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番外編
二人暮らし③
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「ぅ、ん……?」
「目が覚めたか」
「いま、何時?」
「夜中の1時だな」
月夜が帰ってきたのが夜7時頃で、それから直ぐにことに至っている。光留が気絶するように意識を飛ばしてからどれくらい経ったのかは分からなかったけれど、身体に不快感がないことから、月夜が後始末までしてくれて、それなりの時間が経っているのだろう。
「身体の調子は?」
「んー、今のとこ大丈夫」
光留の前髪を払いながら月夜が聞けば、事後の気怠さはあっても体調そのものは悪くない。
「月夜は?」
「俺はお前と違ってちゃんとコントロール出来るからな。まあ、光留の霊力過多は俺のせいだが……」
「別に責めてないだろ。月夜が面倒見てくれるから俺は生きてるわけだし。さっきのも気持ち良かったし……」
光留の霊力は、性欲と結びついている。だからセックスすれば過多状態から多少は改善されるが、根本的な解決にはならない。
月夜が制御の仕方を教えることも考えたが、光留のように自分で持て余すほどの過剰な霊力をコントロールするにはそれに見合う霊力が必要となる。しかし月夜にはそれが足りない。
昔、月夜が光留の霊力を制御しようとして失敗し、光留を泣かせたことがある。その経験から出来るだけ負荷が少ない房中術を選んだが、光留には合っていたようだ。
「そうか」
「月夜は? その…………気持ちよかった?」
良くなければ達することは出来ない。
事務処理的に光留を抱いているつもりはないし、している最中の言葉はすべて本心だ。
「ああ、良かったよ。光留との相性がいいのは当たり前だとして、そもそものところで愛しい相手が俺で気持ちよくなってくれているんだ。それ以上に気持ちも身体も昂ることはない」
好きだから抱いているのだと伝えれば、光留も満更ではないのか、素直にホッとしたような表情をする。
「腹減ってるだろ。もう夜食になってしまうが食べるか?」
「いらない。月夜のでお腹いっぱいだから……」
中に出したものは掻き出したはずだが、精液に混じった月夜の霊力が、光留の霊力を抑え込んでいるのが効いているのだろう。
「そうか。だが、食えるなら少しは腹に入れろ。その方が安定しやすい」
「ん……」
おもむろに光留が月夜にキスをすれば、月夜は光留の頭を撫で返す。
これで十分とでも言いたいのだろう。
時間も時間なので光留が作った夕食は朝食にしてもいいかもしれない。
「仕方ない。眠いなら寝ていろ」
「うん、そうする」
光留がくすくすと笑う。月夜は詰めが甘いな、と常々思っているが、根っからの世話焼き気質がそうさせるのだろう。光留もそうだが、月夜は好きな相手には尽くすタイプだ。だから過保護にもなるし、妥協できる所は先に折れる。
(まあ、そのせいで好きな人を傷つけることにもなるんだけどな……)
それでも、あの時――前々世で死んだ時と同じ愛する人を失うか、自分の死か……と選択を迫られたら、光留もきっと、同じ選択をするだろう。
そして、きっとそれを後悔しない。
ふと窓の外を見るとまんまるの月が見えた。黄金ではなく、青銀の色をした月だ。
(月夜の魂の色に似てる……)
それもそうだ。“月夜”の名前の由来は、月が綺麗な夜に生まれたから。
光留は、その光を留める為に生まれた楔。
(本当に、そうなら良かったんだけどな……)
月夜にも光留にも、まだ忘れられない人がいる。
その人と出逢うまで、きっと2人で探し続ける。
これは、期限の決まった誰にも言えない恋だ――。
「目が覚めたか」
「いま、何時?」
「夜中の1時だな」
月夜が帰ってきたのが夜7時頃で、それから直ぐにことに至っている。光留が気絶するように意識を飛ばしてからどれくらい経ったのかは分からなかったけれど、身体に不快感がないことから、月夜が後始末までしてくれて、それなりの時間が経っているのだろう。
「身体の調子は?」
「んー、今のとこ大丈夫」
光留の前髪を払いながら月夜が聞けば、事後の気怠さはあっても体調そのものは悪くない。
「月夜は?」
「俺はお前と違ってちゃんとコントロール出来るからな。まあ、光留の霊力過多は俺のせいだが……」
「別に責めてないだろ。月夜が面倒見てくれるから俺は生きてるわけだし。さっきのも気持ち良かったし……」
光留の霊力は、性欲と結びついている。だからセックスすれば過多状態から多少は改善されるが、根本的な解決にはならない。
月夜が制御の仕方を教えることも考えたが、光留のように自分で持て余すほどの過剰な霊力をコントロールするにはそれに見合う霊力が必要となる。しかし月夜にはそれが足りない。
昔、月夜が光留の霊力を制御しようとして失敗し、光留を泣かせたことがある。その経験から出来るだけ負荷が少ない房中術を選んだが、光留には合っていたようだ。
「そうか」
「月夜は? その…………気持ちよかった?」
良くなければ達することは出来ない。
事務処理的に光留を抱いているつもりはないし、している最中の言葉はすべて本心だ。
「ああ、良かったよ。光留との相性がいいのは当たり前だとして、そもそものところで愛しい相手が俺で気持ちよくなってくれているんだ。それ以上に気持ちも身体も昂ることはない」
好きだから抱いているのだと伝えれば、光留も満更ではないのか、素直にホッとしたような表情をする。
「腹減ってるだろ。もう夜食になってしまうが食べるか?」
「いらない。月夜のでお腹いっぱいだから……」
中に出したものは掻き出したはずだが、精液に混じった月夜の霊力が、光留の霊力を抑え込んでいるのが効いているのだろう。
「そうか。だが、食えるなら少しは腹に入れろ。その方が安定しやすい」
「ん……」
おもむろに光留が月夜にキスをすれば、月夜は光留の頭を撫で返す。
これで十分とでも言いたいのだろう。
時間も時間なので光留が作った夕食は朝食にしてもいいかもしれない。
「仕方ない。眠いなら寝ていろ」
「うん、そうする」
光留がくすくすと笑う。月夜は詰めが甘いな、と常々思っているが、根っからの世話焼き気質がそうさせるのだろう。光留もそうだが、月夜は好きな相手には尽くすタイプだ。だから過保護にもなるし、妥協できる所は先に折れる。
(まあ、そのせいで好きな人を傷つけることにもなるんだけどな……)
それでも、あの時――前々世で死んだ時と同じ愛する人を失うか、自分の死か……と選択を迫られたら、光留もきっと、同じ選択をするだろう。
そして、きっとそれを後悔しない。
ふと窓の外を見るとまんまるの月が見えた。黄金ではなく、青銀の色をした月だ。
(月夜の魂の色に似てる……)
それもそうだ。“月夜”の名前の由来は、月が綺麗な夜に生まれたから。
光留は、その光を留める為に生まれた楔。
(本当に、そうなら良かったんだけどな……)
月夜にも光留にも、まだ忘れられない人がいる。
その人と出逢うまで、きっと2人で探し続ける。
これは、期限の決まった誰にも言えない恋だ――。
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