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プロローグ
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『この世界は獣人の世界なんじゃ。
獣人にとって人間はとても魅力的に見えるものなんじゃよ。
だからこそ隠しなさい。稀人にはその力があるという。
その力がこの世界で生きて行くための力になるじゃろうて。
それまではこの爺と一緒に暮らして、この世界を知っていくと良い。儂の孫としての』
俺は椎野 新(23) 会社員……だった。過去形の理由は、ある日仕事帰りに駅のホームで階段から足を踏み外してしまったんだ。ゴロゴロと階段から転がり落ちて、床に叩きつけられると思った時、急に光に包まれたんだ。
気づいた時にはそこは森の中。思わず「はぁ?」って叫んだんだよなぁ。俺、駅のホームにいたはずなのにって混乱していたんだ。あまりにも展開が思いもよらない物の時って、人は思考停止するんだなってその時わかったね。
すると、呆然と立ち尽くす俺の近くでガサガサと草を分ける音がしたんだ。流石に身構えたが、出てきたのは爺さんだった。
「……いい匂いがすると思ったら、お前さん人間かい?こりゃ驚いた!」
いい匂い?俺汗臭いと思うけど……って考えが頭をかすめたが、それよりも爺さんの姿に驚いたね。頭から耳が生えているんだぜ。しかも尻尾まである。あのふさふさ尻尾の模様はたぬきっぽいが……いやいや、そもそもここ何処だよ!ちゅーか、獣人ってゲームやネット小説の世界じゃあるまいし!
混乱していた俺は「は⁉︎……え⁉︎……なに?」って挙動不審になっていたんだ。しかも言葉がわかる事もこの時は理解してなかったよなぁ。そんな俺を見て、爺さんは「ふむ……これはもしや稀人という事じゃろうか?」と考え込んでから、俺の近くにきて肩をポンポン叩きまずは落ち着く様に促してくれたんだ。
「まぁ、ここじゃ落ち着かんじゃろう。どうじゃ?我が家に茶でも飲みにこんか?」
「は?でも俺……」
「うん、うん。大丈夫じゃて。儂1人暮らしじゃし、気を使う者はおらん。そうじゃ、儂はケイルと言う。お前さん名前は?」
「……アラタ」
「そうかい、アラタ。ここで会ったのも縁じゃ。お前さんまずはウチに来るがいい」
この時の俺を後から考えたら、かなり迂闊だったと思う。会ってすぐのよくわからない存在について行くなんてな。でもこの決定に関しては良かった。
ケイル爺さんの家は俺が現れた場所から、歩いて十分くらいのところにポツンとあったんだ。家に招かれた俺は、ケイル爺さんから色々な事を教えてもらった。そして冒頭の言葉を言ってくれたんだ。
俺は、日本でもここまで優しくしてもらった事はない。むしろ怪しい人物に自分から関わろうとするなんて事は日本人同士であっても一切ないだろう。それに、俺はただでさえ仕事に人間関係に疲れていた。
だからケイル爺さんの言葉で気が緩んだ。
言葉より先に目から涙が出てきたんだ。
爺さんは泣き止むまで俺の頭を優しく撫でてくれた。
これが、俺にとって異世界での身内が出来た瞬間だったんだよなぁ。
獣人にとって人間はとても魅力的に見えるものなんじゃよ。
だからこそ隠しなさい。稀人にはその力があるという。
その力がこの世界で生きて行くための力になるじゃろうて。
それまではこの爺と一緒に暮らして、この世界を知っていくと良い。儂の孫としての』
俺は椎野 新(23) 会社員……だった。過去形の理由は、ある日仕事帰りに駅のホームで階段から足を踏み外してしまったんだ。ゴロゴロと階段から転がり落ちて、床に叩きつけられると思った時、急に光に包まれたんだ。
気づいた時にはそこは森の中。思わず「はぁ?」って叫んだんだよなぁ。俺、駅のホームにいたはずなのにって混乱していたんだ。あまりにも展開が思いもよらない物の時って、人は思考停止するんだなってその時わかったね。
すると、呆然と立ち尽くす俺の近くでガサガサと草を分ける音がしたんだ。流石に身構えたが、出てきたのは爺さんだった。
「……いい匂いがすると思ったら、お前さん人間かい?こりゃ驚いた!」
いい匂い?俺汗臭いと思うけど……って考えが頭をかすめたが、それよりも爺さんの姿に驚いたね。頭から耳が生えているんだぜ。しかも尻尾まである。あのふさふさ尻尾の模様はたぬきっぽいが……いやいや、そもそもここ何処だよ!ちゅーか、獣人ってゲームやネット小説の世界じゃあるまいし!
混乱していた俺は「は⁉︎……え⁉︎……なに?」って挙動不審になっていたんだ。しかも言葉がわかる事もこの時は理解してなかったよなぁ。そんな俺を見て、爺さんは「ふむ……これはもしや稀人という事じゃろうか?」と考え込んでから、俺の近くにきて肩をポンポン叩きまずは落ち着く様に促してくれたんだ。
「まぁ、ここじゃ落ち着かんじゃろう。どうじゃ?我が家に茶でも飲みにこんか?」
「は?でも俺……」
「うん、うん。大丈夫じゃて。儂1人暮らしじゃし、気を使う者はおらん。そうじゃ、儂はケイルと言う。お前さん名前は?」
「……アラタ」
「そうかい、アラタ。ここで会ったのも縁じゃ。お前さんまずはウチに来るがいい」
この時の俺を後から考えたら、かなり迂闊だったと思う。会ってすぐのよくわからない存在について行くなんてな。でもこの決定に関しては良かった。
ケイル爺さんの家は俺が現れた場所から、歩いて十分くらいのところにポツンとあったんだ。家に招かれた俺は、ケイル爺さんから色々な事を教えてもらった。そして冒頭の言葉を言ってくれたんだ。
俺は、日本でもここまで優しくしてもらった事はない。むしろ怪しい人物に自分から関わろうとするなんて事は日本人同士であっても一切ないだろう。それに、俺はただでさえ仕事に人間関係に疲れていた。
だからケイル爺さんの言葉で気が緩んだ。
言葉より先に目から涙が出てきたんだ。
爺さんは泣き止むまで俺の頭を優しく撫でてくれた。
これが、俺にとって異世界での身内が出来た瞬間だったんだよなぁ。
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