転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに

文字の大きさ
155 / 159
最終章 決戦

第154話 罠

しおりを挟む
「邪神…さっきの言い方といい、もしかして」
「今更気付いたの? ばっかじゃない?」

 心の底から馬鹿にするような声色で、口の端が裂けたような笑みを浮かべる。

「そもそもぉ、毎回毎回巻き込まれて姿を消していたってことを疑問にも思わなかったの? 少し考えれば分かるのに、やっぱり頭がお花畑なのかしら?」
「…っ!」

 フィリアが力任せに左腕に貫通し絡みついた蔦を引き千切る。だが、その代償として肉は裂け骨が見え隠れするほどの損傷を受けてしまった。ぶらりと力なく垂れ下がり、腕としての機能は果たせない。

「使徒じゃなくて狂人の間違いじゃなぁい? 流石あの駄女神が」
「黙れ」

 ペラペラと小馬鹿にしたような言葉を紡ぐ口を、フィリアの静かな怒声が遮る。

「アッハ。大事な大事な女神様を馬鹿にされて血が上っちゃったのかしら?」

 ニチャアとした笑みをたたえるベルを一瞥し、引きちぎった拍子に自由となった右手で翡翠を握り締める。

「でもざ~んねん。貴方が今からいくら足掻こうが未来は変わらないわぁ」

 ベルの神経を逆撫でするような声には耳を貸さず、切っ先を地面へと突き立て無理やり体勢を起こす。するとベルが面白そうに破顔した。

「それとも、本気でどうにかできると思って?」
「生憎往生際が悪いのが取り柄でね」
「ふぅん…」

 途端、ベルが指を鳴らす。するとフィリアの足に絡み付いていた蔦が突然解け、するすると地面へと引きずり込まれた。
 何のつもりだとフィリアがベルを睨む。

「余興として遊んであげる。どうせ貴方にわたしはコロせない。そうでしょ?」
「それはやってみないと分からないわよ?」

 不敵な笑みを浮かべ、動かす度に激痛が走る身体を悟られないよう誤魔化す。プラプラとぶら下がる邪魔な左腕を肘辺りから切り飛ばし、傷口を火で焼き塞げば、フィリアの喉の奥で悲鳴が音になる前に掻き消える。

 腕を再生する時間も無く、そんな暇を与える程慈悲深い相手でもない。しかしそんな中での最善の選択だとしても、左腕を失った代償は余りにも大きい。

「そんな身体でヤルの?」
「どんな身体でも関係ない。わたしはアンタを潰せればそれでいい」

 血が足りず思考が停止しかける頭を奮い起こす。まだ、ここで終わる訳には、訳にはいかない。

「潰すなんてヒドイわ。貴方の親友なのに」
「わたしの親友はもう死んだよ」

 今自分の目の前にいるのは、間違いなく敵だ。ベルと呼ばれていた人間は、もういない。
 フィリアの言葉を最後にベルが動き出す。先程のような搦手ではなく、弓を投げ捨て、淀んだ真紅に染まった刃を片手にベルが急速に肉迫する。
 次の瞬間には刃がぶつかり合い、閃光が迸った。その後ギリギリと拮抗していたように見えた力の押し合いは、僅かにフィリアが負けていく。

「踏ん張りが効かないわよねぇ?!」
「っ!?」

 フィリアが押し負け、壁へと弾き飛ばされた。ダメージが蓄積したフィリアの身体は、軽く背中がぶつかるだけで悲鳴を上げる。
 口に溜まった血を吐き、翡翠を正面へと構え直す。震える脚を無理やり前へと進めれば、ベルが笑う。

「ホントにコロせると思うなら、やってみる?」

 手を広げ、自らの首を指す。握っていた刃すら手放し無抵抗で待つその姿に、フィリアが訝しげな眼差しを向けた。

「何を…」
「だってほっといても貴方死んじゃいそうなんだもの」

 確かにフィリアの身体は限界だ。しかしだからと言って自ら隙を晒す意味が理解できない。

 ────罠でしかない。

 だが、最大のチャンスでもあった。これを逃せば、フィリアに反抗の手立てはほぼ無いと言っていいのだから。
 ならば───────…………

















































「………────ぇ」

 フィリアの腕が、
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...