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39.選んだ理由
しおりを挟むリートは明日以降の説明をしてからひとまず別れて、ウルス隊長と話すために事務所に戻ってきた。
事務所に行くと、ちょうどラーグも部屋にいた。
「隊長、すみません。ちょっとお話が」
「どうした」
「弟子の件なのですが、見つかったので、そのご報告に」
リートが言うとウルスは少し驚いた表情をする。
「どこで見つけた?」
「闘技場で。シャーロットという子です。中央騎士団で騎士見習いをしていたようですが、今は師匠がいません」
リートがシャーロットという名前を口にすると、今度はウルスだけではなくラーグも驚く。
「小人のシャーロット? 拳士の子か?」
「ええ、そうです。もしかしてご存知なんですか」
「ああ。ちょっとした有名人だからな」
ウルスがそう言う。すると、ラーグが後を継いで説明し始める。
「彼女は色々な騎士たちに頼み込んで、騎士見習いとして修行したいと懇願したんだが、弟子に取りたがる騎士が現れなかった。そんな中、中央騎士団のある中隊長が、チャンスをやれと部下に命令して、無理やり騎士見習いにしたんだ。それで、かなりひどい扱いを受けながら、見習いを続けてきたんだが…」
ラーグは、淡々と事実を告げる。
特に小人だからといってことさら軽蔑するような口調ではなかった。そのことにリートは少し安心する。
「しかし、なぜ彼女にする? ちゃんと実力をわかってるのか?」
ラーグは怪訝そうに目を細めて聞く。
「ええ、模擬戦をしました」
すると、ラーグは両手のひらを天井に向けて呆れたと言い放つ。
「おいおい。お人好しはよせよ。わかってるのか? 小隊長試験は弟子と二人一組なんだぞ? 小隊長試験は、採用試験とは訳が違う。すでに第七位階になっている実力者との戦いなんだ」
「ええ、それはそうですが……」
確かに、シャーロットの実力は相当低かった。
全てが拙なかった。
きっと、もっと強い見習いがいくらでもいるだろう。
だが、それでもリートがシャーロットを弟子にすると決めたのにはちゃんとした理由があった。
「あの子の拳は、すごく努力が詰まっていたんです」
「努力……だと?」
「ええ。途方もない努力を重ねた、そんな感じでした」
「……だが、だとしたらますますダメじゃないか。努力してきたのに、てんでダメだったんだぞ。才能がないってことじゃないか」
「いえ、そうでもないんです。きっと彼女は恵まれない環境だったから、誰からも戦い方を教われなかったんです。だから全て拙い。でも、ポテンシャルは十分だと思います。現に、俺と戦った時、彼女は俺の繰り出す技を、ちゃんと目で追っていました。能力がそれについてきてないだけなんです」
リートがそう説明すると、ラーグは首をすくめた。
「まぁ……勝手にしたらいいが、隊に迷惑をかけるんじゃねぇぞ」
ラーグとの会話に区切りがついたところで、ウルス隊長が言葉を発する。
「俺はお前の選択にどうこう言うつもりは一つもない。頑張ってくれ」
リートは隊長の許可が降りたことでホッとする。
「ありがとうございます」
リートは、失礼しますと退室する。
残されたウルスとラーグは顔を見合わせる。
「……あいつは、お人好しがすぎますね」
ラーグが呟く。
「ああ、そうだな。自らいばらの道を歩いているように見える――だが、それが強さの源泉なのかもな」
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