神さまのレシピ

リエゾン

   ナースステーションにコール音が響く。誰よりも早く確認して、ほんの１時間ほど前と同じ場所が光っているのが見える。病室の扉を開けると先程、病室を後にした時と変わらずボーッと窓の外を見ている颯がいる。
「今、準備するから待ってね」そう、声をかけて車椅子をベット脇に準備して、颯を車椅子に移乗しトイレに向かった。



   神経因性膀胱……リハビリ後にほぼ決壊していた状態の颯を尿瓶でするように誘導してからも、排泄面の失敗が続いていた。この颯の状態は、脊椎損傷による脊椎性排尿障害が原因と診断された。尿を出す排尿機能には大きく問題はなく、尿を貯めることがうまくできなくなる蓄尿障害だった。薬やリハビリで治療し、また足のリハビリが進むことで改善することが期待された。だけど、排泄面の失敗は颯のメンタルに大きく影響し、リハビリ意欲や生きる意欲がなくなって、以前の颯にまた戻ってしまっていた。おしっこが貯められなくなっているのは確かだが、１時間しか持たないということはない。診断される前までは２時間から２時間半くらいは我慢できていた。漏らしたくないという精神的なものが大きく、今は１時間に１回は呼ばれる状態だ。


「今日は夕方からリハビリあるからね」

「……だるくて、頭痛いから……」

「颯くん……昨日も休んだよね。トイレのことも足もリハビリしないと良くならないよ」

「……もう、いいんです……こんな体どうなったって」

「颯くん！」


   もう、俺が何を言っても、布団をかぶって何も聞いてくれなかった。病室を出て軽く息を吐く。これから、どうしていこうかと考えていると声をかけられた。