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怠惰な彼女と将軍
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「今日もお茶とお菓子が美味しいー!幸せー!私、アップルパイにカスタードクリームが入ってるのが好きなのよね。パイもサクサクしてるし……ってセオドア、なんで最近、傍にいるの?仕事、暇なの?」
私の部屋によく顔を出す、静かな護衛騎士にそう尋ねる。
「お嬢様!忙しい騎士の方に、そんな聞き方失礼ですよ!」
私とアナベルの会話にものってこない無言のセオドア。なんか変なのよね。これは何かあると思って、挑発してるのに、セオドアは最近、ピリピリとした空気で護衛し続けている。ウィルバートは何もないよとはぐらかしてるし、城内で何かあったのかしら?
最近、嫌な空気ねーと私は思いつつ、図書室へと向かう。クロードに頼んでおいた、書類は来てるかしら?アナベルとセオドアと共にやや薄暗い図書室へと入る。
「おっ?ほんとに王妃様は本好きなんだな?図書室で待っていたら来ると言うウワサだったが……」
黒髪の巨漢、顔に傷のある男。見たことない人ね。身なりは悪くないものの、雰囲気は荒々しい。
「ガルシア将軍!陛下から近寄らないようにと言われたはずです!」
将軍!?そんな偉い人だったの?
セオドアが私の前にスッと出ようとした瞬間、腕をとられて、折られる程に曲げられる。グッと苦悶の声を上げかけてのみこむセオドア。アナベルがキャアと小さく悲鳴をあげた。
「ちょっと!やめなさいよ!」
私の鋭い声に将軍がへーと笑って、セオドアの腕を離す。ジロジロと品定めするように私を見る。
「怖がらないんだな?」
「何のようなのかしら?将軍様はお暇なの?」
「挨拶でもしておこうかな?と思ってね。まあ、座れ。陛下の幼少時の話、聞きたくないか?」
……それは興味深いわね。可愛いウィルバートの小さい頃の姿とか想像すると愛おしく感じるわ。
そうねとウィルバートの可愛い姿を想像してしまい、つい椅子に腰掛ける。セオドアが腕をさすりつつ、おやめになったほうが……と、止める。
「陛下はとても可愛らしかった。誰よりも強くなりたいと俺に頼んできたから鍛えてやった。訓練の時、何度、倒されても、涙を零しながら必死で立ち上がってきて、向かってくるから、余計に傷つけたくなるというか……」
あれ?なんか私の思ってた姿とは違う。そう気づいた時には遅く、ガルシア将軍は得意げに話していく。
「訓練に耐えられなくて吐いていたこともあったし、あばら骨を折ってやったこともあったし、小さい頃は俺と対峙すると震えていたんだが、今じゃ可愛げのない王になってしまって……あれ?気に入らないお話でしたかね?」
私の微妙な顔を見て喜ぶ男。……なるほどね。そういう人なのねと私は理解した。
「可愛いウィルバートのお話かと思ったのに、残念だわ」
私は怒りを見せず、将軍にフッと優しく笑いかける。まさか微笑みで返されるとは思っていなかったのか、目を丸くした。
そこへクロードがやってきた。
「げっ!ガルシア将軍!」
手には私が頼んだものを持っている。ありがとうともらおうとすると、先に将軍が手にした。
「なんの書類だ?天候を調べてるのか?なんのために?」
「あら?戦で常勝の将軍ともあろう方ならわかるでしょ?」
首を傾げる将軍。
「戦は力だけではないわ。気象条件も武器になる。例えば霧が濃く出る時期はそれに乗じて攻撃に出ることも可能だし……それだけじゃないわ。何年かに一度の干ばつの時期がいつ来るのか、統計をとってわかれば、食料の備蓄をするなどの対策がとれるのよ。天候を調べることは有益なことだと思わない?」
シンと静まる図書室。将軍は言葉にならず口をパクパクさせている。金魚か鯉なの?と、私はヒョイッと隙ができた将軍の手から書類を容易くもらう。ハッと我に返る将軍。
「それは王妃に必要なのか?なんでそんなことしてる!?」
「怠惰に過ごしてる時間の単なる暇つぶしね」
暇つぶしっていう勉強量かなぁとクロードが横から突っ込むが余計なこと言わない!とチラリと視線を送る。
「まったく。お嬢様は相変わらず素直じゃないんですから」
アナベルまで、少し笑いつつ、そんなことを言う。私は聞き流しておく。
「……ったく、あいつ、なんか変な王妃を選んだもんだな」
毒気を抜かれてしまったようで、そうブツブツ言いながら、将軍は去っていった。
セオドアが私をマジマジと見た。
「ガルシア将軍をあんなふうに言い負かして、去らせるのはリアン様だけかもしれません……どうしましたか?何か怒っていますか?」
別になんでもないわよ……と答えつつ、私はウィルバートを打ちのめした話を楽しそうにする将軍に苛立つ心を抑えられず、気づくと、去って行ったドアを睨みつけていた。我慢していたのに、いなくなったら、つい感情が表面化してしまい、セオドアに言われてしまう。
……私、顔に出るようではまだまだ未熟者だわ。
私の部屋によく顔を出す、静かな護衛騎士にそう尋ねる。
「お嬢様!忙しい騎士の方に、そんな聞き方失礼ですよ!」
私とアナベルの会話にものってこない無言のセオドア。なんか変なのよね。これは何かあると思って、挑発してるのに、セオドアは最近、ピリピリとした空気で護衛し続けている。ウィルバートは何もないよとはぐらかしてるし、城内で何かあったのかしら?
