ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

文字の大きさ
上 下
118 / 139
第4章 歴史と現実

第43話

しおりを挟む




その耳に、諭すように囁く。



「私は、ずっと、沖田総司の妹だよ。そうちゃんの、妹だから」

「っ……」

「いなくなんて、ならないから、だから、……一緒に、護らせてくれる?」



私の腕の中でひたすらに、透明な感情を零し続ける、沖田総司。

壬生浪士組の中で一番といっても過言ではないほどの強さを誇る隊士。

平成で生まれて、9歳の時にこの時代に来て。

その名をここまで大きくするために、どんな努力があったのだろうか。

どんなに辛くても、苦しくても、耐えて耐えて耐えて、必死に。



「璃桜……っ、」



そうちゃんの大きな硬い手のひらが、背に回った。

しっかりと、強く、その温もりに包まれる。



「俺……璃桜が、またどっかに行っちゃうのが怖くて」

「うん」

「俺の知らないところで、離れ離れになりたくない」

「……うん」



そうちゃん。私もだよ。

貴方が病気になってしまう未来なんて、絶対に嫌なの。



「だから、絶対に、俺より先に居無くならないで」

「……ずっと、一緒」



一緒にいる未来を作るために、一緒に護りたい。

そう呟いた私のことを、貴方は、さらに強く、抱きしめた。



「……もう、二度と、離さない」



落とされた言葉は、私の耳に届く前に、昇りかけた朝日の煌めきに溶けて――消えた。




しおりを挟む

処理中です...