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第三部
幕間①〜極醸!生徒会〜その1・後編
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「ちょっと、ちょっと! それじゃ、まるで、ウチのカワイイ後輩ちゃんが、流されやすい軽いオンナみたいじゃない! ウチの部の次期エースにして、次代の生徒会長候補筆頭の紅野は、そんな安っぽい娘じゃないからね!」
「いや~……でも、いまの話しを聞いた限りじゃ……」
しかし、美奈子の反論に、同意できないようすの香緒里に対して、鳳花が口を開く。
「紅野さんについて、詳しいことはわからないけれど……私も、今回の件に限っては、その理論は当てはまないと思うわ」
「ほぅ……と言うと?」
普段、このテの話しに、ほとんど関心を示さない副会長が意味ありげに異論を唱えたことに興味を持った書紀担当は、タッチタイピングの手を止めて、少し身を乗り出し気味にたずねた。
「この場合、『どのタイミングで、黒田くんに対して恋愛感情めいたものを抱いたか』が問題よね?……少なくとも、白草さんと佐倉さんは、それぞれ、まったく別の時期に……黒田くんがモテる要素が、まったく無いときに、そういう感情を持ったみたいだから……それに、現生徒会長の人物批評眼を信じるなら、おそらく、紅野さんにしても、黒田くんが他の女子にどう見られているかは、あまり気にしていないハズよ?」
理路整然と語るその言葉には、一定の説得力があったようである。
なぜか、発言の主でない、生徒会長が、ドヤ顔をして、
「ほら、私の言ったとおりでしょう?」
会計担当と書紀担当に対して、胸を張りつつ、続けて
「でもさ、気になることがあるんだけど……」
と、副会長に問い返す。
「今回の動画制作のグループ分けは、ホントにバランス良くチームがバラけたな……って思うけど、鳳花、まさか、あの竹筒に入ってたクジに、ナニか仕掛けがあったんじゃ……」
探るような目でたずねる美奈子に、少し驚いた表情を見せた鳳花は、
「まさか! いくら、私でもそんな手の込んだことまでしないわよ」
と、笑って応える。
「今回のクジ引きは、タネも仕掛けもない結果よ……もちろん、まだ仮入部状態の宮野さんと部外者の紅野さんたちの組み合わせができたりしていたら、メンバーの調整はしようと思っていたけどね」
明るい表情で語る彼女のようすを見て、純粋に、現在の状況を楽しんでいるであろうことを察した美奈子は、
「ふ~ん、それならイイけど……でも、もし、運命の神様がいるなら、ウチの後輩ちゃんを後押ししてあげてほしかったな~」
と、つぶやく。
「会長は、やっぱり、後輩の紅野さんと黒田くんのカプ推しなんですか?」
会計担当の茉純が、興味深そうにたずねる。
「そりゃ、そうよ! あの娘には、いずれ、私の仕事を引き継いでもらおうと考えてるからね! それには、やっぱり、支えてくれるパートナーの存在がある方が良いでしょ?」
美奈子が、自身の本音を明かすと、その言葉に反応した鳳花が、
「その点については、外野の自分たちが、アレコレ言ってもね……」
と、苦笑する。さらに、続けて、
「第一、そんな状況なんて、白草さんが納得するハズないでしょ? 下手をすれば、黒田くんに気を引くためだけに、生徒会長選挙に立候補しかねないわよ? そうなると、久々に生徒会選挙が盛り上がりそうね」
と、楽しげに語る一言に、次期生徒会に対して、穏便に後事をたくそうと考えている会長以下、現生徒会のメンバーたちは、一瞬、血の気が引いたように、表情が凍りつく。
「そ、そういう状況だけは、勘弁してほしいな……」
「私も、紅野さんと白草さんが、選挙で生徒会長の座を争うという事態だけは、是が非でも避けたいですね」
美奈子と茉純は、少し青ざめながら、心情を吐露した。
一方、少し冷静さを取り戻した香緒里は、先ほどまでの鳳花の語り口に納得したようすで、つぶやく。
「そうなんだ……下級生たちの性格や事情は、副会長が、いちばん把握してそうだもんね。その人が、そう言うのなら、そうなのかも……でもそうすると……」
ここで、一度、言葉を区切ったあと、さらに、クスクスと笑いながら続ける。
「なんで、黒田くんが、こんなに女子を惹きつけてるのか……ますます興味が湧いてきたわ!」
その一言に反応したのは、情報収集能力にも長ける書紀担当だった。
「おや、そうなのですか? 私の手元には、前田さんは、小学校を卒業するときに友人と交換するプロフィール帳に、『お金持ちのイケメン彼氏常時募集中』と書いていたというデータがあるのですが……異性の好みが変わったのですか?」
「ニャ~~~~~! それ、あたしが、小学生の時の黒歴史のヤツじゃん! 友だちに書いたプロフィール帳のメッセージ欄が一行空いたままだったから、ウケ狙いで書いただけなんだよ~! ってか、なんで、そんなデータが残ってんの!? 消して! いますぐ、そのデータベースから、あたしの過去を消して!」
茉純が、その存在を耳にした生徒が、『芦宮高校版エシュロン』と呼ぶ《生徒会データベース》にアクセスしながら語っていることに気付いた香緒里が、抗議の声をあげる。
「ふぅ~、連絡会は何事もなく終わって良かったけど……生徒会が、にぎやかなのは、なによりだわ……それじゃ、私は、そろそろ部活の方に顔を出さないと、だから……あとのことは、ヨロシクね~」
無用なトラブルは避けようと、生徒会長の寿美奈子は、所属する吹奏楽部の練習に向かうべく、生徒会室を立ち去ろうとする。
