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第三部
第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜⑨
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天竹さんの提案で、ふたりづつのペアに別れて各クラブに取材を依頼することに決めたボクたちは、さっそく、まだ校内で活動をしている体育会系の部を中心に、クラブ訪問に向かったんだけど――――――。
まず最初に訪問を始めた運動系のクラブの反応は、望ましいものとは言えなかった。
「あ~、生徒会からLANEのメッセージが来てたヤツか……いまは、忙しいから、ちょっと……」
「あれ? あの連絡が来る前に広報部から黒田が来てなかったっけ? なんか、一年の女子とVtuberの企画をやるって言ってたから、OKしといたよ? キミらは、それとは別件なの?」
ボクと天竹さんが訪問した、硬式野球部、バドミントン部、バスケットボール部の部長たちの反応は、おおむね、このような感じだった。
話しを聞いてくれたバドミントン部の西尾部長には、自分たちが、竜司たちのチームと別の動画を作成するべく活動していること、Vtuberではなく、クラブ紹介風のプロモーションビデオを制作することを伝えたけれど、
「う~ん……感染症が収まって活動も本格化するから、学校の外にも部活をアピールしたいし、せっかく来てくれたとこ悪いんだけど……もう黒田たちと約束しちゃったからなぁ……ゴメンな」
と、丁重に断られてしまった。
ほとんど話しを聞いてもらえなかった野球部やバスケ部に比べると、その対応はソフトだったけど、初日の訪問結果は、クラブ取材に出遅れてしまった、ということを実感させるのに十分なモノだった。
ボクと天竹さんだけでなく、石沢さん、今村さんたちのペアも、結果は、似たようなモノだったらしい――――――。
初日の訪問を終えて、図書室に戻ってくると、他のペアからの報告があった。
「運動系は、どのクラブも、先に黒田くんたちが、話しをしに行ってるみたいだね……」
「どこの部も、同じような話しをして、何しに来たの……? って感じだったよね……」
二年生のふたりが、疲労感を漂わせながら苦笑いを浮かべると、一年生の高瀬さんと井戸川さんは、
「大丈夫でしょうか?」
「このまま、どこのクラブも、私たちの話しを聞いてくれなかったら、どうしよう……」
と、かなり弱気になっている。
そのようすを見た天竹さんは、部の代表者らしく、優しく後輩たちを励ます。
「まだ、1日目が終わっただけでしょう? 今日は、活動時間を考えて、私たちと接点の少ない体育会系の部活を中心に訪問したから……明日は、文化系のクラブを中心に訪問してみよう! きっと、私たちの話しを聞いてくれる部があるハズだから!」
上級生らしく下級生を力づけるような言葉をかける部長さんの姿にボクも共鳴し、
「竜司たちは、ふたりだけの活動だから、まだ、すべてのクラブに訪問できたわけじゃないと思う。明日は、竜司たちに先回りして、ボクたちの話しを聞いてもらおう!」
と、天竹さんに続いて、文芸部のみんなに語りかけた。
部長さんとボクの言葉が、少しは元気づける役に立ったのか、高瀬さんと井戸川さんは、
「はい、そうですね!」
と、穏やかな表情に戻り、笑顔を見せてくれた。
その後、芳しくない初日のクラブ訪問が終わったあと、天竹さんに、
「黄瀬くん、このあと、ちょっと付き合ってもらっても良いですか?」
と、声を掛けられたボクは、彼女とともに吹奏楽部が練習をしている芸術棟の音楽室に向かう。
文化系のクラブで夕方六時を過ぎても練習をしているのは、吹奏楽部くらいしかなく、どうしても、訪問時間は後回しになってしまう。
ただ、今回、音楽教室を訪問するのは、他の部を訪ねた理由とは異なるようだ。
天竹さんは、吹奏楽部の休憩時間を把握しているのか、ボクらが音楽教室を訪ねると、紅野さんたちは、楽器を置いて、入口に近い教室のすみに集まっていた。
「ノア……ちょっと、イイかな?」
天竹さんが声をかけると、ボクたちの同級生より先に、吹奏楽部の副部長である寿先輩が、こちらに気づいて反応する。
「おっ、黄瀬くんと天竹さんじゃない? なに、今から私たちの取材? 練習の邪魔にならなければ、いつでも、大歓迎だよ!」
寿先輩の会話の圧力に少し戸惑いながらも、天竹さんは、親友と上級生に対して、昨日と今日の成果報告を伝えた。
文芸部部長からの報告を聞いたふたりは、
「ふぅん……なるほどね……」
「そっか……葵や黄瀬くん、文芸部のみんなには、迷惑をかけちゃったね……ゴメンね」
と、それぞれの反応を示し、現在の状況が芳しくないことを理解してくれたようだ。
そして、吹奏楽部の副部長であり、生徒会会長でもある先輩は、
「いよいよ、これは吹奏楽部としては、黄瀬くんたちのチームに取材してもらわないと、だね……」
と言って、ニンマリと笑う。
その表情を見ながら、紅野さんは、上級生に釘をさす。
「ちゃんと、早見部長の許可を取ってからにしてくださいね」
「はいはい、わかってるって……」
そう返事をした副部長兼生徒会長は、
「ところでさ……黒田くんと白草さんは、まだうちのクラブに来てないよね?」
と、紅野さんと周りの部員さんたちに確認する。
「はい、まだですね……やっぱり、文化系クラブの取材は、後回しになるんでしょうか?」
紅野さんの声に、「う~ん……どうだろうね~」と答えつつ、寿先輩は、
