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第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜③
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「素晴らしい自己紹介だったわね。みんなも、白草さんが早くクラスに馴染めるようにしてあげてね。じゃあ、白草さんは、紅野さんの後ろ、空いてる席に座って」
『ユリちゃん』こと谷崎教諭の一言で、転入生紹介の儀式も無事に終了し、白草四葉は、指定された自席へと向かう。
四葉が席に着こうとすると、前の席に座る紅野アザミが、後方を振り返り、穏やかな口調で声を掛けてきた。
「白草さん、私、去年のクラスではクラス委員をしてたから、わからないことがあったら、何でも聞いてね」
彼女の「クラス委員」という言葉に、一瞬、左の眉を動かした四葉は、満面の笑みで返答する。
「ありがとう! 紅野サンだっけ? 親切なヒトが近くの席に居てくれて良かった」
しかし、その転入生が続けて発した一言に、発言者を中心にした半径一メートルの空気が凍りついた。
「わからないこと、と言うか……わたし、黒田クンが、春休みにアップしてた動画が気になってるんだけど……彼が動画で言ってた、フラレた女子って誰なんだろう? 紅野サン、なにか知ってる?」
「あっ……え、え~と……私は、その動画を見ていないから、ちょっと、わかんないかな……」
転入生の無遠慮な詮索に、なんとか答えを返したアザミの困惑した様子に気づいたのか、隣の席の天竹葵が、初対面の転入生にも物怖じせず、ピシャリと言い放つ。
「新しいクラスの話題に興味を持ってくれるのはありがたいですけど……プライベートな話題にクビを突っ込むのは、あまり誉められたことではないと思いますよ、白草さん」
「あっ!? ゴメン! そうだよね……ワタシったら、気になることがあったら、つい周りが見えなくなっちゃって……こういうところ、気を付けないと、『ヨツバは天然なんだから……』って、良く言われちゃうんだ」
まるで、「てへっ!」というフレーズが聞こえるかのように、四葉は、可愛らしく舌を出し、愛嬌のある表情を作る。周囲の男子は、
「天然じゃ、仕方ないよな」
「ちょっと、スキのあるところも、また良き……」
納得の表情で、彼女の言動を受け入れるが、一方のアザミを含めた女子たちは、
「あ~、そうなんだ……」
と、乾いた笑みで応答し、四葉にクギを刺す発言を行った葵は、無表情のまま、転入生の様子の観察を続けた。
※
始業式が終了し、休み時間になると、自分の席に集ってくるクラスメートたちを笑顔で交わしながら、オレと壮馬のもとを訪ねる女子生徒がいた。
「黒田クンに、黄瀬クンだよね……?」
今日のクラス内、いや学園中の話題を独占しそうな転入生の来訪に、オレたちは、
(なぜ、白草四葉が、自分たちに声を掛けてくるんだ?)
と、怪訝な表情で、お互いに顔を見合わせる。
「おいおい、白草……注目の転入生が、こんな教室の隅の僻地に来て大丈夫なのか? マンガやアニメじゃ転入生は、クラスの女子たちに囲まれるって相場が決まってるんじゃないか?」
いまだにクラス分け確認時のショックから立ち直りきっていない現在のオレは、あいにく転入生と積極的にコミュニケーションを図る積極性を持ち合わせていない。
しかし、こちらの素っ気ない返答にも動じず、白草四葉は、手のひらがつかない形で、両手の指を合わせ、綺麗な形の顎を引きながら、少し上目遣いで問い掛けてきた。
「あっ、ゴメンね。急に声を掛けて……自己紹介の時にも話したように、《ミンスタ》や《YourTube》に動画をアゲてる人たちと話したいな、って思ったから……もしかして、迷惑だった、かな……?」
「いやいやいやいや! トンデモナイ!? 白草さんに声を掛けてもらえるなんて、光栄だよ!! ねぇ、竜司?」
甘えた声とも受け取れる、異性に好まれそうな白草の声色に反応した壮馬が、こちらに同意を求めてくる。
