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第4幕・ARE(アレ)の章〜②〜
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8月11日(金)
翌週も、我がチームの好調は続いていた。
週明け火曜日からの東京ドームでのジャイアンツ戦に3連勝。2日前のカープ戦を大勝し、好調なジャイアンツの打線を相手に、接戦の展開が続いたが、いずれも終盤に相手を振り切る勝負強さが感じられた。
優勝争いをするシーズンのこの時期の東京ドームのジャイアンツ戦は、投手が踏ん張りきれずに3連敗を喫することも多かったので、ここで、3位に浮上していた相手をスイープし、再びBクラスに落とすことができたのは非常に大きい。
(たぶん、僕だけじゃないと思うけど、シーズン終盤でジャイアンツと優勝を争うのは避けたいところだ)
ジャイアンツとの三連戦を終えたあと、チームは関西に戻り、京セラドームでスワローズを迎え撃つ。
今シーズンは、5位と昨年まで二連覇した強さが、嘘のように低迷しているスワローズだが、この日まで4連勝と調子を上げつつあり、僕の見立てでは、この時期のセ・リーグで、最も手強い相手ではないかと感じている。
特に、一軍に復帰したばかりの塩見泰隆は、足も早くて長打力もあり、非常に厄介な打者だ。
他チームのファンとしての見解だけど、今シーズンのスワローズ低迷の原因は、若き三冠王の村神様こと村上宗隆の不振やチームを支えてきた山田哲人のケガ以上に、塩見が不在だったことが大きいのではないかと思う。
阪神ファンとしては、それくらい警戒している選手が復帰してきているだけに、ここまで連勝が続いていても、
「そろそろ負けるんじゃないか……?」
「最悪の場合、好調なスワローズには、三タテを食らうんじゃないか?」
という懸念があった。
そして、祝日でもあるこの日、僕には、もうひとつ気がかりなことがあった。
今日は、奈緒美さんが担当している音楽フェスが開催される当日でもある。
「イベントが、なにも問題なく終わってくれたら、良いんだけど……」
と、関係者ならずとも願わずにはいられない。
公式ホームページなどを検索すると、イベントの時程は、
開場 午前11:00
開宴 午後 1:00
となっているが、終了する時間については、ネット上で調べた限り、正式に記載されているものはなかった。
(仕事中にメッセージを送るのは迷惑になるだろうし、LINEをするのは、夜にしておくか……)
僕は、そう考えて、試合とライブフェスが終了する夜を待つことにした。
※
==============
イベント終了お疲れさまです
異国情緒(?)あふれるお店を
見つけることができました!
フェス準備のお話も聞きたい
と思っているので・・・
奈緒美さんの都合の良い日を
教えてもらえませんか?
==============
サンテレビの中継で試合が終了したことを確認すると、僕は奈緒美さんへのメッセージとともに、グランフロント大阪に移転したばかりだという店舗のリンクアドレスを送信した。
時刻は、午後9時半を過ぎた頃だ。
今日は、イベントが終わったばかりで、忙しいかも知れないので、すぐに返信は来ないだろう、と気長に返事を待つことにする。
試合後のヒーローインタビューを観ながら、終盤のピンチが連続する試合展開を思いだし、
「よく、この展開で凌ぎきったな……」
と、投手陣の奮闘に感謝する。
好調な5月の戦いの中でも、スワローズ戦との接戦を糸原の決勝打で勝ちきったという記憶があるが、これが、今年の阪神の勝ちパターンと言えるのかも知れない。
ただ、懸念したとおり、やはり、塩見泰隆は、スワローズのキーマンと言えそうだ。
この日の試合でも、同点ホームランを放つなど活躍が目立っていたので、終盤のチャンスで、彼に打席が回らなかったのは、幸運だった。
今年、我がチームが、快調に首位をキープし続けている理由は、リーグ連覇を果たしたスワローズの失速が一番の大きな要因だと、僕は考えている。
スワローズは、シーズンごとの好不調が極端なチームのようで、今シーズンの成績は芳しくないが、やはり、手強いチームであることは間違いない。
高校生の頃にも、スワローズと優勝争いをしたことがあったと記憶している(たしか、2015年のシーズンだったか?)し、また、ゲーム差ナシで優勝を逃した2年前の経験からも、今年、このチームと優勝争いをするのではなくて、本当に良かった、と安堵する。
奈緒美さんからメッセージの返信があったのは、サンテレビボックス席の中継が終わりに差し掛かり、ファンの間で、『かっこいいエンディング』と呼ばれる番組のエンドクレジットが流れている時だった。
【本日の試合結果】
阪神 対 ヤクルト 17回戦 阪神 2ー1 ヤクルト
タイガースは初回に大山悠輔のタイムリーで幸先よく先制する。
その後、4回表に塩見泰隆のホームランで同点とされるも、7回表と8回表の二度の満塁のピンチを無失点で切り抜けると、8回裏に一死一塁から、代打の糸原健斗が右中間を破るタイムリー・ツーベースを放って勝ち越しに成功。
最後は、守護神・岩崎優が無失点で切り抜けて8連勝。2位カープとのゲーム差を6に広げた。
◎8月11日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:58勝36敗 4引き分け 貯金22