「それなら、他の部の部長たちにも、PR動画作成に関する訪問があったか聞いておくよ。結果がわかり次第、連絡するから、明日は、まだ黒田くんたちが訪問してなさそうなクラブに行ってみたら?」
と、情報収集に協力する、というありがたい提案をしてくれた。
まず最初に訪問を始めた運動系のクラブの反応は、望ましいものとは言えなかった。
「あ~、生徒会からLANEのメッセージが来てたヤツか……いまは、忙しいから、ちょっと……」
「あれ? あの連絡が来る前に広報部から黒田が来てなかったっけ? なんか、一年の女子とVtuberの企画をやるって言ってたから、OKしといたよ? キミらは、それとは別件なの?」
ボクと天竹さんが訪問した、硬式野球部、バドミントン部、バスケットボール部の部長たちの反応は、おおむね、このような感じだった。
話しを聞いてくれたバドミントン部の西尾部長には、自分たちが、竜司たちのチームと別の動画を作成するべく活動していること、Vtuberではなく、クラブ紹介風のプロモーションビデオを制作することを伝えたけれど、
「う~ん……感染症が収まって活動も本格化するから、学校の外にも部活をアピールしたいし、せっかく来てくれたとこ悪いんだけど……もう黒田たちと約束しちゃったからなぁ……ゴメンな」
と、丁重に断られてしまった。
ほとんど話しを聞いてもらえなかった野球部やバスケ部に比べると、その対応はソフトだったけど、初日の訪問結果は、クラブ取材に出遅れてしまった、ということを実感させるのに十分なモノだった。
ボクと天竹さんだけでなく、石沢さん、今村さんたちのペアも、結果は、似たようなモノだったらしい――――――。
初日の訪問を終えて、図書室に戻ってくると、他のペアからの報告があった。
「運動系は、どのクラブも、先に黒田くんたちが、話しをしに行ってるみたいだね……」
「どこの部も、同じような話しをして、何しに来たの……? って感じだったよね……」
二年生のふたりが、疲労感を漂わせながら苦笑いを浮かべると、一年生の高瀬さんと井戸川さんは、
「大丈夫でしょうか?」
「このまま、どこのクラブも、私たちの話しを聞いてくれなかったら、どうしよう……」
と、かなり弱気になっている。
そのようすを見た天竹さんは、部の代表者らしく、優しく後輩たちを励ます。
「まだ、1日目が終わっただけでしょう? 今日は、活動時間を考えて、私たちと接点の少ない体育会系の部活を中心に訪問したから……明日は、文化系のクラブを中心に訪問してみよう! きっと、私たちの話しを聞いてくれる部があるハズだから!」
上級生らしく下級生を力づけるような言葉をかける部長さんの姿にボクも共鳴し、
「竜司たちは、ふたりだけの活動だから、まだ、すべてのクラブに訪問できたわけじゃないと思う。明日は、竜司たちに先回りして、ボクたちの話しを聞いてもらおう!」
と、天竹さんに続いて、文芸部のみんなに語りかけた。
部長さんとボクの言葉が、少しは元気づける役に立ったのか、高瀬さんと井戸川さんは、
「はい、そうですね!」
と、穏やかな表情に戻り、笑顔を見せてくれた。
その後、芳しくない初日のクラブ訪問が終わったあと、天竹さんに、
「黄瀬くん、このあと、ちょっと付き合ってもらっても良いですか?」
と、声を掛けられたボクは、彼女とともに吹奏楽部が練習をしている芸術棟の音楽室に向かう。
文化系のクラブで夕方六時を過ぎても練習をしているのは、吹奏楽部くらいしかなく、どうしても、訪問時間は後回しになってしまう。
ただ、今回、音楽教室を訪問するのは、他の部を訪ねた理由とは異なるようだ。
天竹さんは、吹奏楽部の休憩時間を把握しているのか、ボクらが音楽教室を訪ねると、紅野さんたちは、楽器を置いて、入口に近い教室のすみに集まっていた。
「ノア……ちょっと、イイかな?」
天竹さんが声をかけると、ボクたちの同級生より先に、吹奏楽部の副部長である寿先輩が、こちらに気づいて反応する。
「おっ、黄瀬くんと天竹さんじゃない? なに、今から私たちの取材? 練習の邪魔にならなければ、いつでも、大歓迎だよ!」
寿先輩の会話の圧力に少し戸惑いながらも、天竹さんは、親友と上級生に対して、昨日と今日の成果報告を伝えた。
文芸部部長からの報告を聞いたふたりは、
「ふぅん……なるほどね……」
「そっか……葵や黄瀬くん、文芸部のみんなには、迷惑をかけちゃったね……ゴメンね」
と、それぞれの反応を示し、現在の状況が芳しくないことを理解してくれたようだ。
そして、吹奏楽部の副部長であり、生徒会会長でもある先輩は、
「いよいよ、これは吹奏楽部としては、黄瀬くんたちのチームに取材してもらわないと、だね……」
と言って、ニンマリと笑う。
その表情を見ながら、紅野さんは、上級生に釘をさす。
「ちゃんと、早見部長の許可を取ってからにしてくださいね」
「はいはい、わかってるって……」
そう返事をした副部長兼生徒会長は、
「ところでさ……黒田くんと白草さんは、まだうちのクラブに来てないよね?」
と、紅野さんと周りの部員さんたちに確認する。
「はい、まだですね……やっぱり、文化系クラブの取材は、後回しになるんでしょうか?」
紅野さんの声に、「う~ん……どうだろうね~」と答えつつ、寿先輩は、
「それなら、他の部の部長たちにも、PR動画作成に関する訪問があったか聞いておくよ。結果がわかり次第、連絡するから、明日は、まだ黒田くんたちが訪問してなさそうなクラブに行ってみたら?」
と、情報収集に協力する、というありがたい提案をしてくれた。
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