【完結】しろくまニアック!

佐橋 竜字

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【番外編】23.キタ――(゚∀゚)――!

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 ま、まさか。
 ニルエは本当はバルド様が大好きで、許婚がいるって分かってても関係を続けて。結婚できなくても、せめて愛しい人との子供が欲しい。だから、受胎の実を飲んでまで、手に入らない彼の代わりにぃ、彼の子供を宿してっ!
「・・・え? 何泣いてるんだよ兄さん!?」
「うぅ、いや・・・。そこまでバルド様の子供が欲しかったんだなって」
「・・・へ?」
「許婚さんがいるって知ってても、子供、欲しかったんでしょう?」
「違うよっ!? 孕ませられたんだよ!? 人が寝てる間に受胎の実を仕込みやがったんだあいつはぁ!」


「・・・えっ」


「お、おれは! その兄さんが見つかって、その、許婚さんとの色々問題や話が解決したら、正式に付き合うって・・・結婚前提のお付き合いをするって言っただけで!」
「・・・・・・」
 ジトっと、バルドさ・・・バルドを見つめた。
「なのに! 順序を変えてあのエロ熊野郎!!」
「・・・おまえ、やるなぁバルド、見直したぞ」
「だって、レディアン様が絶対にニルエを離すなってご命令があったんで。折角なら、確実にニルエをものにした証明が欲しいなって。相性良くて、ニルエがこんなに早く身籠ってくれるなんて、超嬉しい誤算でしたよ」
 はぁ~と、微笑みから一転。バルドの表情が不遜の笑みに変わる。
「これで家の問題が解決できそうですよ」
 家・・・? ヴィヴィ家も有名なお家元、なのだろうか。
「あぁ、おまえの家も大変だろうなぁ。まぁ、子供が出来たとなれば、もう手出しはさせまい。私が手を回すまでもないか」
「あぁいえ、念の為、バックについて貰えるとありがたいですよ~」
「うむ、いいだろう。いい働きだバルド、そうか、私もそうすれば良かったか」
「っ!? ???」
 悪寒を感じた。
「さ、ニルエ、帰ろう? お腹の子も心配だよ」
「・・・・・・」
 ニルエを見やった。
「ニルエ、君も熊人に好かれて、大変だったんだな」
「兄さん・・・」
「連絡先、交換しよう? レア様が熊人の取り扱い方法を教えてくださるし、相談に乗ってくれるから」
「・・・うん」
 連絡先を交換し、ニルエと握手した。
「大丈夫、また会えるから。レア様が熊人のツガイ被害者の会みたいなもの、開催しようかなって言ってるし、僕も含めて、第一回の開催を打診しておくから」
「うん、絶対にお願いするよ」
「ニールーエー?」
 バルドさ・・・バルドがグリグリと、頭部をニルエの背中に押し付ける、何とも可愛らしい仕草をした。
「んもぅ! 今いいとこなんだから! 少しは待ってよ!? 嫌いになるよ!?」
「やだっ!」
 へにょりと、勇敢なまぁるいお耳が伏せをする。
 ほほぅ。何だかんだ、主導権はニルエにあるようで、まだ大丈夫・・・そうかな?
「・・・・・・」
 こっちはというと、あはは、さっきから、レディアンの視線が背中に突き刺さって、こ、怖いんだが。
 ふわりとニルエに抱き締められた。
「兄さん、会えて本当に良かった」
「・・・僕もだ」
 まさか、会えるなんて・・・。
「ふふ、ようやく、泣いてるの?」
「・・・・・・うるしゃい」
 自分でも笑える。急に実感が沸いて来たのだから。
「だって、会えるなんて、思ってもみなかったし」
「うん」
「君には嫌われているだろうって思ってた。母さんは君にはきっと僕のことをいい風には伝えてなかっただろうし」
「・・・そうだね、そうだった」
 ぎゅっと、強く抱き締められた。
「でも、おれは自分の目で確かめたかったから。元より、いい母親だとは思って無かった、反面教師ってやつだよ」
「・・・そっか」
 僕も、僕よりも大きな背中を抱き締め、返せた。
「・・・探してくれてありがとうニルエ」
「・・・うん。おれの、大好きな兄さん」
 少し余韻に浸っていると。
「あっ」
「わっ」
 熊人に引き裂かれた。
「いつまで抱き合っているんだアーニャ」
「いつまで抱き合ってるんだよニルエちん」
 思わずニルエと苦笑を浮かべた。
「じゃぁまたねニルエ。また連絡する」
「うん、またね兄さん」
「黒ずきん氏、次はわしとコラボしよう」
「っ!? ほほほほ本当ですかっ!?」
 キ、キ、キ、キチャーッ!! アチャーッ!!
 何という、心臓が飛び出そうなくらい嬉しいオファーッ!
 バルドさ・・・さんはウインクして見せる。
「あぁ、仕事として、こちら側も君のようなストリーマーは利益に繋がる。ミルフィオリをクリアしたら、次のゲームを送ろう」
「ふぁいっ! ありがとうございますっ!」
「じゃぁ」
 結構ラブラブな二人の背中を眺める。
「アーニャ、よだれ、よだれが出てる」
「はっ、すいませんお見苦しい所を」
 よだれを拭って、二人を見送った。
 
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