[完結] 伴侶は自分で選びます。

キャロル

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11 命の天秤

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ものすごい勢いで部屋に入るなりアルスト王弟様は私の前に跪き手を震わせ懇願してきた。

「リリアンナ嬢、どうか、マリアを助けて欲しい、私はどんな罰を受けてもいい、お願いだ貴方にしかマリアを助けることが出来ないんだ、頼む…」

突然のことで、何を言ってるのか理解ができない、助ける?昨日まで元気だったではないか?それに何故私が?必死に頼むと言われても何をと困惑していたら、国王が

「アルスト、落ち着いて、事情を話せ!いきなり入ってきて助けろと言われても要領を得ないであろう、一体どうしたというんだ」

床に跪いたままのアルスト様をグラシオスが立たせソファに座らせた。青い顔したアルスト様が話し始めた。

「実は今朝から体がだるいと休んでいたがあまりに様子がおかしいので先ほど侍医に診察してもらったんだ。すると、マリアの腹の子はマリアの魔力を吸収しながら育っているようで魔力の少ないマリアは魔力欠乏症になってしまっているんだ。
本来、アイルスを身篭り10年しか経ってないのに妊娠するのは子ができにくい竜族では異例の事だったんだ。私と番うことによりマリアの体も竜族に近い状態に変化してきていた矢先の妊娠で恐らくアイルスの時の完全な人族の時の妊娠とは違い変化途中であったが為の影響かもしれないが……婚姻前のリリアンナ嬢に話すのは憚れるんだが、……その…竜族の…胎児は…育つために父親の…精が…必要で……それを吸収して育つんだ。だから、人族が完全に体が竜族に変化する前にできた子はアイルスのように竜族の遺伝子しか持たないから母親が同じでもリリアンナ嬢とアイルスのように遺伝子は他人となるんだよ…」

「……、」

なんて言えば良いのでしょうか?ツッコミどころ万歳?胎児の栄養源が父親のあれって…知らんかった…知らなくてよかったかも…だから、遺伝子は他人と言われてるのか、結局母が竜族に体が変化してから子供ができても異父兄弟にはならないのか、そういう事か…。

「えーっとつまり今回の胎児は通常の栄養の吸収の仕方では無いのですね。魔力が栄養なら魔石を持たせれば良いのでは?」

「もちろん、魔石は試したが拒絶するんだよ、だから、実の娘であるリリアンナ嬢の魔力ならと、頼む試してみてはくれないか、このままなら、母子共に危険なんだ。」

「……正直…私にはあなた方を助ける義理も義務もありません……ありませんが、アイルスにとっては大事な兄弟なので今回だけは手を貸します、が、私の魔力が適さない場合はすぐに帰ります。良いですね。」

「ありがとう、試してもらえるだけでも良い、お願いしたい」

帰ると言った瞬間にグラシオスとアイルスは悲しそうな顔をしていたが、状況が状況だけに口を閉ざしていた。
私はそれから、すぐにアルスト様に連れられ、母の元に向かった。





部屋に入ると青白い顔をした母がベットに寝ていた。

意識のない母の側に近寄り、わずかに膨らんでいるお腹に手を当てて胎児の様子を見た。
成る程、渦を巻くように魔力が胎児に吸収されている。まず、私自身の魔力を注いでみた。胎児を感じる。

やはりというべきか、私と相性が良いこの子はグラシオスと同じように僅かに魔力が使えるタイプの竜族のようね。しかも本能的な賢さで、父の精より魔力を吸収した方がより成長が早いと察知したみたいだわ、……私の魔力のせいね…しょうがないわね、私の魔力で膜を作り胎児を包み母から魔力を吸収できないようにした。私の魔力を定期的に与えないといけないわね~
本来の方法での栄養と併用して与えてやれば大丈夫だと思うんだけど、試しながらやるしかないわね~。

胎児を魔力で包んだらあっという間に母の顔色が良くなった。

「アルスト様、原因と解決方法が粗方わかりましたが、当面は色々試しながらになります。母から魔力を胎児が奪うことはもうありませんから、明日にはいつも通り過ごせるでしょう。明日からは従来の栄養の与え方に私の魔力を追加で与えることになります。ただ、与える頻度と量は試しながらやりましょう。明日はアルスト様がいつも通り与えてください。その後でどう変化しているかにより私の与える量と頻度を決めます。宜しいですか?」

なんだか、胎児の栄養のためと聞いたが、内心は複雑なのよね、あれよね、竜族は妊娠中もあれなのよね、獣人の妊娠事情ってこれが普通なのかしら?聞くに聞けない裏事情ね。

それより、なんの因果か、これで帰れないこと確定ね、せっかくだから、VIPな対応してもらいましょう。

「リリアンナ嬢、ありがとう、もちろん貴方の指示に従うよ、マリアの妊娠中はこちらに滞在してもらうから、すぐ我が家に部屋を用意しよう。」

「ちょっと、待ってください!」

突然、グラシオスが声をかけてきた。いつの間に?さっきいた?

「リリィは王城に部屋を用意する。叔父上のところには治療の時に私が連れて行く」

「いや、しかし、マリアの側に…我が家にいた方が、いいと思うが、リリアンナ嬢?どうするか?貴方の好きな方で良いが?」
流石に母と同じ屋根の下は色々気まずいから、ここはグラシオスの提案に乗ろう

「アルスト様、私は王城に滞在したいと、思います。毎日治療が必要というわけではないですし、」

「そうか、それなら、明日の昼頃にでも迎えに伺うよ」

「お迎えはいいですよ、こちらから、伺いますから、それでは、今日はここで失礼します。」

「ああ、本当にありがとう」

 部屋を出て私はグラシオスにわがまま言ってみた。

「ねぇ、グラシオス、ちゃんと寛げる部屋用意してくれるんでしょうね、ショボい部屋だったら、アルスト様にお願いするわよ。できれば浴室付きにしてね、期待してるわよ!」

「もちろん、任せとけ!既に用意させてある。楽しみにしてろよ!これから、向かうからな!」

「は?用意してあるって?なんで?」

楽しみにしてろと嬉々として言うグラシオスに突っ込みたい気持ちを抑えとにかく疲れたから、おじ様にしばらく王城に滞在すると事情を話し先に帰ってもらい私はグラシオスの用意した部屋に向かい……驚くことになる。
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