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始まり~Fの呪縛~
③
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「無様な姿だな。明日は雪でも降るんじゃないか」
松田が直人の部屋に上がり込んだ頃、マンションの地下駐車場に停められた黒の四輪駆動車内に二人の男がいた。
「相手が彼じゃなかったら、こうはなっていない」
助手席で苦笑いを浮かべるのは、警視庁のトップ警視総監である草薙哲平。後部座席から話しかけているのは、ハナムラグループのトップにして、裏社会の組織ハナムラを仕切る花村謙三であった。
「ようやく、ここまできたか」
顔色も声色も変えることなく、花村は言った。
「そうだな。まさか松田が桜井君を頼るとは思わなかったが」
「あいつが、私を頼ると思うか?」
花村の問いかけを受け、草薙は昔を懐かしむように目を細めた。
「信用してると思うぜ。学生時代、キョウとおまえは何かと連んでいただろ」
それまでの口調とは異なり、草薙は松田をキョウと呼び、バックミラー越しに不敵に笑ってみせた。
「昔の話だ。今は文句ばかり言われている。特に、レイのことになると、あいつは人が変わるからな」
花村もまた、草薙と同じように口調が変わった。程なくして、二人は笑った。一時、まるで気の合う友人同士のような朗らかな空気が満ちたが、次の瞬間、二人は厳しい顔つきになった。
「やるぞ、草薙」
「そうだな、花村」
彼らは、確固たる信念を持ってこの時を待ち続けていた。そのことを知る者は、彼ら以外、誰もいない。
松田が直人の部屋に上がり込んだ頃、マンションの地下駐車場に停められた黒の四輪駆動車内に二人の男がいた。
「相手が彼じゃなかったら、こうはなっていない」
助手席で苦笑いを浮かべるのは、警視庁のトップ警視総監である草薙哲平。後部座席から話しかけているのは、ハナムラグループのトップにして、裏社会の組織ハナムラを仕切る花村謙三であった。
「ようやく、ここまできたか」
顔色も声色も変えることなく、花村は言った。
「そうだな。まさか松田が桜井君を頼るとは思わなかったが」
「あいつが、私を頼ると思うか?」
花村の問いかけを受け、草薙は昔を懐かしむように目を細めた。
「信用してると思うぜ。学生時代、キョウとおまえは何かと連んでいただろ」
それまでの口調とは異なり、草薙は松田をキョウと呼び、バックミラー越しに不敵に笑ってみせた。
「昔の話だ。今は文句ばかり言われている。特に、レイのことになると、あいつは人が変わるからな」
花村もまた、草薙と同じように口調が変わった。程なくして、二人は笑った。一時、まるで気の合う友人同士のような朗らかな空気が満ちたが、次の瞬間、二人は厳しい顔つきになった。
「やるぞ、草薙」
「そうだな、花村」
彼らは、確固たる信念を持ってこの時を待ち続けていた。そのことを知る者は、彼ら以外、誰もいない。
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