友人の声に応答したオレは、少しは真面目に話しを聞いてみるか、と転入生に問い返した。
「わざわざ、オレたちに声を掛けに来てくれるなんて、何か用か? 白草」
「うん! ちょっと前から、高校生ユアチューバーとして活躍してる二人に注目してたんだけど……わたし、春休みにアップしてた動画のことが気になってて……」
その言葉に、オレの表情は一瞬で青ざめる。
一方の壮馬は、「おやおや……」と口に出しそうな表情で、ニヤリと相好を崩していた。
高校一年が終了した後の春休みに、オレたち二人が、《竜馬ちゃんねる》にアップロードした動画は、例の失恋動画一本だけだったからだ。
当然、彼女が口にした『春休みにアップしてた動画』とは、オレ自身が、カメラの前で醜態をさらした失恋ソング付きのムービーのことを指すことになる。
「結果は、残念だったかもだけど……あんなに一人のヒトを想えるのって、素敵だな……って思って。だから、黒田クンの好きになったヒトは、どんな娘なんだろう?って、気になっちゃって……もしかして、このクラスに居たりするのかな?」
邪気の無い笑みを浮かべながら問う白草の声に、オレの心臓は、早鐘を打つように動揺し、口の中がカラカラに乾いていくのを感じる。
「い、いや……それは……」
オレは、言葉に詰まりながら、
「プライベートなことだし、相手のこともあるから……ノーコメントだ」
ようやく、それだけを口にした。
その答えに、先ほどまでの天真爛漫といった表情を崩した転入生は、
「そっか~。残念……さっき、紅野さんにも、黒田クンが失恋した相手を知ってる? って聞いたんだけど、同じような答えだったから、直接、本人に確認しようと思ったんだ」
などと、遠慮会釈の無い発言を続ける。
彼女の言葉の冒頭に、昨年度、ともにクラス委員を務めた同級生女子の名前が出た途端、図星を突かれたオレの表情は動揺して歪み、そのことに気づいた壮馬は、「あちゃ~」といった感じで苦笑している。
さらに、特に悪びれた様子もなく、
「ゴメンね~。いきなりこんな質問をしちゃって……さっきも、紅野さんの隣の席の……」
と、話し続ける白草に、壮馬が助け舟を出した。
「天竹さん?」
「そうそう! 彼女にも、『プライベートな話題にクビを突っ込むのは、良くない』って、忠告されたんだった……わたしって、良く周りから《天然》だ、って言われるから……もし、気になることがあったら、遠慮なく注意してね」
天衣無縫という言葉を体現するかのような表情で語る転入生に対し、すっかり意気消沈してしまったオレは、「あ、あぁ……」と、言葉少なに返答するのが精一杯だった。
コミュニケーション能力に長けているのか、それとも、ただ単純に話すことが好きなだけなのかは定かでないが、白草四葉は、なおも語り続ける。
「このあとの時間は、クラス委員を決めるんだっけ? わたしは、転校して来たばかりで慣れないことばかりだから、クラスの委員には、去年からの仕事に慣れているヒトが就いてくれるといいな! そう思わない?」
問い掛けられたオレが、またも、「あぁ、そうだな……」と、短く言葉を返すと、
「ありがとう! これから、一年間ヨロシクね、黒田竜司クン!」
賛同を得たことに満足したのか、さわやかな笑顔を残して、転入生は自分の席へと帰って行った。
ようやく話題の転入生が一人になったことで、好奇心旺盛なクラスの連中は、白草の座る席に集って行くのが確認できた。
彼女の後ろ姿を見ながら、
「いや~、まさか、あの白草四葉が、《竜馬ちゃんねる》に注目してくれていたなんて……ボクたちの活動も、まんざら捨てたモノでもないかもね?」
自分たちの投稿してきた動画が認められていると感じたのか、壮馬は、嬉しそうに語りかけてくる。
「オレは、あんな動画で注目されたいなんて、思わね~よ」
やや不貞腐れた感じで反論すると、悪友はフォローになってないフォローを入れてきた。
「まあ、なんにしても、注目してもらうのは、イイことじゃない?」
「まったく、オマエは……自分自身に被害が無いからって、無責任なこと言いやがって……」
