈をはかり「顔色も悪くないし、熱も脈も大丈夫。医者として問題ないと判断するよ」と優しい口調で話す。

「でも……」

「それでも休みたいなら、リハビリ担当の人に自分で休むこと伝えておいで。そこまでは湖城が連れて行ってくれるから。もう子どもじゃないんだから、それくらいできるだろ」

「……」

「トイレが心配なら、リハビリ前に1回行っといたらいいし、リハビリ中はずっと湖城にそばにいてもらって、行きたくなったらすぐに連れて行ってもらったらいいよ」


「え?」と今度は湖城が驚く。基本、患者さんのリハビリ中は付き添っていることはない。リハビリは理学療法士や作業療法士がやるので、看護師は特にやることがない。だから、リハビリ室までの送迎だけで戻り違う仕事をしている。なので吉志の提案に、業務上大丈夫なのかと心配になる。
   そんな湖城の心を読んだように吉志は「大丈夫、大丈夫。看護師長さんには俺から伝えておくから、さあ行った行った」と軽く言うと、サッと車椅子を用意して颯の返事を聞かないまま準備を始める。颯も観念したのか抵抗なく車椅子に移乗させてくれた。


「じゃあ、行ってきます。颯くん行こうか」

   そう声をかけると「……ん」と颯はやや不貞腐れたような声を出した。
   リハビリ室に行くと理学療法士の白井葉那が笑顔で迎えてくれた。ここまで来ると颯も観念したのか拒否することなく真面目にリハビリに取り組み、途中トイレに呼ばれることもなかった。


   リハビリが終わり、颯を病室に送ってナースステーションに戻ると看護師長に呼ばれた。そこには吉志の姿もあり明日からの2週間、颯のメンタルサポート中心のケアを行なっていくという話をされ、そのメンバーに湖城が抜擢されていた。この2週間は、湖城はほぼ颯中心で動けるように、調整されるということだ。
   今までも颯の担当ではあったが、もちろん他の患者の担当でもあったため、全てを湖城がサポートしていたわけではない。特にトイレに1時間に1度呼ばれるようになってからは、湖城や朝也だけでは対応仕切れなくなり他の女性看護師が介助することも増えていた。その部分の対応もできるだけ、湖城が行けるようにしたり、先程のリハビリの時のように、終わるまで付き添ったりできるように患者の調整をしてくれていた。夜勤も少なく、その分朝也の夜勤が増えていた。2週間という期限もそれ以上は勤務体制的に難しいのだろう。
   2週間でなんとか颯のメンタル面の向上を図り、リハビリ意欲を高めていくことが目標である。リハビリが進んでもう少し足がスムーズに動かせるようになって、自立排泄に向かうと颯を悩ませている排泄面の機能回復にも繋がっていくと考えていた。
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