クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。

アメカワ・リーチ

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37.追放された少女

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 リートは訓練のために闘技場にやってくる。
 この一週間まともに剣を振るっていなかったので、身体がだいぶ鈍っていた。試験もあるので、また感覚を取り戻さなければと思った。

 ――だが、剣を携えて闘技場の中に入ったリートの耳に、騒ぎが聞こてくる。

「お願いします! どうか! どうか私を試験に出させてください!」

 必死に叫ぶ少女の声。

 見ると外見は幼い10歳前後の少女だった。

 みすぼらしい灰色の服に身を包んだ少女。一目見て、貧困層だとわかる。
 色が薄い茶髪はかなり雑に切られている。きっと自分で切ったのだろう。

 そんな少女が、地面に両手をついて男に懇願していた。
 男は胸に騎士のバッジをつけている。見ると、リートと同じ第七位階であることが刻まれていた。まだ二十代と言う外見で第七位階ということは、相当優秀な騎士ということだ。

「ランド様! お願いします!」

 一体何をお願いしているのかわからなかったが、ランドと呼ばれた騎士は心底見下した目で懇願する少女を見ていた。

「うるせぇな、目障りなんだよ!」

 男は少女のそばに、唾を吐き出す。

「これ以上面倒を見るのはごめんだぜ。もう隊長には話通してるからな。小人の分際で、騎士になんてなれるわけねぇだろ」

 その言葉で、なんとなく話が見えてくる。

 懇願している少女は、いわゆる“小人”らしい。

 10才前後で成長が止まってしまう病。
 一般に、神によって罰を下されたとされており、差別の対象になっている。
 あのみすぼらしい身なりも、小人であれば納得できる。

 少女に見えるが、彼女はどうやら立派な成人らしい。おそらく戦闘系スキルを持っていて、騎士になることを希望しているのだ。

「お前と一緒に小隊長試験に行ったら、勝てるもんも勝てなくなるだろうが。こちとら人生かかってんだぞ」

 ランドはそう吐き捨てて踵を返そうとする。
 だが、少女はバタバタとランドの正面に回り込んで、再び頭を下げる。

「もっと努力します! 絶対に足手まといにはなりません! だからお願いです!」

「嘘つけよ。オメェみたいな雑魚、足手まとい以外の何者でもねぇんだよ」

 そう言うと、ランドは少女に横蹴りを入れる。
 もちろん本気には見えなかったが、お腹に露骨に入り、少女は横に倒れこんだ。

 倒れた少女を気にする風もなく、ランドは闘技場を去っていった。

 ――なんてやつだ。
 リートは、蹴られた少女の元へと駆けつける。

「おい、大丈夫か」

 リートがかがんで様子を伺うと、少女はボロボロと涙を流していた。

 痛みに苦しんでいるのではないと、リートにはすぐにわかった。

「……小人は、騎士を目指しちゃいけないんですか!?」

 彼女は、そんな憤りを吐露した。

 確かに小人は戦闘には向かない。
 例え、戦闘系のスキルを持っていたとしても、騎士になるのは難しいだろう。

 リートはそんなことないよと否定してあげたかったが、その言葉が嘘にならない根拠を見つけることができなかった。

 だから無言で少女の背中をゆっくりとさする。

「見習い騎士になりたかったのか?」

 リートが尋ねると、少女は首を振った。

「ランド様の下で見習いをやっていました。でも、試験の足手まといだからと追い出されて」

「そうか……」

 リートにはかける言葉がなかった。
 
 ――だが、次の瞬間、少女はリートの胸のバッジに気がつく。
 
「あ、あなたは! 第七位階(セブンス)! も、もしかして小隊長試験を受けるのですか!?」

 少女は急に希望を見出したのか、まっすぐな目でリートのことをみる。

「あ、ああ。そのつもりだが」

「弟子は!? 弟子はもう決まっていいますか!?」

「いや、まだ決まってないが……」

 言うと、少女はすごい勢いてリートの手を取り、頭を下げてきた。

「私を弟子にしてください! 絶対に頑張りますから!」

 その言葉に、リートはたじろぐ。
 かわいそうだから助けてあげたいとは思ったが、即答できる話ではなかった。

 弟子なんて、気軽に持つ話ではない。

「えっと、そうだな。まだ俺、君の力も知らないし、素性もわからないから、なんとも言えないけど、でも相談には乗るよ」

 リートがそう答えると、少女は勢い立ち上がる。

「ではいますぐ模擬戦をやりましょう! 絶対に試験で役に立つって証明します!」

「……模擬戦? 今すぐ?」

 リートはその勢いに少し驚く。

 しかし、断る理由はないので、小考ののち了承した。

「わかった。君の実力、見せてもらうよ」
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