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第三部
幕間①〜極醸!生徒会〜その1・前編
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市立芦宮高校は、主に四つの校舎群と三つの大きな建物から成り立っている。
一・二年生の教室や職員室や図書室がある本館A棟。
主に三年生の教室があるB棟。
理科室や地学室など、理科・社会科の特別教室が並ぶC棟
学年集会などが行われる大講義室やコンピュータ室などがある新館D棟。
この他にも、書道教室や美術室などがある芸術棟や、吹奏楽部が利用する巨大な音楽棟、全校集会が開かれる大講堂などがあるのだが――――――。
広報部と生徒会公認の『芦宮高校PR動画コンテスト』の連絡会が終わった翌日の放課後、校内で、最も新しい新館D棟の最上階にある生徒会室には、芦宮高校生徒会の主要メンバーが集っていた。
「とりあえず、第一回目の連絡会は、無事に終わってホッとしたね~」
生徒会長と吹奏楽部の副部長という肩書を持つ寿美奈子が、椅子の背もたれに背中を預けるような姿勢で、大きく伸びをしながら、生徒会メンバーに声をかける。
週明けの説明会と水曜日の連絡会の議事録をまとめていた生徒会書紀の生野茉純が、タッチタイピングを行っているノートPCのディスプレイから、少しだけ視線を上げて返答した。
「連絡会のときのメンバーなら、そんなに揉めたりすることもないんじゃないですか?」
「なになに? 動画コンテストって、なにか、面白いことになってんの?」
電卓を弾きながら、デスクトップPCの表計算ソフトに、予算案を入力する手を止めて、生徒会の会計を務める前田香緒里が、面白そうに会話に加わる。
会計役のため、これまで、新年度になってからは、竜司たちの所属する広報部やアザミたちの所属する吹奏楽部とは、あまり接点はないが、各クラブの予算を担っているだけに関係は浅くない。
(なぜ、公立高校に進学したんだ……?)
と、周囲が驚くほどの家庭環境に育った生徒会長・副会長・書紀の三役とは異なり、市内の商店街の小さなブティックの一人娘という環境に育った彼女ではあるが、原材料高騰に苦しむ経済情勢のなかをしたたかに生き抜く個人商店の血筋らしく、金銭感覚と会計に関するセンスに秀でており、生徒会メンバーからの信頼は厚い。
淡々と冷静な意見を述べる書紀役と会計役の興味津々なようすに、ニヤニヤしながら、美奈子がつぶやく。
「そうだね~。白草さんと広報部の新人ちゃん……佐倉さんだっけ? あのふたりが、揃ったら、『会議は踊る……』にぎやかになるもんね~」
「その騒動の中心にいるのは、黒田くんですよね? 私の手元の情報では、会長が目を掛けている紅野さんも、その環の中に入っているようですが……」
寿会長の言葉を受けて、生徒会独自のデータベースを開きながら、会計役の茉純が、相変わらずの淡白な口調で応答する。
「えっ!? 一年と二年って、そんなことになってるんだ? いま、話題に上がった生徒って、どんな子たちなの?」
さらに、前のめりになって、会話に食わる香緒里に、対して茉純が端末を操作し、インスタントメッセージで、
・黒田竜司
・白草四葉
・紅野アザミ
・佐倉桃華
のデータベースのリンク先を送信した。
その手元に送られた顔写真つきのデータを見ながら、庶民派の会計役がつぶやく。
「へぇ~、この黒田くんを巡って、女子三人が争ってるの? あたしの目から見て、そんなにモテそうにも思えないけど……」
香緒里のそんなつぶやきを聞き逃さなかった美奈子が、口角を少し上げ、これまで会話に加わっていなかった友人に話しを振る。
「鳳花、かわいい後輩が、ディスられてるけど、ど~すんの?」
「黒田くんが、一見モテそうに見えないことについては、ナニも否定材料がないわね」
親しい間柄の生徒会長の言葉に、広報部の部長にして生徒会副会長の花金鳳花は、おっとりとした口調で答えた。
鳳花の言葉に、香緒里は肩をすくめながら、応じる。
「うわっ……キッツいなぁ……相変わらず容赦ないねぇ……あたしが言ったことだけどさぁ……副会長は、黒田くんと付き合いも長いんでしょ? 少しは、フォローしてやりなよ」
会計担当のあきれたような口調を聞き流す副会長に代わって、先ほどと同じようにノートPCを操作している書紀担当の茉純が、
「そのことについては、興味深い資料がありますよ。白草さんが活動の場としているサイトで、こんな動画を話見つけました」
と言いながら、動画サイトのリンクを香緒里に送る。
送られらたリンクを開いた彼女は、概要欄の解説に目を通した。
「え~と……ふんふん……『白草ヨツバの超恋愛工学』グッピー理論について……《メスはイケメンだから好きになるのではなく、まわりからモテているオスの姿を見て好きになる》――――――このことを実践的に活用してみよう! だって……」
香緒里が、概要欄に書かれた文章を読み上げると、リンクの送り主は、再び議事録のタイピングを再開させながら、送信相手にたずねる。
「これは、ある意味で、いまの会話のヒントになりませんか?」
「なるほどね~。こんな実験があったんだ……たしかに、いまの黒田くんの状況に当てはまるかも……あたし、ちょっと、この黒田くんに興味が湧いてきたわ」
好奇心旺盛な会計担当は、生徒会書紀の発言に賛同しながら、下級生男子への興味を隠そうとしない。
