初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
51 / 454

第7章〜ライブがはねたら〜③

しおりを挟む
 そう言えば、クラブ紹介の仕事を鳳花部長や壮馬に任せきりにしていたオレは、広報部に所属しながら、ウチの部がどんな風に今年の紹介を行うのか、まったく知らなかった。

(あの部長と壮馬のことだから、またナニか企んでいるんだろうけど……)

 半ば楽しみ、半ば不安を抱えながら、講堂の壇上に目を向ける。
 舞台に上がった鳳花部長(彼女は、周囲の人間に名字ではなく、ファーストネームで呼ばれることを好む)は、泰然自若という言葉を体現するかのような振る舞いでマイクを持ち、おっとりとした口調で語り始めた。

「一年生の皆さん、こんにちは。広報部の代表を務めている花金鳳花です。学校の部活動として、広報部という名前は聞き慣れないヒトも多いと思いますが、それも、当然かも知れません」

 相変わらず聞き取りやすく、落ち着いたその声には、生徒会役員も務めているためか、威厳すら感じられるほどだ。

「わたしたち広報部は、放送部・新聞部・映像研究会の文化系クラブ三つが統合し、一昨年、発足したばかりのこの学校で一番若いクラブになります。主な活動内容は、活字・映像などを使用した学校の広報活動および、文化祭、オープン・スクールなどでの企画全般です」

と、ここまでは、オレたちの良く知る鳳花部長らしい、ゆったりとした語り口調だった。
 ところが、次の瞬間、なにかのスイッチが入ったように、普段めったに開くことのない、彼女を特徴づけている糸目をさらに細め、こう語った。

「――――――と言っても、ただ、広報活動や企画全般と言っても、新入生の皆さんには、理解しづらいと思うので……今日は、わたしたちの活動をわかりやすく伝えるために、こんな特別ゲストに来てもらいました~!」

 それまでは、穏やかな口調で語っていた我らが代表が、そう言い放ち、左手をサッとかざすと、

ド~ン!!

と、大音響が鳴り響き、

「わたしの歌を聞け~~!!」

という絶叫とともに、近未来っぽい軍服風の衣装をまとった一人の女生徒が舞台に現れた。
 ゆうに八十メートル近くの距離があるテラス席からでも、壇上にいる生徒が誰なのか、一目瞭然だ。

「おい、白草……!! ナニやってんだ…………!? それに、この曲は……」

 思わず漏れる疑問をよそに、舞台の上の彼女は、歌姫然として、楽曲のイントロ部分が終わると、堂に入ったようすで歌唱を始めた。
 それは、小学生の頃、CS放送のアニメ専門チャンネルで繰り返し見ていたSFアニメで、『銀河の妖精』と呼ばれる登場人物が歌う劇中歌だった。

「なぜ、『東リベ』でも『呪術』でもなくマクロスフロンティア……。女性ボーカルだからか? いや、それにしたって……」

 他にも、十代向けの楽曲はたくさんあるだろうに――――――と感想を抱きつつも、彼女のパフォーマンスに釘付けになる。
 白草四葉の歌唱力やステージ上でのパフォーマンスが際立っている、という理由もモチロンあるが――――――。
 その姿は、オレにとって、見覚えのあるモノだったからだ――――――。

「シロ……白草四葉は、シロだったのか……」

 つぶやくと同時に、スマホの通話アプリが着信を表示する。
 この段階でスマホを鳴らす相手は一人しかいないので、発信先を確認するまでもなく、受話ボタンをタップして応答した。

「なんの用だ~、壮馬!」

「やぁ、竜司! おどろいた!?」

 音声通話のみにしているので、表情は見えないが、おそらく通話相手の親友は、

「サプライズ大成功!」

という感じのドヤ顔をさらしていることだろう。

「言い出しっぺは、鳳花部長、白草、おまえ、の三人のうちの誰なんだ?」

 答えを求めると、

「白草さんの申し出をボクが部長に伝えて、このプレゼン方法が認められたんだ~。彼女の歌唱力は、テレビ局のカラオケバトルでも確認済みだけど、ナマで聞くと、やっぱりスゴい迫力だね……」

 壮馬は、アッサリと回答を提示し、ステージ上で躍動する彼女のパフォーマンスに対する感想を述べた。
 親友の語った所感には、

「知ってるよ……」

と、だけ小声で答える。
 当然だ……。
 七年前、オレは彼女が初めて人前で歌を披露するのを観ていた人間の一人なのだから――――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...