オレがボヤくと同時に、チャイムが鳴り、新学期のクラス委員などを決めるホームルームの開始時間を告げる。
教室の後方で、転入生の応対を行ったオレの平穏を揺さぶる小さな事件は、そのホームルームの時間に発生した――――――。
『ユリちゃん』こと谷崎教諭の一言で、転入生紹介の儀式も無事に終了し、白草四葉は、指定された自席へと向かう。
四葉が席に着こうとすると、前の席に座る紅野アザミが、後方を振り返り、穏やかな口調で声を掛けてきた。
「白草さん、私、去年のクラスではクラス委員をしてたから、わからないことがあったら、何でも聞いてね」
彼女の「クラス委員」という言葉に、一瞬、左の眉を動かした四葉は、満面の笑みで返答する。
「ありがとう! 紅野サンだっけ? 親切なヒトが近くの席に居てくれて良かった」
しかし、その転入生が続けて発した一言に、発言者を中心にした半径一メートルの空気が凍りついた。
「わからないこと、と言うか……わたし、黒田クンが、春休みにアップしてた動画が気になってるんだけど……彼が動画で言ってた、フラレた女子って誰なんだろう? 紅野サン、なにか知ってる?」
「あっ……え、え~と……私は、その動画を見ていないから、ちょっと、わかんないかな……」
転入生の無遠慮な詮索に、なんとか答えを返したアザミの困惑した様子に気づいたのか、隣の席の天竹葵が、初対面の転入生にも物怖じせず、ピシャリと言い放つ。
「新しいクラスの話題に興味を持ってくれるのはありがたいですけど……プライベートな話題にクビを突っ込むのは、あまり誉められたことではないと思いますよ、白草さん」
「あっ!? ゴメン! そうだよね……ワタシったら、気になることがあったら、つい周りが見えなくなっちゃって……こういうところ、気を付けないと、『ヨツバは天然なんだから……』って、良く言われちゃうんだ」
まるで、「てへっ!」というフレーズが聞こえるかのように、四葉は、可愛らしく舌を出し、愛嬌のある表情を作る。周囲の男子は、
「天然じゃ、仕方ないよな」
「ちょっと、スキのあるところも、また良き……」
納得の表情で、彼女の言動を受け入れるが、一方のアザミを含めた女子たちは、
「あ~、そうなんだ……」
と、乾いた笑みで応答し、四葉にクギを刺す発言を行った葵は、無表情のまま、転入生の様子の観察を続けた。
※
始業式が終了し、休み時間になると、自分の席に集ってくるクラスメートたちを笑顔で交わしながら、オレと壮馬のもとを訪ねる女子生徒がいた。
「黒田クンに、黄瀬クンだよね……?」
今日のクラス内、いや学園中の話題を独占しそうな転入生の来訪に、オレたちは、
(なぜ、白草四葉が、自分たちに声を掛けてくるんだ?)
と、怪訝な表情で、お互いに顔を見合わせる。
「おいおい、白草……注目の転入生が、こんな教室の隅の僻地に来て大丈夫なのか? マンガやアニメじゃ転入生は、クラスの女子たちに囲まれるって相場が決まってるんじゃないか?」
いまだにクラス分け確認時のショックから立ち直りきっていない現在のオレは、あいにく転入生と積極的にコミュニケーションを図る積極性を持ち合わせていない。
しかし、こちらの素っ気ない返答にも動じず、白草四葉は、手のひらがつかない形で、両手の指を合わせ、綺麗な形の顎を引きながら、少し上目遣いで問い掛けてきた。
「あっ、ゴメンね。急に声を掛けて……自己紹介の時にも話したように、《ミンスタ》や《YourTube》に動画をアゲてる人たちと話したいな、って思ったから……もしかして、迷惑だった、かな……?」
「いやいやいやいや! トンデモナイ!? 白草さんに声を掛けてもらえるなんて、光栄だよ!! ねぇ、竜司?」
甘えた声とも受け取れる、異性に好まれそうな白草の声色に反応した壮馬が、こちらに同意を求めてくる。
友人の声に応答したオレは、少しは真面目に話しを聞いてみるか、と転入生に問い返した。
「わざわざ、オレたちに声を掛けに来てくれるなんて、何か用か? 白草」
