322 / 454
第四部
第4章〜愛は目で見るものではなく、心で見るもの〜⑤
しおりを挟む
俊敏な動きでゴール下に飛び込んで行った林先輩は、そのまま速攻でパスを受け取るのかと想いきや、フェイントを仕掛けて、ゴールから左斜め45度のあたりに走り込んで静止する。その瞬間、その場所にピンポイントのような山吹からのパスが通る。
山吹は、パスを出した瞬間、アークの外側のラインを縫うようにゴールから見て右の角度に走り出す。
マークを外した林先輩だが、瞬時に政宗と二又がパスコースを切るべく、ディフェンスに回る。
「キャプテン!」
アークの外からボールを要求するように手を挙げる山吹だが、シュートの精度が増してきた彼女には、しっかりと永井がマークについていた。
(先輩の位置からじゃ、山吹にパスは通らない……)
そう思った瞬間、ボールを軽く弾ませた林先輩は、身体を寄せてきた二又を左腕でガードしながら、二人の男子選手の間を抜くように、素早くゴール下へとボールを送る。
そこには、高身長に似つかわしくない巧みな動きで、政宗と二又のマークを外していた吉井が、フリーの状態で待ち構えていた。
「あっ!」
と、オレたちが声をあげる間に、男子プレーヤーは、流れるような動きで、難なくボールをリングに沈める。
これまで、アウトサイドからのシュートに偏っていた得点パターンの裏をかくプレーに、呆然とする相手チームの三人。
3x3のルールに則り、チェックボールが行われるたびに、オフェンス時は攻撃の連携に長ける林先輩、ディフェンス時は相手に体格負けしない渡辺先輩がゲームに参加するようだ。
オフェンス側の見事な連携プレーに対して、自分達のチームを応援するオレと緑川だけでなく、コートの周りに集まってきた周囲のギャラリーからも、拍手と声援が沸き起こった。
「練習後に、お遊びで男女混合のハーフコートをやってた甲斐があったな」
渡辺先輩が、自分たちのチームの連携が見事に決まったことを誇るように微笑む。
「さあ、ディフェンス集中!」
10対15と追い上げムードが出来あがったことに、オレたちのテンションもあがったのだが……。
さすがに経験者だけあり、相手チームも市高バスケ部の動きに慣れてきたのか、その後は、一進一退の攻防が続いた。
インサイドのパワープレーで、着実にポイントを重ねる相手に対して、こちらは、長短のシュートを織り交ぜたオフェンスで少しづつ点差を詰めていく。
12対16――――――。
14対17――――――。
16対18――――――。
17対19――――――。
見ているだけでも、手に汗を握るような白熱する攻防とスコアの動きに比例して、ギャラリーも増えてきた。
そして、両チームの得点は19対20と、試合の最後の局面に入る。
だが、オレたちのチームには分が悪いことに、相手チームのオフェンスで試合再開だ。
ディフェンス側から相手にボールを送るチェックボールを受け取った政宗たちは、最後のプレーに賭けるかのように、三人全員でのパワープレーに出るようだ。
相手に当たり負けしない吉井と渡辺キャプテンの二人はともかく、女子の山吹がいる、こちらのチームには明らかに不利な局面だ。それでも、ゴール下のプレーに参加しようとする山吹に、渡辺キャプテンと林キャプテンの声が重なる。
「あかり、外!」
その言葉に従い、ゴール下の攻防を男子選手二人に託すことにした山吹は、アークの外に駆け出す。
ゴール下の人数において、三対二という数的優位の局面を作り出した相手は、たっぷりと時間を掛けて、ボールを回す。ボールを保持してから12秒以内にシュートしなければならない、というショット・クロックのルールが無いことを最大限に活かしているようだ。
ボールをスティールしに行きたくなるだろう気持ちを抑えながら、アークの外で最適なポジションを探し続ける山吹にチラリと視線を向けた政宗が、ついにドリブルを仕掛けた。そのプレーをアシストするように、永井と二又が、渡辺先輩と吉井のディフェンスを阻むようにスクリーンを行う。
チームメイトのスクリーンが十分に機能しているという感覚があったのだろう。政宗は、強引にゴール下に切り込み、そのまま、シュート体勢に入る。
流れるような動作で、ドリブルのあとに放たれたジャンプシュートのボールは、リングの縁にあたり――――――。
ゴールの外側へと落下する。
リバウンドに素早く反応したのは、コート内で最も高身長な男・吉井裕貴だった。
ボールを奪取した吉井は、そのまま渡辺先輩にパスを送り、男子バスケ部のキャプテンは、素早い動きでグラウンダーパスをアークの外で待ち構える女子に供給する。
ジャンプシュートを外したショックを振り切るように、政宗は、山吹に対するディフェンスを試みる。
シュート体勢に入った女子選手に覆いかぶさるように身体を寄せるディフェンスに対し、山吹は、シュートフェイントで相手をヒラリとかわしたあと、アークの外から美しいフォームで、リングに向かってボールをショットした。
優美な軌道を描いたボールは、音を立てることなくリングに吸い込まれる。