だが、生物実験から導かれた恋愛論に納得したようすの二名に対して、異議を唱える者がいた。
一・二年生の教室や職員室や図書室がある本館A棟。
主に三年生の教室があるB棟。
理科室や地学室など、理科・社会科の特別教室が並ぶC棟
学年集会などが行われる大講義室やコンピュータ室などがある新館D棟。
この他にも、書道教室や美術室などがある芸術棟や、吹奏楽部が利用する巨大な音楽棟、全校集会が開かれる大講堂などがあるのだが――――――。
広報部と生徒会公認の『芦宮高校PR動画コンテスト』の連絡会が終わった翌日の放課後、校内で、最も新しい新館D棟の最上階にある生徒会室には、芦宮高校生徒会の主要メンバーが集っていた。
「とりあえず、第一回目の連絡会は、無事に終わってホッとしたね~」
生徒会長と吹奏楽部の副部長という肩書を持つ寿美奈子が、椅子の背もたれに背中を預けるような姿勢で、大きく伸びをしながら、生徒会メンバーに声をかける。
週明けの説明会と水曜日の連絡会の議事録をまとめていた生徒会書紀の生野茉純が、タッチタイピングを行っているノートPCのディスプレイから、少しだけ視線を上げて返答した。
「連絡会のときのメンバーなら、そんなに揉めたりすることもないんじゃないですか?」
「なになに? 動画コンテストって、なにか、面白いことになってんの?」
電卓を弾きながら、デスクトップPCの表計算ソフトに、予算案を入力する手を止めて、生徒会の会計を務める前田香緒里が、面白そうに会話に加わる。
会計役のため、これまで、新年度になってからは、竜司たちの所属する広報部やアザミたちの所属する吹奏楽部とは、あまり接点はないが、各クラブの予算を担っているだけに関係は浅くない。
(なぜ、公立高校に進学したんだ……?)
と、周囲が驚くほどの家庭環境に育った生徒会長・副会長・書紀の三役とは異なり、市内の商店街の小さなブティックの一人娘という環境に育った彼女ではあるが、原材料高騰に苦しむ経済情勢のなかをしたたかに生き抜く個人商店の血筋らしく、金銭感覚と会計に関するセンスに秀でており、生徒会メンバーからの信頼は厚い。
淡々と冷静な意見を述べる書紀役と会計役の興味津々なようすに、ニヤニヤしながら、美奈子がつぶやく。
「そうだね~。白草さんと広報部の新人ちゃん……佐倉さんだっけ? あのふたりが、揃ったら、『会議は踊る……』にぎやかになるもんね~」
「その騒動の中心にいるのは、黒田くんですよね? 私の手元の情報では、会長が目を掛けている紅野さんも、その環の中に入っているようですが……」
寿会長の言葉を受けて、生徒会独自のデータベースを開きながら、会計役の茉純が、相変わらずの淡白な口調で応答する。
「えっ!? 一年と二年って、そんなことになってるんだ? いま、話題に上がった生徒って、どんな子たちなの?」
さらに、前のめりになって、会話に食わる香緒里に、対して茉純が端末を操作し、インスタントメッセージで、
・黒田竜司
・白草四葉
・紅野アザミ
・佐倉桃華
のデータベースのリンク先を送信した。
その手元に送られた顔写真つきのデータを見ながら、庶民派の会計役がつぶやく。
「へぇ~、この黒田くんを巡って、女子三人が争ってるの? あたしの目から見て、そんなにモテそうにも思えないけど……」
香緒里のそんなつぶやきを聞き逃さなかった美奈子が、口角を少し上げ、これまで会話に加わっていなかった友人に話しを振る。
「鳳花、かわいい後輩が、ディスられてるけど、ど~すんの?」
「黒田くんが、一見モテそうに見えないことについては、ナニも否定材料がないわね」
親しい間柄の生徒会長の言葉に、広報部の部長にして生徒会副会長の花金鳳花は、おっとりとした口調で答えた。
鳳花の言葉に、香緒里は肩をすくめながら、応じる。
「うわっ……キッツいなぁ……相変わらず容赦ないねぇ……あたしが言ったことだけどさぁ……副会長は、黒田くんと付き合いも長いんでしょ? 少しは、フォローしてやりなよ」
会計担当のあきれたような口調を聞き流す副会長に代わって、先ほどと同じようにノートPCを操作している書紀担当の茉純が、
「そのことについては、興味深い資料がありますよ。白草さんが活動の場としているサイトで、こんな動画を話見つけました」
と言いながら、動画サイトのリンクを香緒里に送る。
送られらたリンクを開いた彼女は、概要欄の解説に目を通した。
「え~と……ふんふん……『白草ヨツバの超恋愛工学』グッピー理論について……《メスはイケメンだから好きになるのではなく、まわりからモテているオスの姿を見て好きになる》――――――このことを実践的に活用してみよう! だって……」
香緒里が、概要欄に書かれた文章を読み上げると、リンクの送り主は、再び議事録のタイピングを再開させながら、送信相手にたずねる。
「これは、ある意味で、いまの会話のヒントになりませんか?」
「なるほどね~。こんな実験があったんだ……たしかに、いまの黒田くんの状況に当てはまるかも……あたし、ちょっと、この黒田くんに興味が湧いてきたわ」
好奇心旺盛な会計担当は、生徒会書紀の発言に賛同しながら、下級生男子への興味を隠そうとしない。
だが、生物実験から導かれた恋愛論に納得したようすの二名に対して、異議を唱える者がいた。
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