「うん! ちょっと前から、高校生ユアチューバーとして活躍してる二人に注目してたんだけど……わたし、春休みにアップしてた動画のことが気になってて……」
その言葉に、オレの表情は一瞬で青ざめる。
一方の壮馬は、「おやおや……」と口に出しそうな表情で、ニヤリと相好を崩していた。
高校一年が終了した後の春休みに、オレたち二人が、《竜馬ちゃんねる》にアップロードした動画は、例の失恋動画一本だけだったからだ。
当然、彼女が口にした『春休みにアップしてた動画』とは、オレ自身が、カメラの前で醜態をさらした失恋ソング付きのムービーのことを指すことになる。
「結果は、残念だったかもだけど……あんなに一人のヒトを想えるのって、素敵だな……って思って。だから、黒田クンの好きになったヒトは、どんな娘なんだろう?って、気になっちゃって……もしかして、このクラスに居たりするのかな?」
邪気の無い笑みを浮かべながら問う白草の声に、オレの心臓は、早鐘を打つように動揺し、口の中がカラカラに乾いていくのを感じる。
「い、いや……それは……」
オレは、言葉に詰まりながら、
「プライベートなことだし、相手のこともあるから……ノーコメントだ」
ようやく、それだけを口にした。
その答えに、先ほどまでの天真爛漫といった表情を崩した転入生は、
「そっか~。残念……さっき、紅野さんにも、黒田クンが失恋した相手を知ってる? って聞いたんだけど、同じような答えだったから、直接、本人に確認しようと思ったんだ」
などと、遠慮会釈の無い発言を続ける。
彼女の言葉の冒頭に、昨年度、ともにクラス委員を務めた同級生女子の名前が出た途端、図星を突かれたオレの表情は動揺して歪み、そのことに気づいた壮馬は、「あちゃ~」といった感じで苦笑している。
さらに、特に悪びれた様子もなく、
「ゴメンね~。いきなりこんな質問をしちゃって……さっきも、紅野さんの隣の席の……」
と、話し続ける白草に、壮馬が助け舟を出した。
「天竹さん?」
「そうそう! 彼女にも、『プライベートな話題にクビを突っ込むのは、良くない』って、忠告されたんだった……わたしって、良く周りから《天然》だ、って言われるから……もし、気になることがあったら、遠慮なく注意してね」
天衣無縫という言葉を体現するかのような表情で語る転入生に対し、すっかり意気消沈してしまったオレは、「あ、あぁ……」と、言葉少なに返答するのが精一杯だった。
コミュニケーション能力に長けているのか、それとも、ただ単純に話すことが好きなだけなのかは定かでないが、白草四葉は、なおも語り続ける。
「このあとの時間は、クラス委員を決めるんだっけ? わたしは、転校して来たばかりで慣れないことばかりだから、クラスの委員には、去年からの仕事に慣れているヒトが就いてくれるといいな! そう思わない?」
問い掛けられたオレが、またも、「あぁ、そうだな……」と、短く言葉を返すと、
「ありがとう! これから、一年間ヨロシクね、黒田竜司クン!」
賛同を得たことに満足したのか、さわやかな笑顔を残して、転入生は自分の席へと帰って行った。
ようやく話題の転入生が一人になったことで、好奇心旺盛なクラスの連中は、白草の座る席に集って行くのが確認できた。
彼女の後ろ姿を見ながら、
「いや~、まさか、あの白草四葉が、《竜馬ちゃんねる》に注目してくれていたなんて……ボクたちの活動も、まんざら捨てたモノでもないかもね?」
自分たちの投稿してきた動画が認められていると感じたのか、壮馬は、嬉しそうに語りかけてくる。
「オレは、あんな動画で注目されたいなんて、思わね~よ」
やや不貞腐れた感じで反論すると、悪友はフォローになってないフォローを入れてきた。
「まあ、なんにしても、注目してもらうのは、イイことじゃない?」
「まったく、オマエは……自分自身に被害が無いからって、無責任なこと言いやがって……」
オレがボヤくと同時に、チャイムが鳴り、新学期のクラス委員などを決めるホームルームの開始時間を告げる。
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