順位:首位(2位と6ゲーム差)
翌週も、我がチームの好調は続いていた。
週明け火曜日からの東京ドームでのジャイアンツ戦に3連勝。2日前のカープ戦を大勝し、好調なジャイアンツの打線を相手に、接戦の展開が続いたが、いずれも終盤に相手を振り切る勝負強さが感じられた。
優勝争いをするシーズンのこの時期の東京ドームのジャイアンツ戦は、投手が踏ん張りきれずに3連敗を喫することも多かったので、ここで、3位に浮上していた相手をスイープし、再びBクラスに落とすことができたのは非常に大きい。
(たぶん、僕だけじゃないと思うけど、シーズン終盤でジャイアンツと優勝を争うのは避けたいところだ)
ジャイアンツとの三連戦を終えたあと、チームは関西に戻り、京セラドームでスワローズを迎え撃つ。
今シーズンは、5位と昨年まで二連覇した強さが、嘘のように低迷しているスワローズだが、この日まで4連勝と調子を上げつつあり、僕の見立てでは、この時期のセ・リーグで、最も手強い相手ではないかと感じている。
特に、一軍に復帰したばかりの塩見泰隆は、足も早くて長打力もあり、非常に厄介な打者だ。
他チームのファンとしての見解だけど、今シーズンのスワローズ低迷の原因は、若き三冠王の村神様こと村上宗隆の不振やチームを支えてきた山田哲人のケガ以上に、塩見が不在だったことが大きいのではないかと思う。
阪神ファンとしては、それくらい警戒している選手が復帰してきているだけに、ここまで連勝が続いていても、
「そろそろ負けるんじゃないか……?」
「最悪の場合、好調なスワローズには、三タテを食らうんじゃないか?」
という懸念があった。
そして、祝日でもあるこの日、僕には、もうひとつ気がかりなことがあった。
今日は、奈緒美さんが担当している音楽フェスが開催される当日でもある。
「イベントが、なにも問題なく終わってくれたら、良いんだけど……」
と、関係者ならずとも願わずにはいられない。
公式ホームページなどを検索すると、イベントの時程は、
開場 午前11:00
開宴 午後 1:00
となっているが、終了する時間については、ネット上で調べた限り、正式に記載されているものはなかった。
(仕事中にメッセージを送るのは迷惑になるだろうし、LINEをするのは、夜にしておくか……)
僕は、そう考えて、試合とライブフェスが終了する夜を待つことにした。
※
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イベント終了お疲れさまです
異国情緒(?)あふれるお店を
見つけることができました!
フェス準備のお話も聞きたい
と思っているので・・・
奈緒美さんの都合の良い日を
教えてもらえませんか?
==============
サンテレビの中継で試合が終了したことを確認すると、僕は奈緒美さんへのメッセージとともに、グランフロント大阪に移転したばかりだという店舗のリンクアドレスを送信した。
時刻は、午後9時半を過ぎた頃だ。
今日は、イベントが終わったばかりで、忙しいかも知れないので、すぐに返信は来ないだろう、と気長に返事を待つことにする。
試合後のヒーローインタビューを観ながら、終盤のピンチが連続する試合展開を思いだし、
「よく、この展開で凌ぎきったな……」
と、投手陣の奮闘に感謝する。
好調な5月の戦いの中でも、スワローズ戦との接戦を糸原の決勝打で勝ちきったという記憶があるが、これが、今年の阪神の勝ちパターンと言えるのかも知れない。
ただ、懸念したとおり、やはり、塩見泰隆は、スワローズのキーマンと言えそうだ。
この日の試合でも、同点ホームランを放つなど活躍が目立っていたので、終盤のチャンスで、彼に打席が回らなかったのは、幸運だった。
今年、我がチームが、快調に首位をキープし続けている理由は、リーグ連覇を果たしたスワローズの失速が一番の大きな要因だと、僕は考えている。
スワローズは、シーズンごとの好不調が極端なチームのようで、今シーズンの成績は芳しくないが、やはり、手強いチームであることは間違いない。
高校生の頃にも、スワローズと優勝争いをしたことがあったと記憶している(たしか、2015年のシーズンだったか?)し、また、ゲーム差ナシで優勝を逃した2年前の経験からも、今年、このチームと優勝争いをするのではなくて、本当に良かった、と安堵する。
奈緒美さんからメッセージの返信があったのは、サンテレビボックス席の中継が終わりに差し掛かり、ファンの間で、『かっこいいエンディング』と呼ばれる番組のエンドクレジットが流れている時だった。
【本日の試合結果】
阪神 対 ヤクルト 17回戦 阪神 2ー1 ヤクルト
タイガースは初回に大山悠輔のタイムリーで幸先よく先制する。
その後、4回表に塩見泰隆のホームランで同点とされるも、7回表と8回表の二度の満塁のピンチを無失点で切り抜けると、8回裏に一死一塁から、代打の糸原健斗が右中間を破るタイムリー・ツーベースを放って勝ち越しに成功。
最後は、守護神・岩崎優が無失点で切り抜けて8連勝。2位カープとのゲーム差を6に広げた。
◎8月11日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:58勝36敗 4引き分け 貯金22
順位:首位(2位と6ゲーム差)
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