最近、嫌な空気ねーと私は思いつつ、図書室へと向かう。クロードに頼んでおいた、書類は来てるかしら?アナベルとセオドアと共にやや薄暗い図書室へと入る。
「おっ?ほんとに王妃様は本好きなんだな?図書室で待っていたら来ると言うウワサだったが……」
黒髪の巨漢、顔に傷のある男。見たことない人ね。身なりは悪くないものの、雰囲気は荒々しい。
「ガルシア将軍!陛下から近寄らないようにと言われたはずです!」
将軍!?そんな偉い人だったの?
セオドアが私の前にスッと出ようとした瞬間、腕をとられて、折られる程に曲げられる。グッと苦悶の声を上げかけてのみこむセオドア。アナベルがキャアと小さく悲鳴をあげた。
「ちょっと!やめなさいよ!」
私の鋭い声に将軍がへーと笑って、セオドアの腕を離す。ジロジロと品定めするように私を見る。
「怖がらないんだな?」
「何のようなのかしら?将軍様はお暇なの?」
「挨拶でもしておこうかな?と思ってね。まあ、座れ。陛下の幼少時の話、聞きたくないか?」
……それは興味深いわね。可愛いウィルバートの小さい頃の姿とか想像すると愛おしく感じるわ。
そうねとウィルバートの可愛い姿を想像してしまい、つい椅子に腰掛ける。セオドアが腕をさすりつつ、おやめになったほうが……と、止める。
「陛下はとても可愛らしかった。誰よりも強くなりたいと俺に頼んできたから鍛えてやった。訓練の時、何度、倒されても、涙を零しながら必死で立ち上がってきて、向かってくるから、余計に傷つけたくなるというか……」
あれ?なんか私の思ってた姿とは違う。そう気づいた時には遅く、ガルシア将軍は得意げに話していく。
「訓練に耐えられなくて吐いていたこともあったし、あばら骨を折ってやったこともあったし、小さい頃は俺と対峙すると震えていたんだが、今じゃ可愛げのない王になってしまって……あれ?気に入らないお話でしたかね?」
私の微妙な顔を見て喜ぶ男。……なるほどね。そういう人なのねと私は理解した。
「可愛いウィルバートのお話かと思ったのに、残念だわ」
私は怒りを見せず、将軍にフッと優しく笑いかける。まさか微笑みで返されるとは思っていなかったのか、目を丸くした。
そこへクロードがやってきた。
「げっ!ガルシア将軍!」
手には私が頼んだものを持っている。ありがとうともらおうとすると、先に将軍が手にした。
「なんの書類だ?天候を調べてるのか?なんのために?」
「あら?戦で常勝の将軍ともあろう方ならわかるでしょ?」
首を傾げる将軍。
「戦は力だけではないわ。気象条件も武器になる。例えば霧が濃く出る時期はそれに乗じて攻撃に出ることも可能だし……それだけじゃないわ。何年かに一度の干ばつの時期がいつ来るのか、統計をとってわかれば、食料の備蓄をするなどの対策がとれるのよ。天候を調べることは有益なことだと思わない?」
シンと静まる図書室。将軍は言葉にならず口をパクパクさせている。金魚か鯉なの?と、私はヒョイッと隙ができた将軍の手から書類を容易くもらう。ハッと我に返る将軍。
「それは王妃に必要なのか?なんでそんなことしてる!?」
「怠惰に過ごしてる時間の単なる暇つぶしね」
暇つぶしっていう勉強量かなぁとクロードが横から突っ込むが余計なこと言わない!とチラリと視線を送る。
「まったく。お嬢様は相変わらず素直じゃないんですから」
アナベルまで、少し笑いつつ、そんなことを言う。私は聞き流しておく。
「……ったく、あいつ、なんか変な王妃を選んだもんだな」
毒気を抜かれてしまったようで、そうブツブツ言いながら、将軍は去っていった。
セオドアが私をマジマジと見た。
「ガルシア将軍をあんなふうに言い負かして、去らせるのはリアン様だけかもしれません……どうしましたか?何か怒っていますか?」
別になんでもないわよ……と答えつつ、私はウィルバートを打ちのめした話を楽しそうにする将軍に苛立つ心を抑えられず、気づくと、去って行ったドアを睨みつけていた。我慢していたのに、いなくなったら、つい感情が表面化してしまい、セオドアに言われてしまう。
……私、顔に出るようではまだまだ未熟者だわ。
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