【完結】しろくまニアック!

佐橋 竜字

文字の大きさ
上 下
30 / 38

【番外編】22.真打ち登場

しおりを挟む
 
 ありえない。
 童貞=年齢の僕が、こんなしゅ、修羅場を経験してるなんてありえない。
「アーニャ」
「アーニャ」
 優しく手を指し伸ばす二人。
「・・・・・・うぅ・・・」
 逃げたい。
 結婚とか、そういうのって、まずはお付き合いからじゃないの?
「・・・僕」
 もう正直に今自分の気持ちを伝えよう。流されることが一番ダメだ。
「僕は! 今は! ゲームがしたいです!」
「「え」」
 案の定、二人がポカンという顔をする。
「今の仕事が大好きだから! 色恋うつつをぬかしている場合じゃないんです! レン様とのゲーム実況が続きだし気になるし! なので!」
 深く、それはもう深くお辞儀をした。
「ごめんなさい!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 ぼむっとレディアンは人の姿に戻る。あぁ、少しだけ・・・もふりたかったなぁ。
「じゃぁ、分かった。その、ゲームとやらを通して、アーニャを口説けばいいのだな?」


「・・・・・・え?」


 今、はっきり、僕、断った、よね?
「そうだね。おれもゲームしたことがないから、うん、いい勉強かも。・・・不本意だけど、そういう友達、いるし」
 おや?
「え? ニルエ君、ゲーム友達、いるの?」
「ふふ、家族なんだから、呼び捨てにしてよ。いるんだよね本当に、不本意だけど。プロゲーマーのやつが・・・」
「ぷぷぷぷプロゲーマーっ!?」
 丁度いいタイミングで、ニルエの携帯が鳴り響く。その携帯のディスプレイを見るなり、顔を引きつらせる。
「・・・噂をすれば、だ。・・・はい? え? 何処って? それは秘密だ。何でいちいちおまえに教えなければ・・・は?」
 一体誰だろうか?
 ふとニルエがレディアンを見た。
「レディアン様、貴方・・・」
 レディアンは不遜の笑みを浮かべる。
「知っているぞニルエ。おまえには意中の雄がいることをな?」
「おっ?」
 そうだよねぇ? こんな美青年、周りが放っておくわけにはいかないよねぇ?
「"彼"にここの居場所を教えた」
「っ!? 買収したんですかっ!?」
 出たぁ・・・。金のなさる技・・・。
「アーニャ」
「はい?」
「彼は君の業界でも有名な存在らしいぞ」
「・・・え?」
 ふと車がこちらに向かって来る音がした。カッコいいミッドナイトブルー色のスポーツカーが、邸宅の前に停車する。
 車の中から出て来たのは、グレーのまぁるいお耳の、グリズリー種の熊人獣人だった。黒褐色の肌に、碧い瞳を宿した切れ長の目の、それはもうガタイのいい青年だった。
 青年は、にかっと八重歯をアピールして歩み寄る。
「よーっ! ここにいたのかぁ! わしのニルエたん~」
 ニルエ"たん"!?
「よく来てくれたバルド」
「いえいえ、お初にお目にかかりますレディアン様」
 二人は熱い抱擁と握手を交わす。
「うちのニルエがご迷惑をおかけして」
「あぁ、問題ない。君がこうして来てくれたのだから」
「わっ」
 グイッとレディアンに腰を抱かれた。
「この子が私のツガイになる予定の、アーニャ・クロエだ。バーチャルネームは黒ずきんという」
「っ!?」
 ううえええっ!? 何で!? 何で言っちゃのばらしちゃうのっ!?
「そしてアーニャ。こちらがニルエのツガイ、プロゲーマーでありゲーム会社インペリアライズの社長、バルド・ヴィヴィ殿だ」
「っ!?」
 バルド・ヴィヴィっ!?
「お、その顔。そりゃ知ってるよなぁ? わしのゲームを今、レア様と実況、してくれてるもんなぁ?」
「~っ!」
 これぞ、声にならない声とはこのことだ!
「す、凄い! あの、あのバルド社長様っ!? ぼおぼぼぼぼ僕! ずっと貴方のゲーム解説動画や実況を見て、実況者になりたいって思ったんです!」
「あぁ、知ってる。君のアーカイブは全部見てたから。いやぁ、こんなに愛されてるとはなぁ・・・」
「君にじゃない、君のゲームスタンスに惚れているだけだ」
 僕の目の前に。
「一緒ですよレディアン様~。嫉妬しない嫉妬しない」
 僕の人生を決定づけたお方がいる。
「するに決まってるだろう!? ゲームに無知な私だって、アーニャが君のファンなのは動画を見ればすぐに分かったんだぞ!」
「あざーっす」


「ちょぉっと!」


 ニルエが叫ぶ。
「一体何なんだっ!? 何であんたが来るんだバルドっ!」
「何でって。レディアン様に緊急呼び出しがあったから。それに私の会社のスポンサーだもん、来ないわけにはいかないもん」
「!?」
 レディアンを見やると、パチリとウインクが返って来た。
「でもここはレディアン様の極秘の私有地なんだぞ!?」
「だから、忠誠を誓って、ニルエの手綱を握って、黒・・・じゃなかった、アーニャ様との恋路を邪魔しないようにだね」
 ほほぅ・・・。これはこれは。
「ニルエ、バルド様とのツガイなの?」
「・・・・・・えっ」
 おや、おやおやおやまぁ。綺麗なお顔が、真っ赤っか。
「ひひ」
 嬉しそうに微笑むバルド様。
「ちがっ! まだ結婚したわけじゃないよ!?」
「何だ? 愛しの兄さんを見つけたら、わしと結婚する。だからわしも協力、したじゃんね」
「ふぐっ」
 バルド様は自然に慣れたお手つきで、ニルエの腰を抱かれなさった。
「約束、したよねぇ?」
「っ!」
 ニルエはキッと睨みフシャーッと牽制するも、バルド様には効果がないようだ。むしろ、耳が物凄く高速ピルピルしている。確か、レン様曰く、高速ピルピルは興奮状態にある、と。なるほど? 逆効果のようだ。
「それに、君のお腹の子はわしの子だし、責任を取るのが当たり前じゃんね」
 な、何だとっ!? そ、そうなんだ、そ、そこまでの、か、関係、なんだ・・・。僕より年下なのに、そっか、凄い、なぁ・・・。
 しかし、ニルエはバルド様を突き放し、僕の背後へ逃げる。
「子供が出来たからって、それを理由に結婚する必要はない! おまえには許婚がいる。その子はどうするんだ?」
 えぇっ!? 何その展開っ!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...