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第三部
第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜⑨
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冒頭と同じように、クラブ紹介の映像が終了したあとに画面が切り替わり、ふたたび、竜司と芦宮サクラが掛け合いを演じると、彼らはプレゼンテーションを終えた。
中学校時代に、二年近くに渡って校内放送のコンビを組んでいただけあって、全校生徒を前にしても、友人と佐倉さん……もとい、芦宮サクラの会話の応酬は、結成歴の長い漫才コンビのような安定感を見せていた。
白草さんたちの時ほどではないにしても、二十団体を取材対象にしていただけに、自分たちのクラブが紹介された、全校の三割近い生徒からは、大きな拍手が起こっていた。
「一月たらずの期間で、良くここまで準備ができたね」
ステージを降りて、佐倉さんとともに待機列に戻った竜司に、一言だけ声をかけると、
「今回は、壮馬なみのハードワークをこなしたからな……なんとか、提出期限ギリギリで間に合って良かったよ」
親友は、ひと仕事をやり終えた充実感を漂わせる表情で応える。
ボクらのそんなようすを白草さんは、黙って見つめていて、あごに手をあてながら、なにかを考えているようすだった。
一方の佐倉さんは、竜司と同じような達成感を得たような表情から一転して、今回のパートナーと白草さんの表情を交互にうかがっている。
そして、ボクが、親友と
(楽しませてもらったよ……)
(あぁ……お前たちの作品も楽しみにしてるぞ)
と、視線を交わしながら、無言の会話を終えると、ステージ上から、生徒会長の声が聞こえてきた。
「まさか、学校からVtuberのキャラクターが出てくるなんてね~。ホント、時代は変わったな~。このまま行けば、芦宮サクラが、学校の公式キャラクターになる日が近いかも? それじゃあ、最後のグループをご紹介しましよう! 『第1回PR動画コンテスト』のトリを務めるのは、二年生の黄瀬くんと文芸部のメンバーです!」
寿先輩のアナウンスにうながされて、ボクが先頭に立って、天竹さんたち文芸部のみんなと一緒に舞台に登壇する。
ステージ上から、大講堂の観覧席に視線を向けると、あらためて、そこに居る生徒の人数の多さに圧倒され、思わず怯みそうになってしまう。
一○○○名に近い数の視線が自分たちに集中していることを意識してしまうと、足が震え始めていることに気づく。
考えてみれば、これまでの広報部の活動でボクがこうした舞台に立つことは少なく、鳳花部長や竜司や佐倉さんに任せっぱなしにしていた。
そのツケが回ってきたというわけではないだろうけど、今さらになって襲ってくる緊張を悟られないようにしながら、生徒会長の言葉に応じる。
「黄瀬くんたちのグループも、たくさんのクラブを取材してたと思うんだけど、大変じゃなかった?」
「スケジュールの調整は、少し大変でしたが……どのクラブも、あたたかく迎え入れてくれたので……」
ボクが、なんとかそれだけ答えると、天竹さんの隣に立っていた今村さんが、割って入る。
「特に、吹奏楽部のみなさんには、お世話になりました。この場を借りて、あらためて御礼をさせていただきます。その節は、ありがとうございました」
「これはこれは、ご丁寧に……こちらこそ、休日に、私たちの演奏会まで撮影してもらって、本当にありがとう」
文芸部員の言葉に応じた吹奏楽部の副部長でもある寿生徒会長が、うやうやしくお辞儀をすると、そのコミカルな仕草に観覧席からは、笑い声が漏れた。
「――――――と、立場上、特定のグループを贔屓するわけにはいかないんだけど……私も、黄瀬くんや文芸部のみんなとは、今回の活動でたくさん話しをさせてもらったからね~。どんな映像ができているのか、楽しみにしてるよ!」
司会の立場に戻って語る生徒会長の言葉に、今度は天竹さんが反応した。
「はい……私たちは、白草さんのようにスゴいパフォーマンスや、黒田くんたちのように目新しいことが出来るわけでないのですが……取材させてもらったクラブのみなさんの想いを映像を通じて届けたい、という気持ちは負けていないつもりです。いま、クラブ活動に熱中している人も、クラブに所属していない人も、他のクラブの人たちが、どんな想いで活動に取り組んでいるのか、興味を持ってもらえるとうれしいです」
普段は、口数が多い方ではない文芸部の部長は、観覧席の生徒たちをまっすぐ見据えながら、しっかりとした口調で、そう語った。
天竹さんと接する機会は、今回の企画が始まるまで、それほど多くはなかったので確信を持って言えるわけではないけど、少なくとも、ボクがこれまでイメージしていた控えめな性格の文系女子という印象が、ガラリと変わるほど落ち着いて、堂々とした語り口だ。
彼女の言葉からは、白草さんや竜司たちのプレゼンを目の当たりにしても揺るがない信念のようなものが感じられ、自分たちの活動と制作した作品に自信を持っていることが伝わってくる。
そうだ――――――。
ボクや文芸部のみんなも、自分たちのやり方で、取材したクラブの魅力や部活に賭ける想いを伝えようとしていることに違いはない。
