37 / 304
帰還してきた男
しおりを挟む
ドスドスと重い足音、鎧のガシャガシャと言う音、蛮族平定から帰ってきた男がいた。
「ガルシア将軍が帰還しました!」
慌ただしく走ってきた衛兵がそう告げると同時に、玉座の間に現れ、乱れた黒髪、顔に傷のある巨漢は不敵な笑みで礼もとらずに、玉座に座るオレの前に立って、見下ろす。
「陛下、只今、帰ってきました。……知らないうちにご結婚おめでとうございます」
嫌味ともとれる言い方だと、オレは肩をすくめる。
「ご苦労だった。思ったより長かったな」
「俺にどんな女なのか相談もなく決められたようで、少々気分が悪いんですがね?」
「別に将軍の許可はいらないだろう?」
何言ってるんだ?とオレは冷ややかに返す。いつ終わるかわからない戦を待っていて、リアンの気持ちが変わったら、どうする気だよ?
「兄のように慕ってくれていると思っていたので、寂しい限りです」
……嘘つけとオレは悪態をつきたくなる。父王の時に腐敗したやつらを粛清したときに、こいつもついでに葬りたかったが、ふてぶてしい態度以外は何も出てこなかったから仕方ない。
「リアンに……王妃に近寄るなよ」
オレは冷たくそう言い放つ。ガルシア将軍が目を丸くした。
「陛下がそんなに女にご執心になるとは!そこまで良い女なら、余計に拝んでみたいな。なんでも他の者からの話では、陛下は王妃の前では人が変わるとか?まさか腑抜けになってないですよね?」
「セオドア!」
オレの横にいた騎士のセオドアがハイと返事をした。
「絶対にリアンに近寄らせるな!」
「承知いたしました」
スッと影のようにセオドアは去っていき、リアンの護衛につく。
「ハハッ!セオドアで俺に勝てるかな?」
嘲るように笑う将軍。
「後宮にはオレの許可なく他の男は入れない。無理に入るなら法で裁くぞ。法以外にも……方法はいくらでもあるけどな。それを知りたいのなら、かまわないけど?」
むしろ遠慮なく、裁いて、倒して、こいつを将軍から引きずり降ろしたいな。不敬すぎる将軍にオレはウンザリしていた。誰よりも強いが、性格に難があり、Sっ気要素が強すぎて扱いにくい。
「さすがに入れないのはわかっていますよ。しかし冷たいな。紹介もしてくれないなんて……」
「ガルシア将軍、遠方での戦、疲れただろう?ゆっくりと休め」
「本当に可愛げが無くなってしまって、陛下はつまらない」
捨て台詞を吐いて、フンッと鼻息荒く背中を見せて去って行く。
はあ……とオレは嘆息した。将軍とは仲が悪いわけではない。ただ、無駄に威嚇をしてくるので、疲れる。
幼い頃から、剣や体術を教えてくれたのは彼だ。とてつもなく厳しい訓練だったが……あれがあって、今のオレの強さがあるとも言える。殺されるかと思うくらいだったし、殺気が本物であった時もある。あの男は要注意だと未だにオレは警戒している。
リアンには絶対に近寄らせないようにしよう。危険な男すぎるのだ。
「ガルシア将軍が帰還しました!」
慌ただしく走ってきた衛兵がそう告げると同時に、玉座の間に現れ、乱れた黒髪、顔に傷のある巨漢は不敵な笑みで礼もとらずに、玉座に座るオレの前に立って、見下ろす。
「陛下、只今、帰ってきました。……知らないうちにご結婚おめでとうございます」
嫌味ともとれる言い方だと、オレは肩をすくめる。
「ご苦労だった。思ったより長かったな」
「俺にどんな女なのか相談もなく決められたようで、少々気分が悪いんですがね?」
「別に将軍の許可はいらないだろう?」
何言ってるんだ?とオレは冷ややかに返す。いつ終わるかわからない戦を待っていて、リアンの気持ちが変わったら、どうする気だよ?
「兄のように慕ってくれていると思っていたので、寂しい限りです」
……嘘つけとオレは悪態をつきたくなる。父王の時に腐敗したやつらを粛清したときに、こいつもついでに葬りたかったが、ふてぶてしい態度以外は何も出てこなかったから仕方ない。
「リアンに……王妃に近寄るなよ」
オレは冷たくそう言い放つ。ガルシア将軍が目を丸くした。
「陛下がそんなに女にご執心になるとは!そこまで良い女なら、余計に拝んでみたいな。なんでも他の者からの話では、陛下は王妃の前では人が変わるとか?まさか腑抜けになってないですよね?」
「セオドア!」
オレの横にいた騎士のセオドアがハイと返事をした。
「絶対にリアンに近寄らせるな!」
「承知いたしました」
スッと影のようにセオドアは去っていき、リアンの護衛につく。
「ハハッ!セオドアで俺に勝てるかな?」
嘲るように笑う将軍。
「後宮にはオレの許可なく他の男は入れない。無理に入るなら法で裁くぞ。法以外にも……方法はいくらでもあるけどな。それを知りたいのなら、かまわないけど?」
むしろ遠慮なく、裁いて、倒して、こいつを将軍から引きずり降ろしたいな。不敬すぎる将軍にオレはウンザリしていた。誰よりも強いが、性格に難があり、Sっ気要素が強すぎて扱いにくい。
「さすがに入れないのはわかっていますよ。しかし冷たいな。紹介もしてくれないなんて……」
「ガルシア将軍、遠方での戦、疲れただろう?ゆっくりと休め」
「本当に可愛げが無くなってしまって、陛下はつまらない」
捨て台詞を吐いて、フンッと鼻息荒く背中を見せて去って行く。
はあ……とオレは嘆息した。将軍とは仲が悪いわけではない。ただ、無駄に威嚇をしてくるので、疲れる。
幼い頃から、剣や体術を教えてくれたのは彼だ。とてつもなく厳しい訓練だったが……あれがあって、今のオレの強さがあるとも言える。殺されるかと思うくらいだったし、殺気が本物であった時もある。あの男は要注意だと未だにオレは警戒している。
リアンには絶対に近寄らせないようにしよう。危険な男すぎるのだ。
26
あなたにおすすめの小説
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる