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第三部
第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜⑩
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作品のタイトルをコールすると、場内から拍手と歓声が起こった。
おそらく、ボクたちが取材を行った吹奏楽部やバドミントン部が中心になっていたのだとは思うけど、白草さんや竜司たちのプレゼンを目にして自信を失いかけていたボク自身にとって、それは、とても勇気づけられるモノだった。
すでにプレゼンを終えた二組と違って、映像を制作しただけのボクたちは、ステージ上に残っておく必要はないので、文芸部のメンバーとともに、いったん、舞台から降りて観覧席のようすをうかがうことにする。
ボクらが、ステージから降りると、ほぼ同時に、巨大スクリーンに映像が映し出された。
講堂のスピーカーからは、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番『悲愴』の第2楽章の美しく、物憂い主題が静かに流れる。
『Bring back Your YOUTH』
オープニングは、黒地に白文字のシンプルなタイトルにしておいた。
続いて、画面はインタビュー・シーンに切り替わり、各クラブの代表者にたずねた質問を字幕テロップで流す。
――――――これまでの部活動で印象に残っていることはなんですか?
「やっぱり、感染症で大会が中止になったことかな? 部としての目標が無くなって、どう活動して良いのかわかなくなって……」(吹奏楽部部長・早見紗織)
「感染症の影響で、練習も大会も、全部なくなってしまったことだな~。卒業した先輩たちは、結局、最後の高校総体も出られなかったし……」(バトミントン部部長・西尾隆)
「あの感染症がなければ……って、いまでも思うよね。歌が命の私たちのクラブが、歌えなくなってしまったんだから、ホント、私らの青春を返せ! って感じ」(コーラス部代表・浦嶋ユリ)
インタビューを行ったなかでも、質問に対して、特に印象に残った回答をしてくれた人たちを中心に、あえてからーではなく、モノクロ映像で編集しておいた。
前半のBGMに物憂げな楽曲を使用したのは、その取材中に、どのクラブからも、前年度の活動が著しく制限されていたことで、存分に部活を楽しめなかったという三年生部員の声が多く聞かれたことを反映している。
その後、しばらくはピアノソナタの調べに合わせて、各クラブを取材したときに撮影し、同じくモノクロに編集した映像や画像で、前年までのクラブ活動の苦境ぶりを表現する演出を行った。
――――――今年のクラブ活動について、抱負や目標を教えてください。
「活動制限で、先輩たちや自分たちが苦労した分、今年入部した一年生たちには思いっきり声を張って演技を楽しんでもらいたいな、と思ってます」(演劇部部長・一ノ瀬綾子)
「今年は、二年ぶりに書道の大会が再開されるので、一年生と二年生には、大会までと本番の雰囲気を楽しんでほしいな……」(書道部部長・日野浩美)
ここからは、各クラブに協力してもらい、感染症がまん延する前の部活動のようすを収めたスナップ写真などで、活動制限がない頃の活気を表現する。
つづいて、今回の取材活動を通じて、ボクや天竹さんが、もっとも感銘を受けたインタビューを取り上げる。
「部長も話してくれたと思うけど、今年の3月で卒業した先輩たちは、感染症の影響で主要な大会や演奏会に出場できなかったんです。最後の一年間は、まともにブラスバンドの活動ができなくて……そんななかでも、先輩たちは、私たちの学年を熱心に指導し、演奏力の向上に力を注いでくれました。だから、私たちは、そんな先輩たちへの感謝と御礼を込めて、交流演奏会を企画しているんです」(吹奏楽部・紅野アザミ)
紅野さんが語り終えると、映像をフルカラーに変転させ、『市立芦宮高校吹奏楽部・交流演奏会』と書かれた立て看板を大写しにする(余談だけど、白草さんが、ボクと同じような映像編集をしてきたことには、かなり焦った)。
BGMは、演奏が終了したピアノソナタから、吹奏楽部が演奏するブラスバンド・アレンジのセカイノオワリの『RPG』に切り替わる。
ここからは、明るく前向きなメロディーの楽曲に合わせて、先日の吹奏楽部・交流演奏会の準備や本番の模様をメインに、バドミントン部の新人戦の選手宣誓や激闘シーン、コーラス部や演劇部の練習風景、筝曲部の演奏の模様、華道部と書道部の展示会、茶道部の野点や家庭科クラブの調理のようすをテンポよく見せていく。
各クラブが、自分たちの映像が流れるたびに拍手をしてくれたおかげで、映像がクライマックスに向かうにつれて、大講堂の観覧席が盛り上がっていっているように感じられるのが、ボクの思い込みでないことを祈りたい。
そして、ボクらが制作した『Bring back Youth』の映像は、最後の見せ場に突入した。
――――――灰色の自粛期間が明けて、今年は行動制限のない活動の再開!
――――――さあ、青春を取り戻そう!