「ちょっと、会長! 生徒会長権限で、あたしのデータを削除するようにしてよ! 会長!」
背中に、会計役の言葉を受けながら、美奈子は廊下に出て、後ろ手で生徒会室の扉を閉めるのだった。
「いや~……でも、いまの話しを聞いた限りじゃ……」
しかし、美奈子の反論に、同意できないようすの香緒里に対して、鳳花が口を開く。
「紅野さんについて、詳しいことはわからないけれど……私も、今回の件に限っては、その理論は当てはまないと思うわ」
「ほぅ……と言うと?」
普段、このテの話しに、ほとんど関心を示さない副会長が意味ありげに異論を唱えたことに興味を持った書紀担当は、タッチタイピングの手を止めて、少し身を乗り出し気味にたずねた。
「この場合、『どのタイミングで、黒田くんに対して恋愛感情めいたものを抱いたか』が問題よね?……少なくとも、白草さんと佐倉さんは、それぞれ、まったく別の時期に……黒田くんがモテる要素が、まったく無いときに、そういう感情を持ったみたいだから……それに、現生徒会長の人物批評眼を信じるなら、おそらく、紅野さんにしても、黒田くんが他の女子にどう見られているかは、あまり気にしていないハズよ?」
理路整然と語るその言葉には、一定の説得力があったようである。
なぜか、発言の主でない、生徒会長が、ドヤ顔をして、
「ほら、私の言ったとおりでしょう?」
会計担当と書紀担当に対して、胸を張りつつ、続けて
「でもさ、気になることがあるんだけど……」
と、副会長に問い返す。
「今回の動画制作のグループ分けは、ホントにバランス良くチームがバラけたな……って思うけど、鳳花、まさか、あの竹筒に入ってたクジに、ナニか仕掛けがあったんじゃ……」
探るような目でたずねる美奈子に、少し驚いた表情を見せた鳳花は、
「まさか! いくら、私でもそんな手の込んだことまでしないわよ」
と、笑って応える。
「今回のクジ引きは、タネも仕掛けもない結果よ……もちろん、まだ仮入部状態の宮野さんと部外者の紅野さんたちの組み合わせができたりしていたら、メンバーの調整はしようと思っていたけどね」
明るい表情で語る彼女のようすを見て、純粋に、現在の状況を楽しんでいるであろうことを察した美奈子は、
「ふ~ん、それならイイけど……でも、もし、運命の神様がいるなら、ウチの後輩ちゃんを後押ししてあげてほしかったな~」
と、つぶやく。
「会長は、やっぱり、後輩の紅野さんと黒田くんのカプ推しなんですか?」
会計担当の茉純が、興味深そうにたずねる。
「そりゃ、そうよ! あの娘には、いずれ、私の仕事を引き継いでもらおうと考えてるからね! それには、やっぱり、支えてくれるパートナーの存在がある方が良いでしょ?」
美奈子が、自身の本音を明かすと、その言葉に反応した鳳花が、
「その点については、外野の自分たちが、アレコレ言ってもね……」
と、苦笑する。さらに、続けて、
「第一、そんな状況なんて、白草さんが納得するハズないでしょ? 下手をすれば、黒田くんに気を引くためだけに、生徒会長選挙に立候補しかねないわよ? そうなると、久々に生徒会選挙が盛り上がりそうね」
と、楽しげに語る一言に、次期生徒会に対して、穏便に後事をたくそうと考えている会長以下、現生徒会のメンバーたちは、一瞬、血の気が引いたように、表情が凍りつく。
「そ、そういう状況だけは、勘弁してほしいな……」
「私も、紅野さんと白草さんが、選挙で生徒会長の座を争うという事態だけは、是が非でも避けたいですね」
美奈子と茉純は、少し青ざめながら、心情を吐露した。
一方、少し冷静さを取り戻した香緒里は、先ほどまでの鳳花の語り口に納得したようすで、つぶやく。
「そうなんだ……下級生たちの性格や事情は、副会長が、いちばん把握してそうだもんね。その人が、そう言うのなら、そうなのかも……でもそうすると……」
ここで、一度、言葉を区切ったあと、さらに、クスクスと笑いながら続ける。
「なんで、黒田くんが、こんなに女子を惹きつけてるのか……ますます興味が湧いてきたわ!」
その一言に反応したのは、情報収集能力にも長ける書紀担当だった。
「おや、そうなのですか? 私の手元には、前田さんは、小学校を卒業するときに友人と交換するプロフィール帳に、『お金持ちのイケメン彼氏常時募集中』と書いていたというデータがあるのですが……異性の好みが変わったのですか?」
「ニャ~~~~~! それ、あたしが、小学生の時の黒歴史のヤツじゃん! 友だちに書いたプロフィール帳のメッセージ欄が一行空いたままだったから、ウケ狙いで書いただけなんだよ~! ってか、なんで、そんなデータが残ってんの!? 消して! いますぐ、そのデータベースから、あたしの過去を消して!」
茉純が、その存在を耳にした生徒が、『芦宮高校版エシュロン』と呼ぶ《生徒会データベース》にアクセスしながら語っていることに気付いた香緒里が、抗議の声をあげる。
「ふぅ~、連絡会は何事もなく終わって良かったけど……生徒会が、にぎやかなのは、なによりだわ……それじゃ、私は、そろそろ部活の方に顔を出さないと、だから……あとのことは、ヨロシクね~」
無用なトラブルは避けようと、生徒会長の寿美奈子は、所属する吹奏楽部の練習に向かうべく、生徒会室を立ち去ろうとする。
「ちょっと、会長! 生徒会長権限で、あたしのデータを削除するようにしてよ! 会長!」
背中に、会計役の言葉を受けながら、美奈子は廊下に出て、後ろ手で生徒会室の扉を閉めるのだった。
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