上 下
495 / 912

二階堂銀二の思惑⑤

しおりを挟む
 元々病弱な一香は弱々しくも僕の手を取ってくれる。

「にぃ...、もう少しで日本国の王様になるんでしょ?」

「ああ、約束だ。俺が一香を日本国の玉座に座らせてやるからな」

「わぁい...嬉しいな...」

 日に日に弱っていく一香にはもう時間がない。

 むしろこれまでの時間を薬によって無理やり延命させていたに過ぎないからだ。

「一香...。待ってろ。にぃが必ずお前の願いを全部叶えてやるからな!」

 妹の願いは2つ。

 僕の幸せと幸福だ。

 つまり僕の幸せと幸福が一香の幸せと幸福になる。

 だからこそ僕は絶対に人生の勝者にならなくてはいけないし、愛川さん以外の女性で妥協なんてできないのだ。

 正直いうと高坂和希を始末してまで愛川さんを手に入れようだなんて強引にもほどがあるとは思う。

 しかし、それでも妹の願いを全部聞き入れるには他に方法がない。

 もしくは愛川さんの口からはっきりと高坂和希をふってもらう事が1番の最善手ではあるのだが、彼女はきっと首を縦に振らないだろう。

 だからこそ、僕と高坂和希の戦いは運命づけられていると言っても過言ではないのだ。

「一香、僕は必ず幸せになる。今回の戦いはそういう戦いだ」

「うん...。にぃなら絶対に人生の勝者になれるよ...」

「ああ...、絶対に勝者になってみせるさ」

 僕は一香の体に触れて抱き締める。

 痩せ細っていても妹はとても可愛いものだ。

 随分と前から死にかけてはいるが、僕が結婚する所を見せてほしいとずっと命を繋いできた。

 所詮国王の椅子に座ってみたいなんていう願いは僕が勝者として最上位に君臨したと言う証でしかないのだ。

(高坂和希。早くこい。貴公の首をはねて幸せを掴み取るのは僕だ)

 弱りゆく妹の体に触れながら、僕はそういうことを考えているのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

始めのダンジョンをループし続けた俺が、いずれ世界最強へと至るまで~固有スキル「次元転移」のせいでレベルアップのインフレが止まらない~

Rough ranch
ファンタジー
 人生のどん底にいたこの物語の主人公こと清原祥佑。  しかしある日、突然ステータスやスキルの存在するファンタスティックな異世界に召喚されてしまう。  清原は固有スキル「次元転移」というスキルを手に入れ、文字通り世界の何処へでも行ける様になった!  始めに挑んだダンジョンで、地球でのクラスメートに殺されかけたことで、清原は地球での自分の生き方との決別を誓う!  空間を転移して仲間の元へ、世界をループして過去の自分にメッセージを、別の世界線の自分と協力してどんどん最強に!  勇者として召喚された地球のいじめっ子、自分を召喚して洗脳こようとする国王や宰相、世界を統べる管理者達と戦え! 「待ってろよ、世界の何処にお前が居たって、俺が必ず飛んで行くからな!」

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界帰りの俺は、スキル『ゲート』で現実世界を楽しむ

十本スイ
ファンタジー
ある日、唐突にバスジャック犯に殺されてしまった少年――同本日六(どうもとひろく)。しかし目が覚めると、目の前には神と名乗る男がいて、『日本に戻してもらう』ことを条件に、異世界を救うことになった。そして二年後、見事条件をクリアした日六は、神の力で日本への帰還を果たした。しかし目の前には、日六を殺そうとするバスジャック犯が。しかし異世界で培った尋常ではないハイスペックな身体のお蔭で、今度は難なく取り押さえることができたのである。そうして日六は、待ち望んでいた平和な世界を堪能するのだが……。それまで自分が生きていた世界と、この世界の概念がおかしいことに気づく。そのきっかけは、友人である夜疋(やびき)しおんと、二人で下校していた時だった。突如見知らぬ連中に拉致され、その行き先が何故かしおんの自宅。そこで明かされるしおんの……いや、夜疋家の正体。そしてこの世界には、俺が知らなかった真実があることを知った時、再び神が俺の前に降臨し、すべての謎を紐解いてくれたのである。ここは……この世界は――――並行世界(パラレルワールド)だったのだ。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。 本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。 俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。 どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。 だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。 ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。 かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。 当然のようにパーティは壊滅状態。 戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。 俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ! === 【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...