演奏の終演に合わせて、メッセージを表示し、映像の再生が終了すると、場内からはボクたちが想像もしなかったような大きな拍手と歓声がわき起こり、文芸部のメンバーが目尻を拭うような姿が目に入ってきた。
おそらく、ボクたちが取材を行った吹奏楽部やバドミントン部が中心になっていたのだとは思うけど、白草さんや竜司たちのプレゼンを目にして自信を失いかけていたボク自身にとって、それは、とても勇気づけられるモノだった。
すでにプレゼンを終えた二組と違って、映像を制作しただけのボクたちは、ステージ上に残っておく必要はないので、文芸部のメンバーとともに、いったん、舞台から降りて観覧席のようすをうかがうことにする。
ボクらが、ステージから降りると、ほぼ同時に、巨大スクリーンに映像が映し出された。
講堂のスピーカーからは、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番『悲愴』の第2楽章の美しく、物憂い主題が静かに流れる。
『Bring back Your YOUTH』
オープニングは、黒地に白文字のシンプルなタイトルにしておいた。
続いて、画面はインタビュー・シーンに切り替わり、各クラブの代表者にたずねた質問を字幕テロップで流す。
――――――これまでの部活動で印象に残っていることはなんですか?
「やっぱり、感染症で大会が中止になったことかな? 部としての目標が無くなって、どう活動して良いのかわかなくなって……」(吹奏楽部部長・早見紗織)
「感染症の影響で、練習も大会も、全部なくなってしまったことだな~。卒業した先輩たちは、結局、最後の高校総体も出られなかったし……」(バトミントン部部長・西尾隆)
「あの感染症がなければ……って、いまでも思うよね。歌が命の私たちのクラブが、歌えなくなってしまったんだから、ホント、私らの青春を返せ! って感じ」(コーラス部代表・浦嶋ユリ)
インタビューを行ったなかでも、質問に対して、特に印象に残った回答をしてくれた人たちを中心に、あえてからーではなく、モノクロ映像で編集しておいた。
前半のBGMに物憂げな楽曲を使用したのは、その取材中に、どのクラブからも、前年度の活動が著しく制限されていたことで、存分に部活を楽しめなかったという三年生部員の声が多く聞かれたことを反映している。
その後、しばらくはピアノソナタの調べに合わせて、各クラブを取材したときに撮影し、同じくモノクロに編集した映像や画像で、前年までのクラブ活動の苦境ぶりを表現する演出を行った。
――――――今年のクラブ活動について、抱負や目標を教えてください。
「活動制限で、先輩たちや自分たちが苦労した分、今年入部した一年生たちには思いっきり声を張って演技を楽しんでもらいたいな、と思ってます」(演劇部部長・一ノ瀬綾子)
「今年は、二年ぶりに書道の大会が再開されるので、一年生と二年生には、大会までと本番の雰囲気を楽しんでほしいな……」(書道部部長・日野浩美)
ここからは、各クラブに協力してもらい、感染症がまん延する前の部活動のようすを収めたスナップ写真などで、活動制限がない頃の活気を表現する。
つづいて、今回の取材活動を通じて、ボクや天竹さんが、もっとも感銘を受けたインタビューを取り上げる。
「部長も話してくれたと思うけど、今年の3月で卒業した先輩たちは、感染症の影響で主要な大会や演奏会に出場できなかったんです。最後の一年間は、まともにブラスバンドの活動ができなくて……そんななかでも、先輩たちは、私たちの学年を熱心に指導し、演奏力の向上に力を注いでくれました。だから、私たちは、そんな先輩たちへの感謝と御礼を込めて、交流演奏会を企画しているんです」(吹奏楽部・紅野アザミ)
紅野さんが語り終えると、映像をフルカラーに変転させ、『市立芦宮高校吹奏楽部・交流演奏会』と書かれた立て看板を大写しにする(余談だけど、白草さんが、ボクと同じような映像編集をしてきたことには、かなり焦った)。
BGMは、演奏が終了したピアノソナタから、吹奏楽部が演奏するブラスバンド・アレンジのセカイノオワリの『RPG』に切り替わる。
ここからは、明るく前向きなメロディーの楽曲に合わせて、先日の吹奏楽部・交流演奏会の準備や本番の模様をメインに、バドミントン部の新人戦の選手宣誓や激闘シーン、コーラス部や演劇部の練習風景、筝曲部の演奏の模様、華道部と書道部の展示会、茶道部の野点や家庭科クラブの調理のようすをテンポよく見せていく。
各クラブが、自分たちの映像が流れるたびに拍手をしてくれたおかげで、映像がクライマックスに向かうにつれて、大講堂の観覧席が盛り上がっていっているように感じられるのが、ボクの思い込みでないことを祈りたい。
そして、ボクらが制作した『Bring back Youth』の映像は、最後の見せ場に突入した。
――――――灰色の自粛期間が明けて、今年は行動制限のない活動の再開!
――――――さあ、青春を取り戻そう!
演奏の終演に合わせて、メッセージを表示し、映像の再生が終了すると、場内からはボクたちが想像もしなかったような大きな拍手と歓声がわき起こり、文芸部のメンバーが目尻を拭うような姿が目に入ってきた。
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