その瞬間を言葉もなく見守るしかなかったオレと緑川は、ボールが地上に落下すると同時に、右手でバチンと思い切りタッチを交わした。
山吹は、パスを出した瞬間、アークの外側のラインを縫うようにゴールから見て右の角度に走り出す。
マークを外した林先輩だが、瞬時に政宗と二又がパスコースを切るべく、ディフェンスに回る。
「キャプテン!」
アークの外からボールを要求するように手を挙げる山吹だが、シュートの精度が増してきた彼女には、しっかりと永井がマークについていた。
(先輩の位置からじゃ、山吹にパスは通らない……)
そう思った瞬間、ボールを軽く弾ませた林先輩は、身体を寄せてきた二又を左腕でガードしながら、二人の男子選手の間を抜くように、素早くゴール下へとボールを送る。
そこには、高身長に似つかわしくない巧みな動きで、政宗と二又のマークを外していた吉井が、フリーの状態で待ち構えていた。
「あっ!」
と、オレたちが声をあげる間に、男子プレーヤーは、流れるような動きで、難なくボールをリングに沈める。
これまで、アウトサイドからのシュートに偏っていた得点パターンの裏をかくプレーに、呆然とする相手チームの三人。
3x3のルールに則り、チェックボールが行われるたびに、オフェンス時は攻撃の連携に長ける林先輩、ディフェンス時は相手に体格負けしない渡辺先輩がゲームに参加するようだ。
オフェンス側の見事な連携プレーに対して、自分達のチームを応援するオレと緑川だけでなく、コートの周りに集まってきた周囲のギャラリーからも、拍手と声援が沸き起こった。
「練習後に、お遊びで男女混合のハーフコートをやってた甲斐があったな」
渡辺先輩が、自分たちのチームの連携が見事に決まったことを誇るように微笑む。
「さあ、ディフェンス集中!」
10対15と追い上げムードが出来あがったことに、オレたちのテンションもあがったのだが……。
さすがに経験者だけあり、相手チームも市高バスケ部の動きに慣れてきたのか、その後は、一進一退の攻防が続いた。
インサイドのパワープレーで、着実にポイントを重ねる相手に対して、こちらは、長短のシュートを織り交ぜたオフェンスで少しづつ点差を詰めていく。
12対16――――――。
14対17――――――。
16対18――――――。
17対19――――――。
見ているだけでも、手に汗を握るような白熱する攻防とスコアの動きに比例して、ギャラリーも増えてきた。
そして、両チームの得点は19対20と、試合の最後の局面に入る。
だが、オレたちのチームには分が悪いことに、相手チームのオフェンスで試合再開だ。
ディフェンス側から相手にボールを送るチェックボールを受け取った政宗たちは、最後のプレーに賭けるかのように、三人全員でのパワープレーに出るようだ。
相手に当たり負けしない吉井と渡辺キャプテンの二人はともかく、女子の山吹がいる、こちらのチームには明らかに不利な局面だ。それでも、ゴール下のプレーに参加しようとする山吹に、渡辺キャプテンと林キャプテンの声が重なる。
「あかり、外!」
その言葉に従い、ゴール下の攻防を男子選手二人に託すことにした山吹は、アークの外に駆け出す。
ゴール下の人数において、三対二という数的優位の局面を作り出した相手は、たっぷりと時間を掛けて、ボールを回す。ボールを保持してから12秒以内にシュートしなければならない、というショット・クロックのルールが無いことを最大限に活かしているようだ。
ボールをスティールしに行きたくなるだろう気持ちを抑えながら、アークの外で最適なポジションを探し続ける山吹にチラリと視線を向けた政宗が、ついにドリブルを仕掛けた。そのプレーをアシストするように、永井と二又が、渡辺先輩と吉井のディフェンスを阻むようにスクリーンを行う。
チームメイトのスクリーンが十分に機能しているという感覚があったのだろう。政宗は、強引にゴール下に切り込み、そのまま、シュート体勢に入る。
流れるような動作で、ドリブルのあとに放たれたジャンプシュートのボールは、リングの縁にあたり――――――。
ゴールの外側へと落下する。
リバウンドに素早く反応したのは、コート内で最も高身長な男・吉井裕貴だった。
ボールを奪取した吉井は、そのまま渡辺先輩にパスを送り、男子バスケ部のキャプテンは、素早い動きでグラウンダーパスをアークの外で待ち構える女子に供給する。
ジャンプシュートを外したショックを振り切るように、政宗は、山吹に対するディフェンスを試みる。
シュート体勢に入った女子選手に覆いかぶさるように身体を寄せるディフェンスに対し、山吹は、シュートフェイントで相手をヒラリとかわしたあと、アークの外から美しいフォームで、リングに向かってボールをショットした。
優美な軌道を描いたボールは、音を立てることなくリングに吸い込まれる。
その瞬間を言葉もなく見守るしかなかったオレと緑川は、ボールが地上に落下すると同時に、右手でバチンと思い切りタッチを交わした。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる