初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
3 / 454

第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜②

しおりを挟む
 まず目についたのは、子鹿を思わせる華奢な身体つきと、カモシカのようにスラリと伸びた脚。
 身長は、一六◯センチほどと、さほど高くは無さそうだが、首から上のパーツがあまりに小さいため、八頭身の黄金比を形成している。
 肩のあたりに柔らかく落ちた黒髪は、極限までサラサラ&ツヤツヤを追求し、丁寧に手入れされているであろうことがわかるが、しかし、キマリすぎてはおらず、ややラフな雰囲気を残している。
 彼女が歩みを進めるだけで、教室の前方扉から黒板の前の教卓まで歩く姿は、見慣れたハズの教室の風景が、まるで、そこがファッション・ショーのランウェイになったかのように、華やかな印象になる。
 脚部と同じように細く伸びた腕に目を向けると、視線は、自然とキレイに整った指先に誘導され、あたかも、完成された彫刻のように感じられた。
 そして、再び目線を頭部に向けると――――――。
 ナチュラルに整えられら眉に、西洋では美しさの象徴とされるアーモンド型の瞳、やや高めの鼻筋に、緊張のためか、少し上気しかかった朱色の頬、さらに、桜色のつややかな唇と、まさに、この世の《美》を体現したかのようなパーツの数々が、奇跡的な邂逅を遂げていた。

 「可憐だ…………」

 どこからか、三代目の世紀の怪盗とともに、大公息女を救い出した斬鉄剣の使い手(十三代目)と同じような男子生徒のつぶやきが聞こえた気がした。

 しかし――――――。

 誰かが一言つぶやいた以外、ただただ見惚れるだけの男子一同ではなく、より大きな反応を示したのは、意外にも、女子の方だった。

「え!?」
「ちょ!?」
「マ!!!?」

「「「ガチで、『クローバー・フィールド』のヨツバちゃんじゃん!!!!」」」

 女子数名がハモった一言で、教室内の空気は、再び一変する。

「スゲェ~~! 本物の有名人だ!?」
「これ、ドッキリ!? テレビ局の企画かナニか?」
「写真撮ろう!? 撮ってもいいかな? でも、SNSには、アゲちゃダメなやつ?」

 などと、新学期であることを考慮しても、過剰な狂躁に包まれた室内の様子に、担任の女性教師のゆりちゃん(オレたちは親しみを込めて、彼女をそう呼んでいる)先生は、浅いため息をつき、その隣に立つ白草四葉は、やや困惑したように微苦笑を浮かべていた。

「はえ~~。ホントに白草四葉本人だよ!」

「掲示板に、その名前が書いてあったんだから、そりゃそうだろう……」

 友人のつぶやきにオレが冷静なツッコミを入れると、壮馬は少し苛立たしげに返答する。

「そうじゃなくて、『クローバー・フィールド』の白草四葉だって言ってんの!? 文脈ぐらい読もうよ……」

 そんな親友の言動に、「おお! スマン、スマン」と微苦笑をたたえつつ、 

「しかし、オレたちが小学生の時に観た、あの映画と同じタイトルをアカウントに使うとは、なかなか良いセンスしてるじゃないか、ヨツバちゃん」

「同世代のファッション・リーダーでもある彼女に対して、上から目線で、センスを誉めるとか……竜司は、マジでコワイもの無しだよね……」

 壮馬が、SNSなどの世事に疎いオレに呆れつつ言葉を返すと、教卓の方からは、パン、パンと両手を打つ音が鳴った。
 その拍手の音の主である担任教師は、「こうなると思ってたわ……」と、小声でつぶやいたあと、

「はい、おしゃべりはそこまで……それでは、白草さん本人から自己紹介をしてもらいます」

と、自身の職務を果たすべく、ショート・ホーム・ルームの進行を始めた。
 担任教師の言葉を受け、うながされた女子生徒は、スッと小さく息を吸ったあと、

「今度、こちらに引っ越してきた白草四葉です。十年ぶりに、この街に帰って来ました。この学校のことは、わからないことだらけなので、色々と優しく教えてもらえると嬉しいです」

と、良く通る声で語りだした。
 さらに、続けて、

「あと、もしかしたら、私のことを知ってくれているヒトがいるかも知れないけれど……大人の事情で、色んなヒトに迷惑が掛かるから、SNSに私の写真を上げるのは止めてね」

そう言って、両手の人差し指で、可愛く小さなバツ印を作る。
 その一言に、クラスのあちこちから、「り!」と声が上がった。
 そして、教室内の反応に満足したのか、彼女はうなずいて、最後に、教室の窓際後方に視線を送りながら、こう付け加えた。

「この学校……ううん、このクラスにも、《ミンスタグラム》や《YourTube》の投稿をしているヒトがいるみたいなので、仲良くしてくれると嬉しいな」

 これ以上ない極上のスマイルで自己紹介を締めくくった四葉を歓迎すべく教室内は、万雷の拍手に包まれる。
 白草四葉の転校初日の一大イベントは、文句の付けようのない出来栄えと言えた。
 
 だが――――――。
 
 クラスメートが一斉に、転入生への歓待の意をしめす中、教室の窓際最後方に位置する自分たちには、有名人が自分たちのクラスに転入してくるという事実に、今ひとつ現実感が湧かず、どこか別世界の出来事に感じてしまう。

「おい! あのヨツバちゃんが、ご指名だゾ!? 壮馬!!」

 その、どこか現実離れした感覚を振り払おうと、前の席に座る相棒に冗談めかして語りかけると、壮馬は、こちらを振り返りながら、ニヤリと笑顔で返答する。

「ナニ言ってんの? 『竜馬ちゃんねる』の主な顔出し担当は、竜司だろう? きっと、ヨツバちゃんも、竜司の動画を視てくれたんだよ」

 いつもどおりのノリで会話を続けていたオレたち二人は、黒板の前に立ち、自分たちの方に視線を送っている新たなクラスメートの微笑が、一瞬だけ引きつったことに気づいていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

処理中です...