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【番外編】22.真打ち登場
しおりを挟むありえない。
童貞=年齢の僕が、こんなしゅ、修羅場を経験してるなんてありえない。
「アーニャ」
「アーニャ」
優しく手を指し伸ばす二人。
「・・・・・・うぅ・・・」
逃げたい。
結婚とか、そういうのって、まずはお付き合いからじゃないの?
「・・・僕」
もう正直に今自分の気持ちを伝えよう。流されることが一番ダメだ。
「僕は! 今は! ゲームがしたいです!」
「「え」」
案の定、二人がポカンという顔をする。
「今の仕事が大好きだから! 色恋うつつをぬかしている場合じゃないんです! レン様とのゲーム実況が続きだし気になるし! なので!」
深く、それはもう深くお辞儀をした。
「ごめんなさい!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ぼむっとレディアンは人の姿に戻る。あぁ、少しだけ・・・もふりたかったなぁ。
「じゃぁ、分かった。その、ゲームとやらを通して、アーニャを口説けばいいのだな?」
「・・・・・・え?」
今、はっきり、僕、断った、よね?
「そうだね。おれもゲームしたことがないから、うん、いい勉強かも。・・・不本意だけど、そういう友達、いるし」
おや?
「え? ニルエ君、ゲーム友達、いるの?」
「ふふ、家族なんだから、呼び捨てにしてよ。いるんだよね本当に、不本意だけど。プロゲーマーのやつが・・・」
「ぷぷぷぷプロゲーマーっ!?」
丁度いいタイミングで、ニルエの携帯が鳴り響く。その携帯のディスプレイを見るなり、顔を引きつらせる。
「・・・噂をすれば、だ。・・・はい? え? 何処って? それは秘密だ。何でいちいちおまえに教えなければ・・・は?」
一体誰だろうか?
ふとニルエがレディアンを見た。
「レディアン様、貴方・・・」
レディアンは不遜の笑みを浮かべる。
「知っているぞニルエ。おまえには意中の雄がいることをな?」
「おっ?」
そうだよねぇ? こんな美青年、周りが放っておくわけにはいかないよねぇ?
「"彼"にここの居場所を教えた」
「っ!? 買収したんですかっ!?」
出たぁ・・・。金のなさる技・・・。
「アーニャ」
「はい?」
「彼は君の業界でも有名な存在らしいぞ」
「・・・え?」
ふと車がこちらに向かって来る音がした。カッコいいミッドナイトブルー色のスポーツカーが、邸宅の前に停車する。
車の中から出て来たのは、グレーのまぁるいお耳の、グリズリー種の熊人獣人だった。黒褐色の肌に、碧い瞳を宿した切れ長の目の、それはもうガタイのいい青年だった。
青年は、にかっと八重歯をアピールして歩み寄る。
「よーっ! ここにいたのかぁ! わしのニルエたん~」
ニルエ"たん"!?
「よく来てくれたバルド」
「いえいえ、お初にお目にかかりますレディアン様」
二人は熱い抱擁と握手を交わす。
「うちのニルエがご迷惑をおかけして」
「あぁ、問題ない。君がこうして来てくれたのだから」
「わっ」
グイッとレディアンに腰を抱かれた。
「この子が私のツガイになる予定の、アーニャ・クロエだ。バーチャルネームは黒ずきんという」
「っ!?」
ううえええっ!? 何で!? 何で言っちゃのばらしちゃうのっ!?
「そしてアーニャ。こちらがニルエのツガイ、プロゲーマーでありゲーム会社インペリアライズの社長、バルド・ヴィヴィ殿だ」
「っ!?」
バルド・ヴィヴィっ!?
「お、その顔。そりゃ知ってるよなぁ? わしのゲームを今、レア様と実況、してくれてるもんなぁ?」
「~っ!」
これぞ、声にならない声とはこのことだ!
「す、凄い! あの、あのバルド社長様っ!? ぼおぼぼぼぼ僕! ずっと貴方のゲーム解説動画や実況を見て、実況者になりたいって思ったんです!」
「あぁ、知ってる。君のアーカイブは全部見てたから。いやぁ、こんなに愛されてるとはなぁ・・・」
「君にじゃない、君のゲームスタンスに惚れているだけだ」
僕の目の前に。
「一緒ですよレディアン様~。嫉妬しない嫉妬しない」
僕の人生を決定づけたお方がいる。
「するに決まってるだろう!? ゲームに無知な私だって、アーニャが君のファンなのは動画を見ればすぐに分かったんだぞ!」
「あざーっす」
「ちょぉっと!」
ニルエが叫ぶ。
「一体何なんだっ!? 何であんたが来るんだバルドっ!」
「何でって。レディアン様に緊急呼び出しがあったから。それに私の会社のスポンサーだもん、来ないわけにはいかないもん」
「!?」
レディアンを見やると、パチリとウインクが返って来た。
「でもここはレディアン様の極秘の私有地なんだぞ!?」
「だから、忠誠を誓って、ニルエの手綱を握って、黒・・・じゃなかった、アーニャ様との恋路を邪魔しないようにだね」
ほほぅ・・・。これはこれは。
「ニルエ、バルド様とのツガイなの?」
「・・・・・・えっ」
おや、おやおやおやまぁ。綺麗なお顔が、真っ赤っか。
「ひひ」
嬉しそうに微笑むバルド様。
「ちがっ! まだ結婚したわけじゃないよ!?」
「何だ? 愛しの兄さんを見つけたら、わしと結婚する。だからわしも協力、したじゃんね」
「ふぐっ」
バルド様は自然に慣れたお手つきで、ニルエの腰を抱かれなさった。
「約束、したよねぇ?」
「っ!」
ニルエはキッと睨みフシャーッと牽制するも、バルド様には効果がないようだ。むしろ、耳が物凄く高速ピルピルしている。確か、レン様曰く、高速ピルピルは興奮状態にある、と。なるほど? 逆効果のようだ。
「それに、君のお腹の子はわしの子だし、責任を取るのが当たり前じゃんね」
な、何だとっ!? そ、そうなんだ、そ、そこまでの、か、関係、なんだ・・・。僕より年下なのに、そっか、凄い、なぁ・・・。
しかし、ニルエはバルド様を突き放し、僕の背後へ逃げる。
「子供が出来たからって、それを理由に結婚する必要はない! おまえには許婚がいる。その子はどうするんだ?」
えぇっ!? 何その展開っ!?
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