226 / 295
第三部
第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜⑤
しおりを挟む
「クロ! やっぱり、そうだったんだ!」
突然、声を挙げた白草さんに、竜司は驚き、
「おっ、おう!」
と、身体を若干のけぞらせながら応答する。
「だよね、だよね! この曲、歌詞もダンスも、すっごくカワイイもの! クロにも、良さがわかってたんだね!」
なぜ、異なるチームで活動することになった相手の反応をそんなに気にしているのか――――――。
その理由がわからないのは、ボクだけではなかったみたいで、当事者の竜司本人も、困惑気味だ。
「いや、この曲が好きだと言っても、観ていたアニメのエンディング曲としか認識していないから……オレは、歌手本人のダンスとかは、詳しく知らないんだが……」
そのハイテンションな言動に対して、小刻みに身体を震わせ、おののく、といった感じで答える友人の反応にも構わず、白草さんは、上機嫌で語り続ける。
「ううん……クロが、この曲を気に入っているってことだけでも、気合の入り方が違うから!」
「いや……どうして、くろセンパイの反応が関係あるんですか? 白草さんは、ワタシたちとは違うチームですよね?」
佐倉さんが、冷静なツッコミを入れると、進行役の鳳花部長も、プレゼンテーションから脱線している女子生徒に注意する。
「白草さん、楽しく説明をしてもらうのは良いけれど……宮野さんが、困っているんじゃないかしら?」
下級生のツッコミに対しては、一顧だにしなかったものの、部長からの指摘に対しては、さすがにマズいと思ったのか、白草さんは、自分のパートナーを顧みる。
「あっ、すみません! ごめんね、雪乃。説明を続けてくれる?」
自身が憧れる上級生にうながされた宮野さんは、素直にうなずいて、プレゼンを続ける。
「はい……すでに、ダンス部の皆さんとは、話し合いを進めさせてもらっていまス。ヨツバちゃんの提案をダンス部の先輩たちが受け入れてくれまスた」
下級生の説明を補足するように、白草さんは、付け加えた。
「同じクラスの野中麻耶さんと石川奈々子さんが、ダンス部だったので、わたしが企画を提案したら、部長の伊原先輩にも話しをしてくれて……そこから、一気に話しがまとまった感じです」
朗らかな表情で説明する彼女の語り口は自信にあふれていて、まだ、他のクラブと出演の交渉すら始めていないボクたちのチームを萎縮させるには、十分だった。
「今回は、ダンス部の選抜メンバーと、わたしたちで、キレキレのダンスを披露するつもりなので、動画の完成を楽しみにしていてください」
得意満面の表情で語る白草さんに対して、満足したように、鳳花部長は、彼女たちに声をかける。
「宮野さんと白草さんは、クライアントをダンス部に絞ったのね。ふたりには期待しているから……がんばってね」
「はい! 精一杯がんばりまスので、よろしくお願いしまス」
まだ、仮入部状態とはいえ、やる気に満ちあふれている宮野さんのようすに、部長をはじめ、生徒会の上級生も気持ちが和んだようだ。
そして、次は、いよいよ――――――。
「最後は、黄瀬くんと天竹さんね? 準備は、いいかしら?」
鳳花部長の進行で、ボクたちが、作成する動画の企画案を発表する順番が回ってきた。
天竹さんと一緒に席を立ち、さっきまで白草さんと宮野さんが立っていたホワイトスクリーンの横に移動する。
『広報部 芦宮高校 クラブ紹介動画案』
竜司や白草さんたちのチームに比べると、簡素なスライド表紙に見えるが、ボクも天竹さんも、派手な見栄えを重視するタイプではないので、この点は、許してもらいたい。
「ボクたちは、アバターを使ったり、ダンス動画を作ったりするスキルに恵まれていないので……シンプルに、各クラブにインタビューを行い、活動の模様を撮影したプロモーション・ビデオを制作することにしました」
プレゼンテーションの冒頭の言葉を述べたあと、スライドを操作し、インタビューを行うキャラクターが描かれた、いらすとや謹製の挿し絵が挿入されたページを表示させる。
「各クラブへのインタビューは、天竹さんたち、文芸部のみなさんに協力してもらうことになりました」
ボクが、自分たちの活動内容を説明すると、天竹さんが、後を引き継いでくれた。
「私の所属する文芸部では、創作活動の一環として、色々なジャンルの小説を執筆しているのですが……関係者にインタビューを行って内容をまとめるノンフィクションと呼ばれるジャンルの作品を書くことにも役立つと思いますので、私たちの活動に協力してもらうことになりました」
文芸部の部長さんの言葉を無言でうなずきながら聞いていた、広報部の鳳花部長は、興味深そうに、
「そう……それは、面白そうな試みね……」
と、微笑んだあと、鋭い目つき(と感じたのはボクだけかも知れないけど……)で、
「ところで……もう取材する相手は、決まっているの?」
と、たずねてきた。
「あ、あの…それは……」
言いよどむボクに代わって、またも天竹さんが口を開く。
「今のところ、このインタビューに協力してくれると回答してくれたのは、吹奏楽部だけです。……ですが、これから、各クラブとお話しをさせてもらって――――――」
