尻穴がバイブレーションしちゃう職業病が成人病として広まってしまった世界

左側

文字の大きさ
17 / 18
癒し系美人騎士団長 + 強面の三十路兵士団長 × 若きエリート騎士団副長

9.騎士団長 + 兵士団長 × 騎士団副長

しおりを挟む
「団っ……、ぃえ、バイハル団長っ。いきなり何をっ。」

いつもの癖でキリを団長、と呼びそうになり、モナイは慌てて言い直す。
この場には団長と呼ばれる男が二人いるからだ。

「僕の事はいつも通り、団長と呼ぶので構わないよ、ヨーナ副長?」
「いいえ、マサラー団長もいらっしゃるので、そういうわけには。」
「そちらもいつも通り、名の方で呼び合って構わないが。」
「え゛……っ。」
「今さら敬称で呼び合う間柄でもないだろう?」

声を詰まらせたモナイをキリが優しげに追い詰める。
いや、キリ本人には追い詰めている気は無いのだが、すっかり復活した『鬼畜攻め』の微笑がそんな風に見せていた。


オロオロしたモナイが助けを求めるような瞳をナンディに向け。
はぁ……っと溜息交じりのナンディは、ここに来て初めてまともに口を開く。

「あー、バイハル団長? 済まんが、その、恋人ってのは…」
「違っただろうか?」
「いや、違う……と言うか……。なんで、そう思っ…」
「身体の関係から始まった恋人同士なのだろう? そのように広まっているぞ?」
「なんっ……!」


なんでっ、そんな噂が……っ、未だに広まってんだぁっ! んな馬鹿げた話を、どこのどいつが広めてやがるっ! ソイツをここにっ、連れて来いいっっ!


と、キリを怒鳴り付けなかっただけ、ナンディの理性は褒められるべきだろう。
同じ兵士団の部下ではなく、別な組織である第二騎士団の団長という立場であった事を、キリは感謝すべきだろう。

怒りと羞恥とで若干赤らみを帯びたナンディの顔、完全に赤くなったモナイの顔を交互に見て、キリは頼もしそうに頷いて見せた。
自分は応援するぞ、という気持ちを込めたつもりだった。キリが思っているよりも口元や瞳が笑っている所為で、状況を楽しんでいるように見える、とも知らずに。



大きな掌で額を押さえたナンディが呻く。

「た、確かに一時期は、そんな妙な噂が流れてたようだが……すぐに消えたハズだ。それがなんで、ぃ…今さら……。」


ありゃあ確か……モナと名前で呼び合うようになった頃だったか? オレとモナが急に親しくなった、とかナントカ。本当にそれだけ。チラッと噂が流れたっぽいが、よ。あっという間に聞かなくなったろぉが。
それがなんで……ほんっとに、なんで。今さら、恋人だって話になってんだ? そんな誤解……あ、いや、身体の関係ってのは全くの間違いってワケじゃねぇが。
とにかく、そんな噂が流れてるなんて聞かされて、モナがどう思うか……。もしかして、オレとヤルのをしばらく控えよう、とか思うんじゃねぇか? まさかそのまま、今後は治療術師に対応して貰う事にするとか、考えたりしねぇよな?
…………嫌だ。冗談じゃねぇ。
例え相手が治療術師だろうとも、オレの役目を他の誰かに譲りたくねぇ。どこの誰とも知らねぇ治療術師にも、親切そうに振る舞ってるバイハル団長にも。
モナに触るのはオレだけだ。


ナンディが密かに想いを込めた視線をやれば、モナイは赤くなった顔を両手で押さえていた。珍しく明らかに恥ずかしそうだ。
その姿に機嫌を良くしかけたナンディだったが、視界に入るキリも満足そうに微笑んでいる事は少々気に入らなかった。



キリにとってはナンディが不思議がる事が、逆に不思議だった。

「心当たりが全く無いのかい? 本気で?」


マサラー団長は何故に。自分とヨーナ副長が周囲から恋人同士だと認識されない、と思っていたのだろうか。
こう言ってはなんだが貴方達、割と頻繁にイチャ付いているよな?
宿舎の近くで『偶然』出会えば用事も無いのに、あるいは小さな用事を作り出して、短い時間でもお喋りしているじゃないか。その回数だって、恐らく恋人になったであろう時期の前後を比べてみたら、著しく増えているに違いない。
周囲に人が居るから会話の内容は当たり障りの無いものだが、二人とも随分と嬉しそうな表情をしていたのが印象深かった。何より一番雄弁なのは、会話中に何度も絡み合わせる視線だがね。そう言えば、王城の控室でもそうだったかな。羨ましい、けしからん。
全く……これで何故、二人の関係が誰にもバレないと思えるのだろう。


両手で顔を挟み込んでいるモナイは、心当たりを必死に思い出そうとしているように見えた。という事はモナイも、これまでに行っていたイチャ付きは無意識だったというわけだ。
視界の端では、ナンディが睨んで来る。見た目は凄く怖いが十中八九、照れているだけだろう。
見守るような気分でキリは目を細めた。



モナイの心中は、羞恥と反省とで埋められていた。

「……心当たり……。無い、事も…ない、ような……。」

すみません……、バイハル団長、ご免なさい!
温厚な団長がここまで言うとは、余程うるさかったのだろうな。ディーと名で呼び合っている事まで知られているのだから、恐らくはかなり鮮明に聞こえていたのに違いない。
ぁれ、待て……上階の団長にそこまで聞こえる、という事は……。下階の部隊長達の部屋にも、それなりに……。あっ、あ……ああぁぁ、もうっ、……恥ずかしいっ! どうしてこれまで無遠慮に、大声を出してヨガってしまったのか!
穴があったら入りたい……。……通常は入れられる側だが。
そうだ、明日にでも。猿轡を、買いに行こう……。


斜め上か下かも判別付け難い決意を固めながら、モナイは真っ赤になった顔に当てた手の、指の隙間からナンディとキリとを盗み見る。
第二騎士団の『鉄の人形』という渾名が影も形も無い、小動物っぷりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...