その気持ちだけは、白草さんや竜司たちにも負けていないハズだ。
そう考え直して、ボクは自分たちの作品を紹介する。
「ボクたちの作品には、取材に協力してくれたクラブの人たちの想いが、たくさんつまっています。それでは、御覧ください。タイトルは、『Bring back Youth』!」
中学校時代に、二年近くに渡って校内放送のコンビを組んでいただけあって、全校生徒を前にしても、友人と佐倉さん……もとい、芦宮サクラの会話の応酬は、結成歴の長い漫才コンビのような安定感を見せていた。
白草さんたちの時ほどではないにしても、二十団体を取材対象にしていただけに、自分たちのクラブが紹介された、全校の三割近い生徒からは、大きな拍手が起こっていた。
「一月たらずの期間で、良くここまで準備ができたね」
ステージを降りて、佐倉さんとともに待機列に戻った竜司に、一言だけ声をかけると、
「今回は、壮馬なみのハードワークをこなしたからな……なんとか、提出期限ギリギリで間に合って良かったよ」
親友は、ひと仕事をやり終えた充実感を漂わせる表情で応える。
ボクらのそんなようすを白草さんは、黙って見つめていて、あごに手をあてながら、なにかを考えているようすだった。
一方の佐倉さんは、竜司と同じような達成感を得たような表情から一転して、今回のパートナーと白草さんの表情を交互にうかがっている。
そして、ボクが、親友と
(楽しませてもらったよ……)
(あぁ……お前たちの作品も楽しみにしてるぞ)
と、視線を交わしながら、無言の会話を終えると、ステージ上から、生徒会長の声が聞こえてきた。
「まさか、学校からVtuberのキャラクターが出てくるなんてね~。ホント、時代は変わったな~。このまま行けば、芦宮サクラが、学校の公式キャラクターになる日が近いかも? それじゃあ、最後のグループをご紹介しましよう! 『第1回PR動画コンテスト』のトリを務めるのは、二年生の黄瀬くんと文芸部のメンバーです!」
寿先輩のアナウンスにうながされて、ボクが先頭に立って、天竹さんたち文芸部のみんなと一緒に舞台に登壇する。
ステージ上から、大講堂の観覧席に視線を向けると、あらためて、そこに居る生徒の人数の多さに圧倒され、思わず怯みそうになってしまう。
一○○○名に近い数の視線が自分たちに集中していることを意識してしまうと、足が震え始めていることに気づく。
考えてみれば、これまでの広報部の活動でボクがこうした舞台に立つことは少なく、鳳花部長や竜司や佐倉さんに任せっぱなしにしていた。
そのツケが回ってきたというわけではないだろうけど、今さらになって襲ってくる緊張を悟られないようにしながら、生徒会長の言葉に応じる。
「黄瀬くんたちのグループも、たくさんのクラブを取材してたと思うんだけど、大変じゃなかった?」
「スケジュールの調整は、少し大変でしたが……どのクラブも、あたたかく迎え入れてくれたので……」
ボクが、なんとかそれだけ答えると、天竹さんの隣に立っていた今村さんが、割って入る。
「特に、吹奏楽部のみなさんには、お世話になりました。この場を借りて、あらためて御礼をさせていただきます。その節は、ありがとうございました」
「これはこれは、ご丁寧に……こちらこそ、休日に、私たちの演奏会まで撮影してもらって、本当にありがとう」
文芸部員の言葉に応じた吹奏楽部の副部長でもある寿生徒会長が、うやうやしくお辞儀をすると、そのコミカルな仕草に観覧席からは、笑い声が漏れた。
「――――――と、立場上、特定のグループを贔屓するわけにはいかないんだけど……私も、黄瀬くんや文芸部のみんなとは、今回の活動でたくさん話しをさせてもらったからね~。どんな映像ができているのか、楽しみにしてるよ!」
司会の立場に戻って語る生徒会長の言葉に、今度は天竹さんが反応した。
「はい……私たちは、白草さんのようにスゴいパフォーマンスや、黒田くんたちのように目新しいことが出来るわけでないのですが……取材させてもらったクラブのみなさんの想いを映像を通じて届けたい、という気持ちは負けていないつもりです。いま、クラブ活動に熱中している人も、クラブに所属していない人も、他のクラブの人たちが、どんな想いで活動に取り組んでいるのか、興味を持ってもらえるとうれしいです」
普段は、口数が多い方ではない文芸部の部長は、観覧席の生徒たちをまっすぐ見据えながら、しっかりとした口調で、そう語った。
天竹さんと接する機会は、今回の企画が始まるまで、それほど多くはなかったので確信を持って言えるわけではないけど、少なくとも、ボクがこれまでイメージしていた控えめな性格の文系女子という印象が、ガラリと変わるほど落ち着いて、堂々とした語り口だ。
彼女の言葉からは、白草さんや竜司たちのプレゼンを目の当たりにしても揺るがない信念のようなものが感じられ、自分たちの活動と制作した作品に自信を持っていることが伝わってくる。
そうだ――――――。
ボクや文芸部のみんなも、自分たちのやり方で、取材したクラブの魅力や部活に賭ける想いを伝えようとしていることに違いはない。
その気持ちだけは、白草さんや竜司たちにも負けていないハズだ。
そう考え直して、ボクは自分たちの作品を紹介する。
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