だが、天竹さんが、言い終わらないうちに、片手をあげて、鳳花部長は、彼女の言葉を制した。
突然、声を挙げた白草さんに、竜司は驚き、
「おっ、おう!」
と、身体を若干のけぞらせながら応答する。
「だよね、だよね! この曲、歌詞もダンスも、すっごくカワイイもの! クロにも、良さがわかってたんだね!」
なぜ、異なるチームで活動することになった相手の反応をそんなに気にしているのか――――――。
その理由がわからないのは、ボクだけではなかったみたいで、当事者の竜司本人も、困惑気味だ。
「いや、この曲が好きだと言っても、観ていたアニメのエンディング曲としか認識していないから……オレは、歌手本人のダンスとかは、詳しく知らないんだが……」
そのハイテンションな言動に対して、小刻みに身体を震わせ、おののく、といった感じで答える友人の反応にも構わず、白草さんは、上機嫌で語り続ける。
「ううん……クロが、この曲を気に入っているってことだけでも、気合の入り方が違うから!」
「いや……どうして、くろセンパイの反応が関係あるんですか? 白草さんは、ワタシたちとは違うチームですよね?」
佐倉さんが、冷静なツッコミを入れると、進行役の鳳花部長も、プレゼンテーションから脱線している女子生徒に注意する。
「白草さん、楽しく説明をしてもらうのは良いけれど……宮野さんが、困っているんじゃないかしら?」
下級生のツッコミに対しては、一顧だにしなかったものの、部長からの指摘に対しては、さすがにマズいと思ったのか、白草さんは、自分のパートナーを顧みる。
「あっ、すみません! ごめんね、雪乃。説明を続けてくれる?」
自身が憧れる上級生にうながされた宮野さんは、素直にうなずいて、プレゼンを続ける。
「はい……すでに、ダンス部の皆さんとは、話し合いを進めさせてもらっていまス。ヨツバちゃんの提案をダンス部の先輩たちが受け入れてくれまスた」
下級生の説明を補足するように、白草さんは、付け加えた。
「同じクラスの野中麻耶さんと石川奈々子さんが、ダンス部だったので、わたしが企画を提案したら、部長の伊原先輩にも話しをしてくれて……そこから、一気に話しがまとまった感じです」
朗らかな表情で説明する彼女の語り口は自信にあふれていて、まだ、他のクラブと出演の交渉すら始めていないボクたちのチームを萎縮させるには、十分だった。
「今回は、ダンス部の選抜メンバーと、わたしたちで、キレキレのダンスを披露するつもりなので、動画の完成を楽しみにしていてください」
得意満面の表情で語る白草さんに対して、満足したように、鳳花部長は、彼女たちに声をかける。
「宮野さんと白草さんは、クライアントをダンス部に絞ったのね。ふたりには期待しているから……がんばってね」
「はい! 精一杯がんばりまスので、よろしくお願いしまス」
まだ、仮入部状態とはいえ、やる気に満ちあふれている宮野さんのようすに、部長をはじめ、生徒会の上級生も気持ちが和んだようだ。
そして、次は、いよいよ――――――。
「最後は、黄瀬くんと天竹さんね? 準備は、いいかしら?」
鳳花部長の進行で、ボクたちが、作成する動画の企画案を発表する順番が回ってきた。
天竹さんと一緒に席を立ち、さっきまで白草さんと宮野さんが立っていたホワイトスクリーンの横に移動する。
『広報部 芦宮高校 クラブ紹介動画案』
竜司や白草さんたちのチームに比べると、簡素なスライド表紙に見えるが、ボクも天竹さんも、派手な見栄えを重視するタイプではないので、この点は、許してもらいたい。
「ボクたちは、アバターを使ったり、ダンス動画を作ったりするスキルに恵まれていないので……シンプルに、各クラブにインタビューを行い、活動の模様を撮影したプロモーション・ビデオを制作することにしました」
プレゼンテーションの冒頭の言葉を述べたあと、スライドを操作し、インタビューを行うキャラクターが描かれた、いらすとや謹製の挿し絵が挿入されたページを表示させる。
「各クラブへのインタビューは、天竹さんたち、文芸部のみなさんに協力してもらうことになりました」
ボクが、自分たちの活動内容を説明すると、天竹さんが、後を引き継いでくれた。
「私の所属する文芸部では、創作活動の一環として、色々なジャンルの小説を執筆しているのですが……関係者にインタビューを行って内容をまとめるノンフィクションと呼ばれるジャンルの作品を書くことにも役立つと思いますので、私たちの活動に協力してもらうことになりました」
文芸部の部長さんの言葉を無言でうなずきながら聞いていた、広報部の鳳花部長は、興味深そうに、
「そう……それは、面白そうな試みね……」
と、微笑んだあと、鋭い目つき(と感じたのはボクだけかも知れないけど……)で、
「ところで……もう取材する相手は、決まっているの?」
と、たずねてきた。
「あ、あの…それは……」
言いよどむボクに代わって、またも天竹さんが口を開く。
「今のところ、このインタビューに協力してくれると回答してくれたのは、吹奏楽部だけです。……ですが、これから、各クラブとお話しをさせてもらって――――――」
だが、天竹さんが、言い終わらないうちに、片手をあげて、鳳花部長は、彼女の言葉を制した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる